■FOMCは利下げ。でも利下げサイクル開始は否定
7月30日(火)~31日(水)は、FOMC(米連邦公開市場委員会)がありました。
米国の景気は悪いと言えず、米国株が上昇していたこともあって、利下げを本当にするのか、そして0.5%幅の利下げ予想もあったことで、最近のイベントとしては、もっとも注目されたイベントとなりました。
結果は0.25%の利下げとなり、さらに据え置き支持が2票あったこともあって、瞬間、米ドル高へ。ただ、9月に停止とされていた保有資産の縮小が、2カ月、前倒しとなりました。
市場参加者の多くは、今回のFOMCから米国の利下げサイクルがスタートするのではと考えていましたが、パウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長の会見で「利下げサイクルの開始ではない」と、否定した発言が出てきたことで、米国株は下落。米ドルは上昇しました。
7月30日(火)~31日(水)の会合で、およそ10年半ぶりの利下げを決定したFOMC。パウエルFRB議長は今回の決定が利下げサイクルの開始ではないと発言しているが、果たして… (C)Bloomberg/Getty Images News
しかし、パウエルFRB議長が「利下げは1度だけとは言ってない」と、利下げの可能性を残したことで、株式市場はやや反発。米ドルもやや下がりましたが、利下げの継続性を否定したことが影響し、米ドル/円は109.31円まで上昇しました。
【参考記事】
●FOMC後の米ドル高は極めて自然な反応。でも、その流れが続かないと考える理由は?(8月1日、今井雅人)
(出所:TradingView)
■トランプ発言でリスクオフ。米ドル/円はブルトラップに!
各国が緩和競争となっているところで、米国(FRB)が利下げ継続の可能性を否定したため、今後は米ドル高になるかと思われました。
【参考記事】
●主要国の中銀が通貨安合戦へ!? FOMCの注目点と米ドル/円の今後の行方を予想!(7月30日、バカラ村)
しかし、7月末に行われた米中閣僚級協議には進展がなく、トランプ大統領が「9月1日(日)から、3000億ドル相当の中国製品に10%の関税を課す」ことを示唆。
...during the talks the U.S. will start, on September 1st, putting a small additional Tariff of 10% on the remaining 300 Billion Dollars of goods and products coming from China into our Country. This does not include the 250 Billion Dollars already Tariffed at 25%...
— Donald J. Trump (@realDonaldTrump) August 1, 2019
これを受けて、リスク回避の動きとなり、株式市場は下落、為替市場は円買いへ。
FOMCで109.00円のレジスタンスを越えた米ドル/円は、米ドル高になるのであれば109.00円がサポートとなるべきでしたが、109.00円はサポートとならず、ブルトラップとなって105.78円まで下落しました。
(出所:TradingView)
■株価が下がり過ぎればトランプ大統領は歩み寄る!?
ブルトラップやベアトラップは、今年(2019年)の多いパターンになります。そして、金融政策会合での動きは1~2日しか続かず、反転ポイントになるのも、今年の非常に多いパターンです。
【参考記事】
●超ハト派FOMCでも株価頭打ち。景気後退? 円高傾向だが、特にユーロ/円は戻り売りか(3月26日、バカラ村)
前回の米中通商協議は、6月末のG20(20か国・地域首脳会合)のときに行われました。ここでは、トランプ大統領は歩み寄りを見せましたし、トランプ大統領としては、あまり圧力をかけ過ぎて、米国株を下落させたくないのだと思います。
米国と中国のチキンレースとなっているだけで、今回も米国株が下がり過ぎるようであれば、また歩み寄りが出てくると思います。
【参考記事】
●米ドル/円波乱の最大の要因は?トランプ氏の対中ツイートは「きっかけ」にすぎない!(8月2日、陳満咲杜)
■英ポンドは上がったところを売りで
チキンレースと言えば、英国とEU(欧州連合)の間でも行われています。
EU側は新たな離脱案の再交渉を否定していますが、合意なき離脱も避けたいと考えています。それに対して、ジョンソン英首相は、合意なき離脱も辞さない構えです。
今の状況では、どちらも歩み寄ることはなく、10月末に向けて合意なき離脱の可能性が高まる状態となっています。
市場参加者が英ポンド売りに偏っていることもあって、ここからの下げは時間調整を挟むか、ショートカバーでポジションが切れてからでないと、下がりにくいと思います。
(出所:TradingView)
しかし、英ポンドを買うような状況でもないため、上がったところは英ポンド売りで良いのではないかと考えています。
【参考記事】
●ボリス・ジョンソン英首相の「合意なき離脱」発言続く…。ポンド/円は中期的に120円へ(8月1日、西原宏一)
■ユーロ/円を手仕舞い。中国人民元の動向に注目!
米ドル/円はブルトラップとなったことで、チャートは弱い形です。
私はユーロ/円の方を売っていましたが、昨日(8月5日)、4時間足で米ドル/円もユーロ/円も売られ過ぎになったことで、ユーロ/円を手仕舞いました。
【参考コンテンツ】
●メルマガ「バカラ村のFXトレード日報!」
(出所:TradingView)
中国人民元が、対米ドルで7元を超えてきたこともあって、中国の資本流出懸念もあり、どこまで人民元安が続くのか、注目されるところです。
(出所:Bloomberg)
中国人民元安になれば、豪ドルも弱くなりますが、中国人民元売りをユーロで行っている向きもあり、ユーロがやや反発してきています。
【参考記事】
●深夜にトランプ砲炸裂! 直前に公開した為替ディーラーの予見が当たり過ぎて神ってた
■米ドル/円、目先は戻り売りだが104円台以下は買い!?
米ドル/円に関しては、105円台がターゲットと考えていましたが、日本の個人投資家が今の下げを買い下がっているようで、そうであれば、ストップがつくまでは下がりやすい状況とも言えます。
【参考記事】
●ドル/円決壊! 年初来安値104.87円更新が視野に。英ポンド/円の戻りを売りたい!(8月5日、西原宏一&大橋ひろこ)
年初のフラッシュ・クラッシュ時の安値や、2018年の安値である104円台を一時的に下抜ける可能性も出てきましたが、そこから下は滞空時間が短いと考えています。
米国の景気はそれほど悪いとは言えず、日銀の緩和期待や、日本の消費増税による景気刺激策も予想されます。目先はまだ、米ドル/円は戻り売りだと考えていますが、104円台以下では、長期的には買っても良い水準になるのではないかと思います。
(出所:Bloomberg)
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