(「『武器としてのFX』が話題の田畑昇人氏は580万円を2日間のトレードでどう稼いだ?」から続く)
「円VIX」が高まると米ドル/円が動きやすい
トレードのカギとしてボラティリティに着目するようになった田畑昇人さん。
【参考記事】
●『武器としてのFX』が話題の田畑昇人氏は580万円を2日間のトレードでどう稼いだ?
為替市場のボラティリティを測る指標として「インプライド・ボラティリティ」(IV)の代わりに見出したのが「通貨VIX」だった。
「円VIX」、「ユーロVIX」、「英ポンドVIX」などの通貨VIXだ。以下のチャートは米ドル/円に円VIXを重ねたもの。
(出所:TradingView)
2019年8月、米中通商協議の難航で円高が進んだ場面では円VIXが高まっていた。基本的な関係は、「通貨VIXの高まり=ボラティリティの高まり」、「通貨VIXの低位安定=ボラティリティの低下」と考えてよさそうだ。
こうした通貨VIXなら、ブラウザベースで誰でも使える「TradingView」でも見られるため、汎用性は高い。
「米ドルVIXはないの?」と思うかもしれないが、通貨VIXは算出元になる市場の銘柄が円/米ドルやユーロ/米ドルなど、すべて対米ドルを基本としているため、「米ドルVIX」はない。IMMのポジション情報に米ドルがないのと同じだ。
「伸びるか/伸びないか」の判断基準に
この通貨VIX、田畑さんはトレードにどう活用しているのだろうか。
「ストップロスをつけにいくのか、手前で反転してしまうのか。ストップロスをつけて跳ねるのか、跳ねないのか。ポジションを持ち越して利益を伸ばしたほうがいいのか、すぐに利食ったほうがいいのか。通貨VIXはこうした判断の材料となってくれるんです」
前回の記事で紹介した英ポンドのトレードでも、通貨VIXが田畑さんの判断を助けていた。
【参考記事】
●『武器としてのFX』が話題の田畑昇人氏は580万円を2日間のトレードでどう稼いだ?
(出所:TradingView)
英ポンド/米ドルがストップロスのたまっていた1.3000ドルの手前まできたとき、英ポンドの通貨VIXも高まっていた。
ボラティリティが高い状態だからストップロスをつけにいく可能性が高まるし、ストップロスをつければ跳ねやすい、と推測できる。
通貨VIXとチャート分析を合わせて判断精度を高める
「実際にストップロスをつけて英ポンドは急騰しました。しかも日足チャートを見ると、長い陽線ができて直近高値を上抜けし、MACDもゴールデンクロスし、上昇トレンドの発生を示唆していました。
デイトレードで終わらせるのではなく、スイングトレードで大きな利幅が狙える場面です」
【FX初心者のための基礎知識入門】
●スイングトレードのメリットとデメリットを解説! トレードに適したFX会社は?
(出所:TradingView)
スイングトレード主体に変えた理由
デイトレードがメインだった以前の田畑さんと違い、現在は数日間持ち越すことも多くなった。
「1冊目の時点との明確な違いをあげるとすれば、『トレード期間』です。以前だと、利益が伸びそうでも確信が持てずに決済することがありました。
今は通貨VIXが高まっていてボラティリティの高まりそうな場面では、2日、3日と保有して利益を伸ばすし、逆に通貨VIXが低ければ欲張らずに決済します」
コスト、すなわちスプレッドからも田畑さんは説明する。
「スプレッドが狭くなったとはいえ、米ドル/円だと0.2銭。1回のトレードの利幅が2銭だとコストが10%を占めてしまいます。
でも利幅が200銭ならコストの比率は0.1%に低下する。利益が伸ばせるときに伸ばすのはコスト面から考えても理にかなっています」
IG証券の「ノックアウト・オプション」でエントリーした理由
逆にいえば、利幅の大きなトレードを行えば、スプレッド0.1銭の違いに血眼になる必要がなくなる、ということでもある。
田畑さんが英ポンドのトレードで利用したのも、IG証券の「ノックアウト・オプション」だった。
ノックアウト・オプションは、IG証券が提供しているFXとよく似た為替商品。「ノックアウト・レベル」と呼ばれる損切り位置を決めてからエントリーすることでリスクが限定され、その代わりに少ない資金で取引することが可能になっている。
ノックアウト・レベルを現在レートのすぐ近くに設定することで、少ない資金で取引できることから、急速に人気を高めている。
【参考記事】
●ノックアウト・オプションに130銘柄追加。VIX指数(恐怖指数)が50円で取引可能!?
●ノックアウト・オプション──それは リスク限定で利益が狙える新しい金融商品
●意外と初心者向き!? FXより低リスクで利益を 狙える新商品「ノックアウト・オプション」って?
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「ノックアウト・オプションを利用したのは、週末を越えてポジションを持つ可能性があったためです。もし、週末にニュースが出て月曜日の朝に下窓を開けて始まった場合、通常のFXだと想定以上の損失を被るリスクがあります。
でも、ノックアウト・オプションだとノックアウト・レベルで確実に損切りしてくれる。どんなに乱高下しても損失を限定できるため、ノックアウト・オプションを利用しました」
窓開けやレートの乖離による想定外の損失を回避
ノックアウト・レベルで損切りされると、「ノックアウト・プレミアム」と呼ばれるコストが発生する。ただ、ノックアウト・レベルより手前なら自分の判断で決済することもでき、その場合、そのコストはかからない。
「デイトレードならオススメしないですが、100pips、200pipsを狙っていくスイングトレードならスプレッドやプレミアムは大したコストにならない。
ポジションを持つときには損切りする位置を決めておくべきだし、損失を限定させたい人には便利な商品です」
ノックアウト・オプションを活用しているという田畑さんだが、エントリーはどのように行っているのだろう。1回だけなのか? それとも分割して発注しているのか──。
「含み益が出たら買い増していく『ピラミッディング』はせず、基本的に最初のエントリーだけです。
米ドル/円が1年で10円も動かないような相場で10pips、20pipsで追撃していると持ち値が悪くなり、思ったほど伸びないときにマイナスで終わってしまうリスクも高まるからです。
今はブレイクの直前・直後に入ったら、なるべくホールドして、含み益が出たら絶対に勝ちで終えることを目指しています」
そんな田畑さんが英ポンドの急落を警戒していたのは、ファンダメンタルズに理由があった。
【FX初心者のための基礎知識入門】
●FXのファンダメンタルズに含まれるものは? 結果が良くても通貨は下落するかも…!?
「ポジションを取ったのは、英総選挙投票日(12月12日)の9日前でした。
世論調査では与党・保守党の勝利が予想され、『合意あるブレグジット』へと向かって英ポンドの買い戻しが期待できた時期です。
そんな時期に英ポンドを買うのはファンダメンタルズ的にも理にかなっています」
【参考記事】
●どうなる? 12月12日英総選挙。6つの予想シナリオから英ポンドの動きを大予測!(12月6日、松崎美子)
総選挙という材料もあっての買いだったが、そのわりには開票を待たず、2日間で決済している。
「ポジションとは在庫である」
「トレードでは、『いくら上がる・下がる』とレートだけを考えてしまいがちです。レートも大切ですが、同時に『いつまでに』とチャートの横軸である日付を考えることも大切。なぜなら、僕らにとって『ポジション=在庫』だからです」
(出所:TradingView)
製造業や小売業は在庫を誰かに販売することで利益に変える。トレードでも保有するポジションを決済することで利益が発生する。
「在庫はリスクと裏返し。社会の流れが変わって在庫が売れなくなるかもしれないし、トレードであればレートが突然、乖離して想定以上の損失を被るリスクがあるからです」
企業が売れ残りリスクを低減するため在庫を厳しく管理するように、トレードでもポジション保有期間の管理が必要だ、と田畑さんは話す。
「横軸分析」にファンダメンタルズを使う
「エントリーするときには、『いつまでに上がる/下がる』と期限をイメージしておきます。
そのための参考になるのがファンダメンタルズ。
今回でいえば、英総選挙の結果が出れば、『セル・ザ・ファクト』で売られる可能性があった。それがイメージできていれば『投票までに決済する』と横軸の期限が決められます」
エントリー時には「利益確定/損切り」に加えて、「ポジションの保有期限」も決めておこう。こうしたファンダメンタルズの活用も、以前の田畑さんから変わったポイントだ。
「為替市場では、旬の通貨があります。金融政策の転換や政治、リスクオフなど材料が出た通貨ほどボラティリティが高まり、トレードしやすくなります。
そうした旬を見極めるためにも必要なのがファンダメンタルズ分析です」
今年(2019年)でいえば、夏場には米中貿易戦争を材料にして米ドル/円が急落したし、秋にはブレグジットと総選挙により英ポンドが旬の通貨となった。
ボラティリティが利益を増やすカギ
「ボラティリティに着目するようになり、試行錯誤はありましたが、最近はパフォーマンスが安定しています。今までよりも利益は確実に増えました。書籍ではそうした試行錯誤の結果をまとめているので、ぜひ読んでみてください」
田畑昇人さんの新著『武器としてのFX』には、ボラティリティや為替市場のランダム性に対する考え方、通貨VIXやトレードに活かす実践的なファンダメンタルズ分析など、多くの新機軸が盛り込まれている。カリスマトレーダーの思考法をのぞいてみよう。
(取材・文/ミドルマン・高城泰 編集担当/ザイFX!編集部・庄司正高)
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