■次期ECB総裁にラガルド氏指名でユーロは軟調
先週(7月1日~)は、EU(欧州連合)首脳会議で次期ECB(欧州中央銀行)総裁人事が決まりました。
現在の、ドラギECB総裁の任期は10月末までとなりますが、その次は、ラガルドIMF(国際通貨基金)専務理事になることが、ほぼ決定です。
7月2日のEU首脳会議では、次期ECB(欧州中央銀行)総裁にIMFのラガルド専務理事を指名することが決定した。欧州議会とECBの同意が必要になるが、10月からの就任がほぼ確定した格好 (C)Visual China Group/Getty Images
それまでは、タカ派のバイトマン・ドイツ連銀総裁が、次期ECB総裁の有力候補とされていましたが、ハト派のラガルドIMF専務理事にほぼ決まったことで、ECBのハト派路線が継続するとの期待から、ユーロは軟調な展開となりました。
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さらに、レーン・フィンランド中銀総裁が、「ユーロ圏の景気低迷は長期的」、「さらなる金融緩和が必要」と発言したことも、ユーロの下げを継続させています。
【参考記事】
●G20サミット後のリスクオン相場は一時的! ECB総裁にラガルド氏指名でユーロ/円は?(7月4日、西原宏一)
■FRBもハト派人事。長期金利は世界的に低下
FRB(米連邦準備制度理事会)では、トランプ大統領がFRB理事に、ウォーラー氏とシェルトン氏を指名しました。
両者ともハト派のため、利下げ期待が高まり、米長期金利は1.93%台まで低下しました。
(出所:Bloomberg)
トランプ大統領は、「中国と欧州は通貨操作をしている」と、米ドル安を望んでいるような発言をしており、FRBの金融政策も批判していますが、ハト派な理事を指名していることから、今後、FRBは利下げ路線になっていくのではないかと思います。
これらを受けて、世界的に長期金利は低下し、株価は上昇していました。
■強い米雇用統計で0.5%の利下げ予想は消失
7月5日(金)の米雇用統計では、非農業部門雇用者数が、予想値16.0万人増のところ、22.4万人増と、強い数字が出ました。
それまで低下が続いていた米長期金利も、これを受けて2.06%台まで急騰。7月末(7月30日~31日)のFOMC(米連邦公開市場委員会)で、0.5%の利下げが実施されるとの予想もありましたが、その可能性もなくなりました。
【参考記事】
●米長期金利の低下はすでに限界で下値は限定的。ドル/円は「きっかけ待ち」の段階か(7月5日、陳満咲杜)
最近の米経済指標には、弱いものも出てきていますが、失業率は低下傾向にあり、雇用は悪いとは言えません。株式市場も、堅調に推移していることもあって、利下げをする必要は、ないようにも思います。
※米労働省労働統計局のデータをもとにザイFX!が作成
【米失業率の過去12カ月の数値データと過去60カ月のグラフは以下をチェック!】
●経済指標/金利:米国主要経済指標の推移(失業率)
ただ、低インフレが続いており、米中貿易戦争などの影響で、将来的な景気減速懸念もあるため、「予防的に利下げを行う」というのが、市場の多くの見方となっています。
そのため、ここで利下げをしなければ、株式市場が崩れる可能性もあるので、FRBは利下げをすると思います。
【参考記事】
●FX初心者のための基礎知識入門:米雇用統計
■利下げはいつ? パウエルFRB議長の議会証言に注目!
今週(7月8日~)の注目は、10日(水)と11日(木)の、パウエルFRB議長の議会証言、10日(水)のFOMC議事要旨公表、11日(木)のECB議事要旨公表、そして地政学リスクとなります。
【参考記事】
●強い雇用統計。今週はパウエル議長証言に注目! 材料顕在化でユーロ/円戻り売りか(7月8日、西原宏一&大橋ひろこ)
地政学リスクは、イランが、ウラン濃縮度が2015年の核合意の基準を超えたと発表し、さらに引き上げる可能性があると表明。トランプ大統領はこれに対して、「イランは気をつけた方がいい」と発言しており、7月8日(月)の東京市場で、米ドル/円は108.28円まで下がりました。
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パウエルFRB議長は議会証言で、利下げを示唆すると思いますが、利下げを行うのが今月(7月)になるのか、その点も注目かと思います。
市場は、今月末に利下げを行うと考えていますが、この利下げ時期が後退するようであれば、株価は下がり、為替市場は米ドル高になります。
パウエルFRB議長による半期に1度の議会証言が、今週の注目材料。バカラ村氏は利下げを示唆すると考えているが、それが今月になるのかどうかも注目と考えている (C)Bloomberg/Getty Images News
ただ、すでに先週の米雇用統計(7月5日)で、行き過ぎた利下げ期待がはく落しているため、ここからさらに、利下げ期待が低下することもないと思います。そのため、パウエルFRB議長の議会証言で乱高下はするものの、大きな方向性ができるとは考えていません。
■米ドル/円、大きな流れは戻り売りだが…
先週(7月1日~)の米ドル/円は、米中通商協議が交渉継続となり、中国通信機器大手ファーウェイへの禁輸措置が一部緩和、米朝首脳会談の開催などもあって、ギャップアップで始まりました。
ただ、何かが決まった、ということではなかったため、窓をすぐに埋めて、米ドル/円は107.53円まで下がりました。
前回のコラムで、米ドル/円の今月(7月)の想定レンジを107~110円としていたため、あっという間にレンジ下限付近まで下がり、「イメージしたよりも弱いのか?」と思いましたが、米雇用統計で行き過ぎた利下げ期待も剥落し、想定レンジの中心まで戻ってきています。
【参考記事】
●投機筋の円売り越しほぼ解消。過去1年の月足から読む、7月の米ドル/円相場は…?(7月2日、バカラ村)
(出所:TradingView)
行き過ぎた利下げ観測が後退していることから、ここから米ドル/円が大きく下がるという状況ではないと思います。
ただ、大きな流れとしては、FRBは利下げ方向となり、金利差縮小もあって、米ドル/円が上がり続けるようにも思えません。
目先は横ばいになりやすいと思いますが、大きな流れとしては、まだ、戻り売りで考えています。
今は、トレンドができにくいと考えていることもあって、早めに手仕舞いするようなトレードが良いのではないかと思います。
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