■「#ww3」(第3次世界大戦)が始まるのか
年始からきな臭いですね。米国は1月2日(木)、イラン革命防衛隊のソレイマニ司令官を殺害したと発表しました。
イランでは「影の司令官」とも呼ばれる大物だったそうです。
トランプ米大統領は「戦争をやめるためであって、戦争をしかけたわけではない」と説明しています。
ソレイマニ司令官を倒せばテロの脅威を減じられる、とのロジックですね。
イラン革命防衛隊のソレイマニ司令官殺害について、トランプ米大統領は「戦争をやめるためであって、戦争をしかけたわけではない」と説明した (C) Chip Somodevilla/Getty Images News
そんな思惑とは裏腹に、イラクの米大使館付近や米軍基地が砲撃され、また、イラン政府は「もはや核開発に制限はない」と宣言。緊張感が高まっています。
イランは、これまでも隠れて核開発を進めていましたから、おおっぴらに開発する大義名分を得たことになります。
しかし、軍事的な報復となると、話は別。トランプ米大統領が「52カ所の標的を攻撃する」とツイートしているように、報復すれば戦争が始まってしまう。
「#ww3」(第3次世界大戦)のハッシュタグがツイッターで流行っているように、緊張感が非常に高まっています。
....targeted 52 Iranian sites (representing the 52 American hostages taken by Iran many years ago), some at a very high level & important to Iran & the Iranian culture, and those targets, and Iran itself, WILL BE HIT VERY FAST AND VERY HARD. The USA wants no more threats!
— Donald J. Trump (@realDonaldTrump) January 4, 2020
■日経平均は「アイランドリバーサル」に
マーケットに目を移すと、2020年最初の取引となった1月2日(木)、NYダウは史上最高値を更新しました。中国が、預金準備率を引き下げたことが材料視されたようです。
ところが、ソレイマニ司令官殺害のニュースが出て、センチメントが一変しています。
(出所:Bloomberg)
1月2日(木)の動きだけを見ると、米株が史上最高値をつける一方、米ドル/円は下でゴールドも上でした。
どちらが正しいのか、答えが出たのが1月3日(金)。リスクオフにより、米株が下げ始めています。
(出所:Bloomberg)
(出所:Bloomberg)
(出所:Bloomberg)
今日(1月6日)の日経平均もギャップダウンして始まり、一時は500円以上の下落となりました。
このままだとチャート的にはアイランドリバーサル(※)。2018年1月、10月、2019年4月と、過去にアイランドリバーサルが出たときは、いずれも大きく調整しています。
今回も要注意ですね。
(※編集部注:「アイランドリバーサル」とは、窓を開けた後に相場が反転し、再び窓を開けて元の水準へ戻った際に形成される「離れ小島」のようなチャート形状のこと)
【参考記事】
●ドル/円下げ止まりを示唆するサインとは? ユーロ/円は中期的に140円を目指す動きに(2017年9月14日、西原宏一)
●加熱する米中貿易戦争でリスクオフ継続! 「株安・円高」相場で米ドル/円は105円へ(2019年5月23日、西原宏一)
●合意ある英国のEU離脱は実現するのか? 英ポンド/米ドルの押し目買いに妙味アリ!(2019年10月14日、西原宏一&大橋ひろこ)
(出所:Bloomberg)
チャート的には、落ちた方がきれいですが、イラン情勢次第なのでしょう。
■地政学リスクでゴールドは史上最高値へ?
コモディティ市場では、WTI原油が上昇。昨年(2019年)9月にサウジの原油施設が攻撃されたときの高値を超えてきましたし、ゴールドも2013年以来の高値水準へと上昇しています。
ゴールドは今年(2020年)、史上最高値を抜いていくとの見方も増えてきました。
(出所:Bloomberg)
(出所:Bloomberg)
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ゴールドが上昇し、為替市場では円高、米ドル高、そして株安ですから、リスクオフの典型的な動きとなっていますね。
昨年(2019年)の日経平均は、大発会がド底となりましたが、今年(2020年)は反対に、大発会が短期的な天井となる可能性もありそうです。
とはいえ、米大統領選イヤーですから11月に向けて上昇していくのでしょうが。
西原さんの中期的な見立ては全般米ドル安でしたよね。
米ドル安となると、逆相関になりやすいゴールドは買われやすい、ということになりますね。
【参考記事】
●2大米銀の2020年為替予想は米ドル安! 米大統領選挙は波乱要因になるのか?(2019年12月26日、西原宏一)
■米ドル/円、豪ドル/円の戻り売りがよさそう
米ドル/円でも108円を割ってギャップダウンのスタートとなりました。
107円台では本邦勢の買いが出ているようですが、地政学リスクが長期化するようだと崩れていくのでしょう。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 30分足)
1、2月はアノマリー的にも株安、円高に注意する時期でもありますね。
今週(1月6日~)の予定を見ると、米雇用統計が1月10日(金)発表。
先週(12月30日~)のISM製造業景気指数は予想以上に悪い数字となりましたし、今のセンチメントだと、少し悪い数字が出ただけでも売り材料にされそうですね。
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(詳しくはこちら → 経済指標/金利:米国主要経済指標の推移)
リスクオフを強めるきっかけになるかもしれません。
ただ、今はイラン情勢がすべて。これが収まるまでは米ドル/円や豪ドル/円の戻りを売っていくのがよいのではと思います。
(構成/ミドルマン・高城泰)
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