■米ドル/円は大きく下窓を開けて104円台半ばへ
今朝(8月26日朝)の米ドル/円は大きく下窓を開けて始まりましたね。
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原因は米中貿易戦争の激化。
先週金曜日(8月23日)、パウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長のジャクソンホール講演に注目が集まる中、直前に中国が米国への報復関税を発表しました。
サプライズのなかったパウエル議長の講演を挟み、トランプ米大横領がツイッターで中国への対抗措置の発表を予告しましたが、実際に発表されたのは相場が閉まった直後。
そのため、今朝は下窓を開けて始まるだろうと予想できました。
【参考記事】
●ジャクソンホールでパウエル議長が再び「失言」か!? 米ドル/円は戻り売り継続で!(8月19日、西原宏一&大橋ひろこ)
西原さんのメルマガでも予想されていたとおりの展開になったわけですね。
米国の報復措置は、発動済みの第1弾から第3弾の関税の税率を25%から30%へ、第4弾についても当初予定の10%から15%へと引き上げる、というものです。
これまでの上限であった25%を超えてきましたし、トランプさんは「We Don't Need China(我々は中国を必要としない)」とすらツイートしており、解決は難しそうです。
Our Country has lost, stupidly, Trillions of Dollars with China over many years. They have stolen our Intellectual Property at a rate of Hundreds of Billions of Dollars a year, & they want to continue. I won’t let that happen! We don’t need China and, frankly, would be far....
— Donald J. Trump (@realDonaldTrump) August 23, 2019
■トルコリラ/円も大幅下落。円高とは別の要因も
一方、日米の貿易交渉は基本合意しました。
トウモロコシや大豆を日本が大量に購入することになるものの、自動車関税は先送りに。
農産物の購入でトランプさんの顔を立てた、ということでしょうか。
米国にしても対中国で手一杯ですから、日本までは手が回らないでしょうしね。
今朝(8月26日朝)はトルコリラ/円の下落も目立ちました。
円高に加えて、エルドアン大統領によるイスタンブール市長解任の思惑が浮上したことがトルコリラ売りを呼んだようです。
(出所:TradingView)
豪ドル/円も70円割れの安値をつけましたし、米ドル/円やクロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)は総じて1月安値を下抜けたことになります。
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■1月のフラッシュ・クラッシュとの違いは?
ところが、米ドル/円は10時には早々に窓埋めを完了し、12時前には105.78円まで戻しました。
【参考記事】
●月曜日の窓埋めトレードを狙ってひと儲け! 午前3時からトレードすればニ度オイシイ…!?
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 30分足)
1月3日(木)のフラッシュ・クラッシュの記憶があるため、マーケットでは買い戻しが先行しているようです。
ただ、原因が不明瞭だった1月と違い、今回は米中貿易戦争という明確な理由があり、米株も崩れています。
リスクオフは続くのでしょうし、米ドル/円も大きくは戻しにくい環境です。
【参考記事】
●フラッシュ・クラッシュで米ドル/円が暴落! 株の下落を伴えば、100円割れの可能性も!?(1月7日、西原宏一&大橋ひろこ)
●フラッシュ・クラッシュの真犯人はトルコリラ!? クラッシュ時もスプレッドが優秀なFX会社は?
(出所:TradingView)
コモディティ市場では、中国が米国産原油への関税を表明したことで原油価格が弱含む一方、ゴールドは強い。今朝は1550ドルを超えてきました。
逆相関になりやすいドルインデックスが上昇している中でもゴールドは上げてきて、これから米ドル安が進めばゴールドはもう一段上をめざすことになりますね。
【参考記事】
●猫も杓子も警戒なら、危機は発生しにくい。もっとも危惧される英ポンド安に変化の兆し(8月23日、陳満咲杜)
(出所:Bloomberg)
特にユーロ/米ドルが上がり始めればもっと上がる、ということになりそうですね。
■「Korexit(コレグジット)」へ? 香港デモもリスクオフ材料
先週(8月19日~)は韓国のGSOMIA(軍事情報包括保護協定)破棄というニュースもありました。
発表直後の米ドル/円は10銭ほどですが、円高に反応しています。
米ドル/韓国ウォンも節目である1200ウォンを超えたままで、韓国ウォン安が続いています。
まだ為替市場に大きな影響があるわけではありませんが、日韓関係の悪化はリスクオフ材料であることは間違いない。
横目でにらみながら警戒する、という感じですね。
(出所:Bloomberg)
最近では、「韓国が西側から離脱する『Korexit(コレグジット)』が実現し、中国側に付くのでは」との声も聞こえてきました。
米中貿易戦争といっても、要は米中の覇権争い。
出口の見えない香港デモの背後にも米国の影がチラついており、先週末にはデモ開始以降初めて警察が発砲しました。
デモの激化は上海株市場が崩れるきっかけになるかもしれませんし、リスクオフ材料として要注意です。
■英ポンドは乱高下が続きそう
英ポンドはいかがですか。
先週(8月19日~)はボリス・ジョンソン英首相がメルケル独首相やマクロン仏首相などEU(欧州連合)首脳との接触を開始し、英ポンドは上昇しました。
【参考記事】
●英ポンド大混乱か。合意なき離脱の高まりがEU離脱取り止めの可能性を高める!?(8月22日、西原宏一)
●市場を膠着させている4つの「摩擦」とは? 英ポンドはブレグジット後の最安値更新も!?(8月22日、今井雅人)
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:英ポンド/米ドル 4時間足)
売りポジションが溜まっていたため、買い戻しが進んだのでしょう。
来週(9月2日~)には英議会が再開します。野党からは内閣不信任案提出の動きもあり、ヘッドラインで乱高下する展開が続きそうです。
■米ドル/円は戻り売りでよさそう。中期的には101円か
今週の戦略はどう考えますか?
先週(8月19日~)は米ドル/円の110円、109円が遠くなったと話しましたが、今週(8月26日~)は108円も遠くなっています。
買い材料はなにかあっただろうか?という状況ですね。
【参考記事】
●ジャクソンホールでパウエル議長が再び「失言」か!? 米ドル/円は戻り売り継続で!(8月19日、西原宏一&大橋ひろこ)
これだけ円高が進むと9月の日銀会合でなにか発表があるかもしれませんね。
その可能性はありますが、打つ手は限られている。米ドル/円の戻り売りでいいのでしょう。
ターゲットは101円。100円はさすがに堅いでしょうから、その手前を中期のターゲットにしたいと思います。
(出所:TradingView)
(構成/ミドルマン・高城泰)
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