トルコリラ/円がまた早朝に急落!
え!? また?―――
2018年5月23日(水)の朝、大したトレードはしていないけれど、日課のように主要な通貨ペアのレートをチェックしていた記者は、そう叫ばずにはいられませんでした。
この日の午前7時過ぎ、トルコリラ/円が急落していたのです。
(出所:GMOクリック証券)
「また?」と叫んだのは、トルコリラ/円は昨年、2017年10月9日(月)にも、同じような時間帯に急落(むしろ暴落と言ったほうがいいかも…)する出来事があったから。
【参考記事】
●衝撃の13分間。崩れ落ちたトルコリラ/円の真相とは? 暴落の震源地は日本にあった!? のかも…(1)
●衝撃の13分間。崩れ落ちたトルコリラ/円の真相とは? 暴落の震源地は日本にあった!? のかも…(2)
上の【参考記事】は、ザイFX!編集長の井口がそのときの様子を振り返り、トルコリラ暴落の背景を探ろうと執筆した記事なのですが、トルコリラ/円が7時を回ったあたりから大きく下げ始め、各FX会社でおおよそ7時10分過ぎぐらいから反転し始めたことを紹介しています。
トルコリラを乱高下させるなにかがあるのか?
今回の急落のタイミングでつけた各FX会社のトルコリラ/円の安値と、その安値をつけた時刻をまとめたのが以下の表です。
<主要各社の安値をつけた時刻と安値> | ||
FX会社 「サービス名」 |
安値をつけた 時刻 |
安値 |
外為どっとコム 「外貨ネクストネオ」 |
7:10 | 22.614円 |
セントラル短資FX 「FXダイレクトプラス」 |
7:10 | 22.541円 |
FXプライム byGMO 「選べる外貨」 |
7:11 | 22.281円 |
トレイダーズ証券 「みんなのFX」 |
7:12 | 22.696円 |
ヒロセ通商 「LION FX」 |
7:12 | 22.302円 |
SBI FXトレード | 7:12 | 22.9167円 |
マネーパートナーズ 「パートナーズFX」 |
7:13 | 22.509円 |
GMOクリック証券 「FXネオ」 |
7:13 | 22.659円 |
くりっく365 | 7:19 | 22.66円 |
サクソバンク証券 「スタンダードコース」 |
7:41 | 23.12円 |
※2018年5月23日(水)の7時台につけた安値と、安値をつけた時刻を掲載
※各FX会社の取引画面で確認
この日のトルコリラ/円は、各社で日本時間7時7分あたりから大きく下落し始めたのですが、上表にあるとおり、サクソバンク証券とくりっく365を除き、7時10分から13分までの4分間のあいだに安値をつけています。
サクソバンク証券の1分足チャートでは、7時10分から7時28分までのレートが表示されず、7時29分に23.16円をつけ、そのあと少しもみあってから、7時41分に7時台の安値となる23.12円をつけています。
サクソバンク証券はちょっと例外的ですが、他のFX会社ではおおむね、前回とほとんど同じ時間帯に急落し始め、ほとんど同じ時間帯に安値をつけて反発しているのです。この時間帯にトルコリラを乱高下させる「なにか」があるのでしょうか??
前回と今回では違う背景もある
前回と今回で、ほぼ同じ時間帯に急落したトルコリラ/円ですが、両者の背景には違いもあります。
まず前回、2017年10月9日の暴落は、週明けの月曜日に発生しました。この日は、日本が体育の日で祝日でした。週明けでしかも祝日となれば、市場の流動性はかなり低かったと推測されます。また、そのときは下落の過程でトルコリラ/円が30円の節目を割り込んだため、トルコリラ/円の買いポジションがストップロス注文や強制的なロスカットにあって、下落が加速したことも考えられました。
さらに、値動きと照らし合わせると、絶対的な影響を与えたものだという確信は持てませんでしたが、トルコと米国がお互いにビザの発給を停止したことがニュースで報じられ、トルコと米国の関係悪化が懸念されたという材料もありました。
【参考記事】
●衝撃の13分間。崩れ落ちたトルコリラ/円の真相とは? 暴落の震源地は日本にあった!? のかも…(1)
しかし、今回の急落が起こった2018年5月23日は、週のど真ん中となる水曜日。日本はもちろん、トルコも祝日ではありませんでした。
確かにトルコリラはじりじりとずっと売られていて、トルコリラ/円もここのところ、過去最安値を更新する日が目立っていました。新興国市場からの資金流出懸念のほかに、トルコの政治的な事情もあってトルコリラは弱い動きだったのです。とはいえ、この日の朝7時ごろに、トルコリラが一気に売られるようなニュースが飛び込んできたわけでもありませんでした。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:トルコリラ/円 日足)
そして、下の1時間チャートを見るとわかりますが、23日(水)のトルコリラ/円は、早朝の急落がいったんおさまったあと、その日の欧州時間にかけて一段と売られ、史上最安値を更新しました。ただ、その後はトルコ中央銀行の緊急利上げを受けて一時、急反発しています。
【参考記事】
●トルコ中銀の緊急利上げでトルコリラ急反発! 政策金利の事実上の上限金利は16.50%に
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:トルコリラ/円 1時間足)
朝7時台の急落は、クライマックス的な下落の前兆のような形になってしまったチャートにも見えますね…。
やっぱり、ミセスワタナベが原因!?
前回の暴落時には、トルコリラ/円よりもほんの少し先に、米ドル/トルコリラでトルコリラの暴落が始まったことをザイFX!ではお伝えしました。
【参考記事】
●衝撃の13分間。崩れ落ちたトルコリラ/円の真相とは? 暴落の震源地は日本にあった!? のかも…(1)
しかし、サクソバンク証券の1分足チャートで見比べてみるとわかるように、今回はトルコリラ/円でも米ドル/トルコリラでも、7時7分あたりからトルコリラ安が強まっています。
(出所:サクソバンク証券)
対円と対米ドルで、ほとんど同じ時間にトルコリラ安が始まっていることになります。「鶏が先か卵が先か」ではありませんが、対米ドルが先か、対円が先かは、チャートを見る限りでは判断がつかないことがわかります。
では、トルコリラの急落で推測される原因はなんなのでしょうか?
前日のNY市場の取引終了から1時間ほどしか経過しておらず、東京勢もまだ本格的に市場に参入していない日本時間早朝の取引の薄い時間帯だったため、トルコリラ安が思いのほか進んでしまったということは考えられます。
この日のトルコリラ急落は各メディアでも取り上げられました。日本経済新聞電子版は「7時時点で顧客の評価損益を見直すFX会社からまとまった規模でロスカットのトルコリラ売りが出た」と指摘する、国内FX会社社長のコメントを紹介しています。
また、大手通信会社のロイターは、「証拠金取引の売りが入った可能性がある」という、国内金融機関の見方を紹介していました。
ということは、高いスワップ金利(スワップポイント)を魅力にトルコリラ/円の買いポジションを積み上げている日本人投資家「ミセスワタナベ」の買いポジションの多くが、ストップロス注文や強制ロスカットによって決済されたため、トルコリラが思った以上に下落したということなのでしょうか?
追証のルールに基づく強制決済は相場急落と関係している?
ストップロス注文は、投資家が保有しているポジションの損失額を限定するために自分で設定して出す逆指値注文のことです。
一方でロスカットは日本語で言えば「損切り」ですから、一般的に評価損を抱えた状態で決済し、損失を確定する取引全般を指す言葉になりますが、特に法令で定められた「ロスカット」というものもあります。
これは、ポジションの評価損によって口座内の証拠金がFX会社の定める一定の水準を下回った場合に、投資家の意図にかかわらず保有しているポジションが強制決済されるしくみのこと。投資家の評価損が拡大していくと、FX会社によって監視され、証拠金が一定水準を下回るとほぼリアルタイムで即実行されます。
この場合、一定水準を下回るタイミングは投資家によってまちまちだと考えられます。となると、今回のような特定の時間帯に急落する現象とこれが関係しているとは考えにくいように思えます。
これとは別に、FX会社によっては、「追加証拠金(追証)」のルールに基づく強制決済というしくみも備えていることがあります。
このしくみではまず、ある一定の時点でポジションの評価損益が計算され、評価損が一定水準を下回っていると、指定された時間までに追加証拠金(追証)の入金やポジションの一部決済などを求められます。そして、追加入金やポジションの一部決済を行わなかった場合に、強制決済されるということになるのです。
特定の時間帯に急落する現象と関係あるとすれば、こちらの、「追加証拠金(追証)」のルールに基づく強制決済というしくみだと思えるため、これ以下はこのことに絞って話を進めます。
【参考記事】
●FXの 「ロスカット」と「証拠金判定」による、強制的なポジション決済のしくみとは? 主要FX口座のロスカット水準、追証制度の有無や証拠金判定時刻も一覧で紹介!
追証とそれに絡んだ強制決済のしくみは、すべてのFX会社が導入している制度ではありませんが、上の【参考記事】でもお伝えしているように、日本時間の朝方は多くのFX会社が「強制決済」の処理を行う時間帯です。
このことから、過去の米ドル/円やクロス円の急落時には、個人投資家のロングポジションの「強制決済」が影響して円高が進んだのではないか?と、一部で言われていました。
その強制決済や追証を判断するタイミングは、各社が一時的に取引を停止させて日次精算処理などを行う、メンテナンス時間帯に実施されることが多いのではないかと考えられます。
調べてみたら、強制決済のタイミングは各社でばらばらだった
もし、強制決済の執行時刻が日本時間の午前7時ごろに集中しているのなら、それが相場急落に絡んでいる説が有力となってくるかもしれません。
そこで、前回も今回も米国はサマータイムの期間中だったので、サマータイム中の火曜日~金曜日に、主要FX会社とくりっく365の取引が停止する時間と、追加証拠金の判定時刻や強制決済を執行するタイミングを調べてみました。
<各社の取引停止時間と決済ルール> | |||
FX会社 「サービス名」 |
サマータイム中の 取引停止時間 (火曜~金曜) |
追証の 判定時刻 |
強制決済の タイミング |
外為どっとコム 「外貨ネクストネオ」 |
5:55~6:10 (15分間) |
制度なし | ― |
トレイダーズ証券 「みんなのFX」 |
5:40~6:00 (20分間) |
制度なし | ― |
ヒロセ通商 「LION FX」 |
6:00~ (5分~30分) |
制度なし | ― |
マネーパートナーズ 「パートナーズFX」 |
5:55~6:10 (15分間) |
NY市場 終了時点 |
翌営業日 18時 |
GMOクリック証券 「FXネオ」 |
なし | NY市場 終了時点 |
翌営業日 午前3時 |
SBI FXトレード | 5:30~6:00 (30分) |
取引停止 時間中 |
翌営業日の 終了30分前 |
FXプライム byGMO 「選べる外貨」 |
5:57~ (10~15分程度) |
NY市場 終了時点 |
翌営業日 午前0時 |
サクソバンク証券 「スタンダードコース」 |
なし | 制度なし | ― |
セントラル短資FX 「FXダイレクトプラス」 |
5:55~6:10 (15分間) |
制度なし | ― |
くりっく365 | 5:55~6:55 (1時間) |
取り扱い会社 による |
取り扱い会社 による |
※くりっく365および各FX会社の取引約款や電話での確認を基に作成
米国のサマータイム中は日本時間午前6時にNY市場が終了します。そのため、多くの店頭FX会社が、午前6時を挟んだおおむね5~30分程度の時間帯でシステムメンテナンスを行い、追証の判定やスワップ金利(スワップポイント)の算出を行っているようです。
そして、追証の入金やポジションの一部決済によって証拠金維持率の回復を行わなければならないタイミング、つまり、強制決済が発動される時刻は各社でばらばらです。
ということは、日本時間の朝7時ごろに、FX会社からまとまったトルコリラ/円ポジションの強制決済が出たとされる説は、あまりしっくりこないようにも思えます。
くりっく365は朝7時に強制決済!?
ところが、トルコリラ/円が急落したこの日、FXプライム byGMOのマスコットで、同社のマーケット情報を配信する部署に所属する「プライヌくん」が、公式Twitterで気になるつぶやきをしていました。
まさか、くりっく365が原因ということなのでしょうか?
ちなみにGMOクリック証券(くりっく365)の追加証拠金に関するルールは、同社の店頭取引である「FXネオ」といっしょ。GMOクリック証券(くりっく365)の取引ルールを紹介するページには、追加証拠金に関するルールについて、以下のように記載されていました。
(出所:GMOクリック証券)
つまり、GMOクリック証券(くりっく365)のルールを今回のケースに当てはめると、5月21日(月)の取引が終了した22日(火)午前5時55分時点のレートを基に追加証拠金が必要になるかどうかが判定され、23日(水)午前3時までに追加の入金やポジションの一部決済を行わなかった投資家のポジションが、強制決済されることになります。
改めてトルコリラ/円の日足チャートを振り返ってみると、5月21日(月)の終値は24円台前半と、それまでの安値を更新して取引が終わっており、くりっく365のその日のトルコリラ/円の精算価格は24.26円でした。
確かに、この時点で追加証拠金が必要となったくりっく365ユーザーは多かったと推測できます。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:トルコリラ/円 日足)
ただし、くりっく365自体には追加証拠金のルールはありません。追加証拠金のルールを導入するかどうかは、取引参加者(くりっく365を取り扱っている会社)の判断に委ねられています。
くりっく365には一部の店頭FX会社だけでなく、証券会社や商品先物取引業者なども参加していますが、それらすべての取引参加者が追加証拠金のルールを導入しているわけではなく、導入している会社の強制決済を執行するタイミングも、記者がざっと調べた限りではまちまちでした。
先ほど触れたGMOクリック証券(くりっく365)だと、強制決済を解消するまでのタイムリミットは23日(水)午前3時なわけです。午前3時時点での約定を保証するものではないとうたっていますが、そこから順次、解消されなかったポジションを強制決済していくというルールを考えれば、営業日が翌日に変わった23日(水)の午前7時過ぎに、強制決済の売りが集中して執行されたとも考えにくいです。
もしも、くりっく365が、取引参加者から受けた強制決済の注文を、朝7時すぎに一気にまとめて執行するなんてことをやっているのであれば、話は別ですが…。
結局のところ、いろいろと言われていることはあくまでも推測の域を出ないもので、約半年の間に2回も、日本時間早朝の7時すぎから7時10分すぎの時間帯にトルコリラ/円が急落した本当の理由はわからないということになりそうです…。
くりっく365の建玉数量は急減少している
しかし、くりっく365を運営する東京金融取引所の日次データを見てみると、くりっく365のトルコリラ/円の建玉数量は、急落した5月23日(水)に大きく減少したことがわかります。
※東京金融取引所のデータ(2018年5月~)を基にザイFX!が作成
この建玉数量のうちのどれだけが買いポジションで、どれだけが売りポジションなのかは明示されていないのでわからないのですが、おそらく、ほとんどの建玉が買いポジションだということは想像に難くないです。
数日前から建玉数量は少し減少傾向にありましたが、5月23日(水)には建玉数量がたった1日で5万枚(※)以上、率にして15%以上も減っているということは、くりっく365でトルコリラ/円を取引しているかなり多くのユーザーのポジションが、逆指値注文にヒットしたり、手仕舞いしなければならない状況になったということです。
(※:くりっく365の場合、「1枚」とは「1万通貨」を指す)
くりっく365における通貨ペア別の建玉数量では、トルコリラ/円は米ドル/円に次ぐ第2位の位置を、ここしばらくはずっとキープしています。これは、建玉数量が大きく減少した5月23日(水)が終わった時点でも変わっていません。
世界の中で、円が絡むトルコリラ/円の取引をしているのが、ほぼ日本のFXユーザーであることは疑いようのない事実でしょうから、そう考えるとくりっく365ユーザーのトルコリラ/円のポジションが、トルコリラ/円相場に大きな影響を与えていたであろうことは容易に推測できます。
あくまでも記者個人の見解ですが、先ほどの建玉数量のデータを見る限りだと、「プライヌくん」がなかば言い切るようにつぶやいていた、くりっく365が朝7時に強制決済をするという話は別にしても、くりっく365から出た投資家の売り注文がトルコリラ/円の下落を大きくさせたという可能性はかなり高いのではないでしょうか?
為替って、24時間取引できるはずじゃ…
トルコリラ/円急落の本当の理由ははっきりしませんでしたが、当記事を執筆するためにいろいろと調査するなかで、記者にはどうしても気になることがありました。
それは、くりっく365の取引時間です。
先ほどの各社のメンテナンス時間などをまとめた表を以下に再掲載します。
<各社の取引停止時間と決済ルール> | |||
FX会社 「サービス名」 |
サマータイム中の 取引停止時間 (火曜~金曜) |
追証の 判定時刻 |
強制決済の タイミング |
外為どっとコム 「外貨ネクストネオ」 |
5:55~6:10 (15分間) |
制度なし | ― |
トレイダーズ証券 「みんなのFX」 |
5:40~6:00 (20分間) |
制度なし | ― |
ヒロセ通商 「LION FX」 |
6:00~ (5分~30分) |
制度なし | ― |
マネーパートナーズ 「パートナーズFX」 |
5:55~6:10 (15分間) |
NY市場 終了時点 |
翌営業日 18時 |
GMOクリック証券 「FXネオ」 |
なし | NY市場 終了時点 |
翌営業日 午前3時 |
SBI FXトレード | 5:30~6:00 (30分) |
取引停止 時間中 |
翌営業日の 終了30分前 |
FXプライム byGMO 「選べる外貨」 |
5:57~ (10~15分程度) |
NY市場 終了時点 |
翌営業日 午前0時 |
サクソバンク証券 「スタンダードコース」 |
なし | 制度なし | ― |
セントラル短資FX 「FXダイレクトプラス」 |
5:55~6:10 (15分間) |
制度なし | ― |
くりっく365 | 5:55~6:55 (1時間) |
取り扱い会社 による |
取り扱い会社 による |
※くりっく365および各FX会社の取引約款や電話での確認を基に作成
上表に記載した店頭FX会社がシステムメンテナンスなどで取引を停止する時間は、5分から最大で30分の間に集約されていますが、だいたい15分ぐらいが多いですね。
そんななかでGMOクリック証券とサクソバンク証券は、日次精算やスワップ金利の算出をしている間も休むことなく取引できます。これって簡単ではなく、かなりスゴイことなのではないかと思います!
ところがです。
くりっく365では火曜日から金曜日は日本時間の午前5時55分に取引が終わり、翌営業日の取引が始まるのは6時55分です。つまり、1時間ものあいだ、まったく取引できない時間があるということになります。
為替は土日を除き、平日なら24時間取引されています。その為替相場の値動きを対象にしたFX取引が、為替市場が開いているさなかに1時間も停止されるというのは、FXのいちユーザーである記者にとっても、あまり良くないことのようにしか思えません…。
日本がシステミックリスクの震源地にならないように…
幸い、今回のトルコリラ/円が急落した朝7時台は、くりっく365が取引を停止している時間というわけではありませんでした。
くりっく365のトルコリラ/円で1分足の「買い気配値を表示するチャート」を見ると、7時11分と12分に気配値がなくなっていますが、「約定値を表示するチャート」では、注文が約定していることが確認できました。
(出所:岡三オンライン証券)
しかし、前回、トルコリラ/円が急落した2017年10月9日(月)は、少し景色が違っていました。
くりっく365の週明け月曜日の取引開始時間は午前7時10分。これは米国がサマータイム中であるかないかにかかわらず、1年を通じて固定されています。
(出所:GMOクリック証券)
そして、前回のトルコリラ/円の急落は2017年10月9日の月曜日に起こっていて、店頭FX会社の多くで大きく下げ始めたのが午前7時4分ごろ。その後、くりっく365の取引が始まる7時10分を少し経過してから、トルコリラ/円は反発に転じているのです。
ということは、くりっく365でポジションを持っていると、他のFX会社で取引している人よりも、一歩遅れて対応しないといけなかったことになります。
そして、7時10分の取引開始直後にくりっく365でストップロス注文が執行されてクライマックス的な下落を引き起こし、それによってつけた安値を底にして、相場が反転していったことも考えられました。
あくまで推測の話にはなりますが、海外の投機筋がくりっく365の取引開始時刻を利用して、トルコリラ/円の買いポジションを狙い撃ちしたなんてシナリオも描けたわけです。そのことは、以前に公開した記事でも触れたとおりです。
【参考記事】
●衝撃の13分間。崩れ落ちたトルコリラ/円の真相とは? 暴落の震源地は日本にあった!? のかも…(1)
●衝撃の13分間。崩れ落ちたトルコリラ/円の真相とは? 暴落の震源地は日本にあった!? のかも…(2)
そういったことを考えると、もしかしたら今回の7時過ぎの急落は、くりっく365の取引開始時刻が平日も7時10分からだと勘違いした海外の投機筋が、うっかりミスで7時過ぎからトルコリラに大量の売りを持ち込んだなんて、かなりうがった推測もできそうな気がするのは記者だけでしょうか…。
それはさておき、折しも現在、金融庁ではシステミックリスクが起こらないようにするための有識者検討会が開かれています。
【参考記事】
●日経は新レバレッジ規制の結論を知ってる!? 「第1回有識者検討会」で話されたこととは?
●有識者から新レバレッジ規制必要なしとの声も!?春に規制ありとした日経新聞は誤報?
●有識者検討会に新たな参加者もレバレッジ規制強化の声はなく…!?
●風雲急!店頭FX原則禁止論まで飛び出した第4回検討会。レバ規制強化派が優位に!?
1時間という、かなり長い時間帯にわたってくりっく365に取引できない時間帯があることで、日本が震源地となるシステミックリスクが起こらないことを、心から祈るばかりです。
(ザイFX!編集部・堀之内智&井口稔)
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