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新英首相ボリス・ジョンソンってどんな人?
合意なき離脱を呼ぶ!? ナルシストの正体!

2019年07月30日(火)16:39公開 (2019年07月30日(火)16:39更新)
ザイFX!編集部

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■ボリス首相、EUトップと電話会議に臨む

 首相就任翌日(7月25日)、ボリスはユンケル欧州委員会委員長やマクロン仏大統領に電話で挨拶をした。そこでは、バックストップ案を破棄し、新たなBrexit案を作り直したいという意向をぶつけたが、いい感触は得られなかった

 この電話会議の直後に、バルニエ欧州委員会主席Brexit担当相は、加盟27カ国のリーダーに対し、以下のメールを送付。

<バルニエ氏が送付したメールの内容>

「A short message following the appointment of Boris Johnson as PM and his speech today.
PM Johnson has stated that if an agreement is to be reached it goes by way f eliminating the backstop. this is of course unacceptable and not within the mandate of the European Council.
While he has declared that he will only engage with the EU on this basis, we are or our side ready to work constructively, within our own mandate. we will analyse any UK idea on withdrawal issues that are compatible with the existing WA, and we are of course ready to rework the political declaration, in line with the EUCO guidelines.
But as suggested by his rather combative speech, we have to be ready for a situation where he gives priority to the planning for 'no deal' , partly to heap pressure on the unity of the EU27.」

 どういう内容かというと…

 「バックストップを破棄して、Brexit策を再交渉するなんてあり得ない。もし、ボリスがこの条件を譲らないのであれば、我々は建設的に話し合いを進めていくだけだ。就任のスピーチで合意なき離脱について触れていた。たぶんEUにプレッシャーをかけることが目的だとは思うが、我々もそれに対し、準備をしなければいけない」と書かれている。

今後の交渉については、前途多難であることは間違いない

■戦時内閣と合意なき離脱に向けたキャンペーン

 7月28日(日)、タイムズ紙日曜版の一面に大きく載った記事。タイトルは日本語で、「何がなんでも10月31日(木)に離脱する。合意なき離脱でも関係なし」だ。

 読み進めていくと、War Cabinet(戦時内閣)という表現が使われており、ボリス首相、ジャビッド財務相、ラーブ外相兼副首相、ゴーブ公領大臣、バークレーBrexit担当相、コックス検事総長の6人からなるWar Cabinetが7月30日(火)から動き出すということであった。

 このWar Cabinetは3つの委員会から構成されている。わかりやすいように図で説明しよう。

War Cabinet (戦時内閣)の3つの委員会
War Cabinet (戦時内閣)の3つの委員会

※筆者作成

 ゴーブ公領大臣の言葉によると、全員、夏休み返上で「合意なき離脱」という前提で準備を進めるそうだ。

■ボリス英首相とEUの関係は?

●27対1のプレッシャー

 EUでの力関係が、「メルケル女王」から「マクロン>メルケル」に変わろうとしている今、ボリスはマクロン大統領に先に電話をしている。しかし、だからと言って、マクロン大統領が英国に好意的な態度を見せるとは限らない。

 そもそも、本来であれば3月29日(金)にEUを離脱するはずであったのを、10月末まで期間延長した際、EUは「The European Council stresses that such an extension cannot be used to start negotiations on the future relationship=延長期間を使って、今後のEUと英国との関係について交渉することは規則違反である」としっかり明記している。

 あり得ないと思うが、マクロン大統領が英国側につかない限り、ボリスの考えるBrexitが実現する可能性は低い

●夏休みの使い方

 英国議会はすでに夏休みの休会に入ったが、上述のとおり、War Cabinetは休まず活動する。

 ボリスは8月にEU各国を歴訪し、Brexitについて話し合いたいという意向を示している。そして、可能であれば、メルケル首相、マクロン大統領をはじめとするEU各国の首相・大統領を英国の首相別荘(チェッカーズ)に招きたいという希望もあるそうだ。

 これは、EUからの譲歩を引き出せるかの感触を見たいのだろう。

●8月24日(土)からのG7

 私がもっとも恐れているのは、8月24日(土)~26日(月)にフランスで開催されるG7(先進7カ国首脳会議)である。ここには、当然であるがトランプ大統領も参加する。

トランプ大統領

米国のトランプ大統領は、「1日も早くEUから離脱すべき。EUに残っていても、ロクなことがない」とボリス氏に語り、G7でEU加盟国各国が怒り出す展開になるかも。写真は2017年1月のもの (C)Spencer Platt/Getty Images

 トランプ大統領はボリスに対し、「1日も早くEUから離脱すべき。EUに残っていても、ロクなことがない」と語り、EU加盟国であるドイツやフランスを怒らせることになると私は確信している。

 果たしてそうなった時、ボリスはどういう態度に出るのか?

●「Who blinks first? (最初にまばたきをするのは、誰か?)」

Who blinks first?

 この意味は、たとえば、にらめっこをして最初にまばたきをした人、またはポーカー・ゲームの最中に敵に対して最初に自分の手の内を見せてしまう表情をしてしまった人のことを指し、最初にまばたきした人が負けという意味である。

 再交渉をして、イチからBrexit案を作り直したいボリス。それに対し、ルール違反で無理だ!と繰り返すEU。

 特に、バックストップ案の破棄を訴える英国側の主張をEUが受け入れる可能性はゼロに近い。もちろん、両サイドが納得できる代替案があれば話は別であるが、まだそういう流れにはなっていない。

どちらもまばたききをしないのなら、合意なき離脱の選択肢しか残らない

●ボリスにとってWin-Winのシナリオ

 あり得ないと思うが、もしEUが譲歩し、英国が望む形のBrexit案となればボリスの功績となり、人気はうなぎ登りとなるであろう。

 逆に、EUが首を縦に振らず、合意できなければ、「英国が合意なき離脱となったのは、EUがかたくなに再交渉を拒否したからだ」という言い訳が通用する

 カミングス氏のずる賢い戦略であろうが、ボリスにとってはWin-Winとなりそうだ。

●今後のシナリオ予想

 これは、私の独断で作成した今後のシナリオ予想である。当然、ボリスから新しい発表などがあれば変更が必要となる。

Brexitに関する今後のシナリオ予想(クリックで拡大)
Brexitに関する今後のシナリオ予想

※筆者作成

■解散総選挙の実施について

 首相のチーフアドバイザーに任命されたカミングス氏は、キャンペーンの達人。すなわち、ボリスはかなり早めに解散総選挙を企てているのではないか?という話が聞こえてくる。

●10月31日前の解散総選挙は時間的にアウト

ボリス本人は、10月31日(木)前の解散総選挙実施をかたくなに否定している。

 これにはわけがある。もし、最大野党・労働党が議会最終日の7月25日(木)に内閣不信任案動議を提出していれば、かろうじて間に合った。しかし、9月の夏休み明け当日に動議を提出しても、10月31日(木)の離脱日までに間に合わない計算となるらしい。

10月31日以前に解散総選挙が行われる場合の日程(クリックで拡大)
10月31日以前に解散総選挙が行われる場合の日程

※英国会図書館のウェブサイトを参考に筆者が作成

●離脱交渉の期間延長をすれば、解散総選挙は可能

時間が足りないのであれば、交渉期間の延長をお願いすればいいだけのこと。そういう意見もある。事実、ユンケル委員長の後任に選出されたドイツのフォンデアライエン委員長は、延長に好意的。

 離脱前に総選挙をするのは、ある意味ギャンブルかもしれない。というのは、最近の世論調査を見る限り、有権者の支持は、(1)保守党、(2)労働党、(3)自民党、(4)Brexit党の4つに分かれている。つまり、保守党が楽に勝てる選挙ではないということである。

 しかし、考え方を変えると、違う側面が見えてきた。

【1】ギャンブルとわかっていても、やらざるを得ないとボリスが覚悟しているかもしれない

 というのは、7月18日(木)に議会で実施された採決では、41票差というかなり大差で、合意なき離脱が議会で可決されることがほぼ絶望的となったからだ。これをボリスは軽視できない。そうなると、自分の意見を押し通すためには、保守党の議席数を増やす以外、手段はない。

【2】Brexit党の人気はバブルのように膨らんでいるが、いつかそのバブルが弾ける瞬間があるはず

 ボリスは、Brexit強硬派とも言える内閣を誕生させた。そうなると、今までBrexit党を支持してきた有権者が、保守党支持に変更するかもしれない。

 離脱支持政党は、Brexit党と保守党の2つだが、残留支持政党については、労働党、自民党、Change UK、緑の党など、いくつもの党に分かれている。それに加え、Brexit党のファラージュ党首に対抗できる「残留支持政党の顔」が不在である。たぶん、残留支持政党はお互いを信用していないので、いざ投票となれば、このまま票を分け合う形で終わってしまうだろう。

 そうなると、保守党に有権者が戻ってくることは、十分に考えられるシナリオかもしれない。

●コックス検事総長の爆弾発言

 タイムズ紙が驚くような記事を載せた。

 タイトルは、「No-confidence vote and election can’t legally halt Boris Johnson’s Brexit」というもので、意味は、内閣不信任案投票や解散総選挙で、ボリス内閣の合意なき離脱をストップさせることは、法律的にできないとうものだ。

 ここでは、前職と現職、それぞれの検事総長の意見が書かれている。

【1】コックス検事総長

 ボリス内閣が不信任となったとしても、10月31日(木)に英国が合意なき離脱でEUから離脱することを阻止する条項が、法律上にない。内閣不信任投票が実施され、解散総選挙となった場合、選挙キャンペーン中に10月31日(木)を迎えたとしても、そのまま合意なき離脱を首相は決定できる。

 その理由は、政府のBrexitデフォルト案が、「10月31日(木)にいかなる形にせよ、離脱する」ということだからである。

【2】グリーブ元検事総長

 古くからの因習に沿って、選挙投票日までの間は、首相は重要決定できない。選挙キャンペーン中の政府は、あくまでも「暫定政権」でしかないため、暫定政権が重要決定をした場合、次期政権を侮辱することになる。

 仮に選挙投票日より早く10月31日(木)を迎えた場合、Purdah期間中(※)であることを考慮して、EUに対し、交渉期間延長を申込まなければならない。

(※「Purdah期間」とは、選挙前後の一定期間、中央・地方政府は一切の活動を停止、あるいは中断する義務期間のこと)

 このように現職と前職の検事総長が真っ向から対立する意見を述べているため、我々は何を信じてよいのか、わからなくなってきた。

 ボリスは、War Cabinetのメンバーであるコックス検事総長の意見を聞くであろうから、解散総選挙実施も、ある程度、視野に入れておくべきかもしれない。

 10月31日(木)の離脱日前後の重要なイベントは…

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