■2020年上半期の中国は「ゼロ成長」の可能性も
中国共産党の統制を揺るがすほどの同情報の衝撃の中身について、今、言及するのは時期尚早(根拠の有無など厄介な問題が多い)だが、武漢市や湖北省だけでなく、北京、上海、深圳、広州や重慶といった、ほぼすべての中国主要都市が事実上の機能停止に陥っていること自体が中国にとっての国難というほかあるまい。
実際、米国民の香港撤収も始まったから、香港もかなりヤバい状況にあることは間違いない。下手をすると、今年(2020年)上半期において、中国の経済成長がゼロとなる可能性さえあるかと思う。
(出所:Bloomberg)
世界の工場といわれる中国の機能停止は早晩、世界景気に大打撃を与える。さらに、現在、日本にも新型肺炎が広がる気配があり、中国における感染の状況を考えると、このウイルスがかなり厄介な存在であることだけは確かだ。
もっとも厄介なのは、感染者が発病しないうちに他人に感染させることがあり、また、感染する能力が極めて高いこと。換言すれば、防ぐ有用な手段がなかなかないから、事態が深刻になる覚悟を今からしておいたほうがいいかと思う。
最悪の場合、東京オリンピックが開催できなくなる恐れもある。ここまで考えるのは大げさだと思われるかもしれないが、ここまで考えないといけない時期にきているはずだ。
■楽観一辺倒から中立の立場に見通しを変える
したがって、これからの相場見通しに関して、筆者は楽観一辺倒から中立の立場に戻り、状況次第というか、かなり流動的、また、劇的な市況があり得ると思う。
ただし、前述のように、相場は市場参加者の集大成であり、筆者のような一個人が把握した情報や思惑を相場が知らない、織り込んでいないとはまったく考えられない。
この意味では、繰り返し指摘しているとおり、こういった危機的な状況に直面しても、相場が動揺せず、冷静な値動きを見せていることは、歴史的な大型ブルトレンドの真っ只中にある証拠と見るべきだ。
さらに、筆者のような「強気一貫の者」でさえ、慎重論を言い始めたにもかかわらず、ブル相場が一段と延長されることがあれば、本当のバブル的な大相場がこの先にあることも間違いないだろう。
相場は現実に先行する。
ブルトレンドが一段と加速するならば、それは近々、中国で事態の鎮静化が見られ、日本や世界各地における新型肺炎の蔓延が阻止できることを予言する値動きとなろう。この意味においても、ブルトレンドの継続を切に祈っている!
■米ドル全体の強気相場はしばらく継続
為替相場では、米ドル全体(ドルインデックス)の堅調さに、まず注目しないといけないだろう。前回のコラムで示したように、ドルインデックスが昨年(2019年)11月高値をブレイクできるかどうかはテクニカル分析上における重要なポイントなので、このブレイクが確認された以上、米ドル全体の強気相場はしばらく続くと思う。
【参考記事】
●危の中に機あり。新型肺炎の危機感が強いほど、米ドル/円の上昇につながる!(2月7日、陳満咲杜)
(出所:Bloomberg)
それとリンクしたように、確かに米ドル/円は堅調な値動きを見せているが、主要クロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)の値動きからは、やはり、外貨安・円高の傾向が否定できない。主要クロス円の上昇なしでは、米ドル/円の本格的な110円の大台ブレイクも後ずれになる公算だ。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:世界の通貨VS円 日足)
もっとも、米ドル全体の強さを、新型肺炎の蔓延という理由で解釈されることには違和感がある。リスクオフの米ドル高を主張する一方、同じリスクオフをもって米国株の強さを説明できないなら、理由の後付けというほかあるまい。
■ユーロ/米ドルには近々、底打ちのサインが点灯するかも
この意味では、大きく下落して昨年(2019年)安値を割り込むユーロ/米ドルの値動きは、中国肺炎云々よりテクニカル分析の要素が主導する可能性が大きいから、引き続きテクニカル分析上の根拠をもって考えてみたい。中期スパンに関する見方は、下記レポートをご参照(2月13日作成)、市況はいかに。
(出所:Trading View)
ユーロ/ドルは安値更新しているが、デイリーの記述の通り、これから大幅な下値余地を拓き、忽ちベアトレンドを加速していく、というシナリオはなお性急だと思う。まず週足におけるRSIのサインを確認しておきたい。
週足におけるフォーメーション、2018年高値から大型下落ウェッジを形成してきた。目先安値更新しているものの、同フォーメーションにおける元抵抗ラインが支持ラインと化す可能性も示唆される。同見方、RSIにおける強気ダイバージェンスの構築がもっとも有力視され、またサインとして利用できる。ここから下値限定なら、近々底打ちのサインを点灯しよう。
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