■米国の逆イールドと、驚きのドイツのマイナス成長
日本のお盆の間に、米10年債と2年債の利回りが逆転する「逆イールド」が12年ぶりに発生しました。
(出所:Bloomberg)
リセッション(景気後退)入りの予兆とされる現象ですね。ただ、過去の逆イールド発生からリセッション入りするまでの期間は平均22カ月。今すぐ不況になるという話ではないですが。
【参考記事】
●米国債に逆イールド発生で米景気後退か? NYダウは800ドル安! 米ドル/円は…!?(8月15日、西原宏一)
●株価を暴落させた逆イールドとは? 逆イールドは景気後退の予兆って本当?
しかも、リセッション入りするまでに、S&P500は平均15%ほど上がっているそうですね。
だからといって、米株を買う気にはなりません。逆イールドが発生したからといって、今すぐ市場が激変するわけではない、ということですね。
先週(8月12日~)は、ドイツの経済指標もサプライズとなりました。4~6月期のGDP(国内総生産)は、驚きのマイナス成長。早速、財政出動の報道も出ています。
※BloombergのデータをもとにザイFX!が作成
ドイツまで景気が悪いとなると、いよいよ買われる通貨の選択肢が円以外に見当たらなくなってきますね。
■米ドル/円の105円防衛に「並々ならぬ決意」?
ところが、米ドル/円は105円が固いですね。
金融当局が105円、そして日経平均2万円の防衛に、並々ならぬ決意を抱いている、との噂です。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 日足)
(出所:Bloomberg)
チャート的にも、米ドル/円は105円を底にしたダブルボトムとなっていますね。
ダブルボトムとなったこともあり、今週(8月19日~)いったんは、戻すのかもしれません。ただ、110円は遠いし、109円も難しい。戻ったとしても108円程度ではないでしょうか。
米国は利下げに動き出したわけですし、かたや日銀は9月に追加緩和の噂はあるとはいえ、大胆な政策の導入は難しい。円高圧力がかかりやすい状況に、変わりはありません。
【参考記事】
●お盆の円高リスク警戒! 日経平均2万円、米ドル/円105円が防衛ラインになるか…!?(8月12日、西原宏一&大橋ひろこ)
■ジャクソンホールでFRB議長の「失言」再び?
米利下げの今後を占う上で注目されているのが、22日(木)から始まるジャクソンホール・シンポジウム(※)ですね。
(※編集部注:「ジャクソンホール・シンポジウム」とは、米ワイオミング州ジャクソンホールで開催される、カンザスシティー連銀主催の年次経済シンポジウムの通称。世界中の中央銀行総裁や金融関係者の多くが参加するイベントのため、毎年、市場参加者から高い注目を集めている。ジャクソンホール会議と呼ばれることも)
冬場は全米屈指のスキーリゾート地としても知られる米ワイオミング州のジャクソンホール。ここで毎年夏に行われるジャクソンホール・シンポジウムは、2010年にバーナンキFRB議長(当時)が金融緩和を示唆したこともあって、近年、為替市場で非常に注目されるイベントとなっている (C)ullstein bild/Getty Images
ジャクソンホールが注目されるのは、金融政策のビッグチェンジを予告する場として利用されてきた経緯があるためです。
2010年には、当時のバーナンキFRB(米連邦準備制度理事会)議長が金融緩和を示唆して円高が進みましたし、2014年には、ドラギECB(欧州中央銀行)総裁も金融緩和の予告の場としてジャクソンホールを使いました。
今回も、パウエルさんが何を話すのか、注目度が高いですね。トランプ米大統領から1%の利下げ圧力をかけられていますが、突っ張るのか、追随するのか。パウエルFRB議長の講演は23日(金)です。
市場との対話が得意ではなく、7月FOMC(米連邦公開市場委員会)でも利下げサイクルの開始ではないとの「失言」があったパウエルさんですから、今回も下手なことを言うと、市場が過敏に反応する可能性があります。
トランプ米大統領から1%の利下げ圧力をかけられているパウエルFRB議長の講演は23日に予定されている。7月FOMCでも失言があっただけに、下手なことを言うと市場が過剰版のする可能性も… (C)Bloomberg/Getty Images News
■9月FOMCの利下げ幅は25bpか?50bpか?
次回のFOMCは9月17日(火)~18日(水)。利下げはほぼ確実だと思いますが、見方が割れているのが利下げ幅ですね。25bp(0.25%)予想が主流だと思いますが、50bp(0.5%)を予想する人もいます。
金利先物市場を見ると、先週末(8月16日)時点で50bpの織り込みは33%。先々週(8月5日~)などと比べると低下していますし、まだ低い印象。視野を広げて来夏(2020年夏)までだと、市場は1%以上の利下げを織り込んでいます。
短期的には9月の利下げ幅が重要なのですが、長期的な流れには関係ないとも言えます。
今週(8月19日~)は、米国・ユーロ圏・オーストラリアで、それぞれの議事録も公開されますね。とくに、21日(水)公開のFOMC議事録(7月開催分)では、今後の利下げについてどんな議論が交わされたのか、注目されています。米株市場の反応も含めて、気をつけておきたいイベントですね。
■進まぬ米ドル安にトランプ大統領はイライラ?
他通貨を見ると、先週(8月12日~)はドイツGDPの悪化もあり、ユーロ/英ポンドが下落して、英ポンド全般が上昇。さらに、ユーロ/米ドルでも米ドル高が進んだことから、ドルインデックスは上昇しました。
(出所:TradingView)
(出所:Bloomberg)
トランプさんが望んでいるような米ドル安は、進んでいません。イライラしているかもしれないですね。
利下げしたとはいえ、他国よりも高金利ですから仕方ないですよね。米ドル安を実現するには、9月に50bp利下げするような大胆な政策が必要なのかもしれないですね。
為替市場と直接の関係はないかもしれないですが、香港の民主派デモも、出口が見えなくなっています。中国の武装警察部隊が深センに集結し、武力鎮圧の影がチラつき始めました。
いずれにせよ、米ドル/円の戻り売り方針は変わりません。公的な買いが入っていると言われる105円台で大きく利食いしたポジションぶんを、今週(8月19日~)の戻り局面で再び売っていきたいと思います。
(出所:TradingView)
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