10万部突破! FXベストセラー本の著者登場!
「12月、英ポンドをトレードし、2日間で約580万円の利益になりました。オーダー情報やポジションの片寄り、ファンダメンタルズ、チャート、それにボラティリティ――すべての条件が揃ったトレードでした」
そう話すのは、12月に書籍『武器としてのFX』(田畑昇人著・扶桑社・税込み1650円)を発売した田畑昇人さん(@shoto0212)だ。田畑さんは「初心者から上級者まで学べる田畑昇人公式FXブログ」で、FXトレーダーに向けて情報発信もしている。
田畑さんといえばデイトレーダーのイメージもある。10万部を超えるベストセラーとなった処女作『東大院生が考えたスマートフォンFX』(田畑昇人著・扶桑社・税込み1540円)で紹介していた手法もデイトレードがメインだった。
【参考記事】
●『東大院生が考えたスマートフォンFX』の著者が語ったFXで勝つための2つの武器
●アメリカ横断中に100万円超の大儲け!ニューヨーク大戸屋で日銀トレード大成功!?
ところが、12月の英ポンドトレードでは、これまでとはあきらかに傾向が違うトレードが見られた。田畑さんの手法にどんな変化があったのだろうか。
大きなストップロスを狙ったトレード手法で儲ける
「1冊目ではオーダー情報やポジションの片寄りを見ながらのデイトレードがメインでした。
ポジションが片寄ったとき、反対方向に大きなストップロス(逆指値注文、損切り)が見えていれば、ストップロスをつけて大きく伸びるだろうという方向に賭ける手法です」
オーダー情報はトレードの重要な手がかり。大きなストップロスが見えていれば、そこをつけにいく動きが発生しやすく、また、ストップロスが一斉にヒットすることで勢いよく動きやすくなる。
【参考記事】
●著名トレーダーも注目するポジションの片寄りと注文情報はどのFX会社で見られる?
ストップロスをつけるか否かの見極めは?
「ただ、ストップロスをつけても期待したほど伸びないこともありますし、大きなオーダーのあるレートの手前で反転することもある。ポジションの片寄りや時間なども見て、ストップロスをつけるのか/つけないのか、つけた後に伸びるのか/伸びないのかを判断していました」
冒頭で紹介した田畑さんの英ポンドのトレードを例に見ていこう。田畑さんが英ポンドを取引した日、YJFX!の英ポンド/米ドルのポジションは売りに片寄っていた。
(出所:YJFX!)
個人投資家だけでなく、為替のプロも利用するIMM(国際通貨先物市場)を見ても、英ポンドは3万枚超の売り越し。市場のポジション全体が英ポンド売りに片寄っている状況だった。
(詳しくはこちら → 経済指標/金利:シカゴIMM通貨先物ポジションの推移)
英ポンド売りに片寄った状態で上に大きなストップが見えた
「次にオーダー情報を見ると、英ポンド/米ドルは直近高値である1.3000ドルにストップロスが溜まっていました。
ポジションが売りに片寄った状況ですから、もし1.3000ドルのストップロスをつければ売り手の損切りが一斉に発動して大きく上昇する可能性があります」
(出所:YJFX!)
為替のオーダー情報を公開する会社はいくつかあるが、上の画像はYJFX!のもの。オーダー情報を公開している日本のFX会社の中では最大手となるため信頼性も高い。
(出所:TradingView)
ストップロスをつけると4分で35pipsの急騰
田畑さんが期待したとおり、英ポンド/米ドルは1.3000ドルのストップロスをつけた直後、4分間で35pipsほど急騰した。
こうやってポジションの片寄りやオーダー情報を見ながら、大きなオーダーのブレイクを狙ってトレードしていくのは田畑さんの1冊目の書籍で解説されていた手法のひとつだ。
(出所:TradingView)
英ポンドが動く時間には明確な傾向がある
「ただ、実際にはいつもストップロス狙いがうまくいくわけではありません。ストップロスの手前で反転することも多く、また、ストップロスをつけたものの思ったほど上がらないことも少なくありません」
ストップロスをつけにいく勢いがあるのか。ストップロスをつけて勢いよく動くのか――。その手がかりはどこにあるのだろうか。
「ひとつは時間です。書籍でも詳しく説明していますが、英ポンド/米ドルはロンドン時間以降、あきらかにボラティリティが高まります」
東京市場であればストップロスの手前で反転する可能性が高いが、ロンドン時間ならブレイクする可能性が高そう、と判断できる。
(出所:ゲインキャピタル・ジャパンのデータを基に筆者作成)
「ボラティリティをトレードする」
「もうひとつが、ボラティリティです。今の僕が以前と違うのは、『ボラティリティをトレードする』という視点を持ったこと。
『トレード=ボラティリティを利益に変える作業』だと思っています」
値幅が小さい相場だとトレードで稼ぐのは難しい。とくに、ここ数年、為替市場のボラティリティは際立って低下している。
2018年、米ドル/円の値幅は上下9.99円。変動相場制以降の最低記録を更新した。2019年の値幅も上下8円に満たず、最低記録の更新が濃厚だし、ユーロ/米ドルも同じく過去最低を更新しそうだ。
【米ドル/円の年間値幅に関する参考記事】
●ザイFX!で2018年を振り返ろう!(1) 米ドル一強! その時トルコショックが起きた
●ザイFX!で2019年を振り返ろう!(1) 大暴落後は動かない、動かない、動かない
「とくにトレンドフォローだと、ボラティリティがない相場では『天井ロング、底ショート』を繰り返して無限に負けることになります」
トレンドフォローなら直近高値・安値を超えるなどのブレイクを確認してから買っていくことになる。しかし、ブレイクがダマシとなって再び下落するような動きが、この数年の米ドル/円では頻発している。
ボラティリティの「代理変数」のひとつがVIX指数
「株式市場ならば、『高値を更新しても出来高を伴っていなければダマシを警戒する』、といったように出来高が指標となります。
でも、為替市場全体を網羅するような出来高指標はありません。そこで参考になるのがVIX指数です」
VIXは「ボラティリティ・インデックス」の略。米国株の代表的な指数のひとつであるS&P500のオプション市場をもとにして算出される指数。
VIX指数が高ければ、それだけ投資家が抱く将来への不安、不透明感も高く、上昇であれ下落であれ値動きが大きくなりやすい。VIX指数は俗に恐怖指数とも呼ばれる。
【参考記事】
●NYダウ、史上最大の暴落にVIX指数の影。ビットコインも真っ青。2日で96%下落って!?
「ボラティリティをどう利益に変えるかと考えたとき、VIX指数は有効な指標。とくにリスクオフの円高が進んでいるときには、値動きの『加速度』を測定する代理変数となってくれます
VIX指数は20を超えて高まっていると、リスクオフ方向に動きやすいとされる。
(出所:TradingView)
「VIX指数が高まっているときは、市場の非効率性が高まっている状態です。割高・割安といった次元とは異なり、価格を見ずに『とにかく売りたい』といったパニック売りなどが出るため、非効率性が高まるんです」
VIX指数が高まるということは、リーマンショックをはじめ、過去に何度も起きてきた「売りが売りを呼ぶ」ような、パニック的な相場が発生しやすい状況になるということだ。
手軽に使える通貨のボラティリティ指数があった!
「VIX指数も役に立つ指標ではありますが厳密に見ると、為替市場と高い相関性があるわけではありません。
FXで使うには、より精緻な指標が必要。そのひとつが、通貨オプションの『インプライド・ボラティリティ』(IV)です」
インプライド・ボラティリティは「予想変動率」。オプション市場の取引から将来の変動率を市場参加者がどう考えているのかを示した比率だ。
インプライド・ボラティリティが高いほど、市場参加者はボラティリティの高まりを予想していることになる。インプライド・ボラティリティは先ほど出てきた株のVIX指数を算出する際にも用いられている。
「ただ通貨オプション取引は一般的ではなく、IVを見る手段も限られています。IVの代替として使えるのが『通貨VIX』なんです」
(「田畑昇人氏の新しい武器『通貨VIX』とは? IG証券のノックアウト・オプションを使う理由」へつづく)
(取材・文/ミドルマン高城泰 編集担当/ザイFX!編集部・庄司正高)
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