■「危の中に機あり」、株高・円安のトレンドに変化なし!
「肺炎自体のピークはこれからだが、マーケットに対する影響はもうピークを過ぎたか、近々ピークを越えていくと思う」、前回のコラムでは、このような記述をもって、2つの基本的な判断を強調した。
【参考記事】
●新型肺炎によるリスクオフは収まるとみる!ドル/円は近々高値更新か。120円も達成可能(2020年1月31日、陳満咲杜)
1つは中国新型肺炎の広がりが続くこと、もう1つはそれがあっても株高・円安のトレンドが変わらないことだ。
実際、米国株の主要3指数はそろって高値更新し、米ドル/円も110円の節目に再度接近、「打たれ弱い」とされる日経平均も2万4000円の大台に再トライするほど急反発した。

(出所:Bloomberg)

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 日足)

(出所:Bloomberg)
渦中の上海総合指数でさえ、一時、昨年(2019年)8月安値を割り込んだものの、その後、切り返し、「底割れ」を回避した模様だ。

(出所:Bloomberg)
相場は「理外の理」とされるが、「危の中に機あり」といったロジックは、実はその理外の理の中に常に含まれている。
前回のコラムでも強調したように、今回の危機は逆に「出遅れたロング筋に参入の好機を提供してくれる」ことになったから、押し目買いのスタンスで臨んだのが正解だったと思う。
【参考記事】
●新型肺炎によるリスクオフは収まるとみる! ドル/円は近々高値更新か。120円も達成可能(2020年1月31日、陳満咲杜)
■ファンダメンタルズに振り回されての安易な逆張りは危険
もっとも、いわゆるファンダメンタルズ上の材料をもって、相場の高安を判断するのは極めてリスキーな考え方だ。
そして、危機時においては、「相場が間違っている」と自分勝手な思い込みが一層強まり、相場におけるメイントレンドを見失うばかりか、往々にして逆張りに走る結果になりやすい。
そして、なにより危険なのは、一見して「リスクオフの売り」とか、「過大評価の是正」といった「正当な論理」は「わかりやすい、また理解されやすい」から、安易な逆張りに走った結果、ショート筋の総踏み上げで逆に相場が一層上がる、という皮肉な状況につながりやすいことだ。
株も為替も、こういった市場心理や価格形成のメカニズムが常にバランスを取って動いているから、「相場が間違った」といった思考ロジックは百害あって一利なしと言える。
ここ2、3年の米国株はその典型であろう。散々「バブル」だの、「崩壊」だのと言われても高値更新し続け、今回の、深刻化の様相を呈している新型肺炎の蔓延があっても高値更新を果たした背景には、決してロング筋のみの力ではなく、多くの投機筋、すなわちショート筋の「功績」があったことも、容易に推測される。
■新型肺炎の危機感が強いほど、米ドル/円の急騰に…
個別株では、最近の米テスラは最も典型的な好例であろう。
米テスラ株は昨年(2019年)末から急騰が続き、その間、やはり「ファンダメンタルズに合ってない」、「割高」だと思うようになったトレーダーが多く、また、「相場が間違っているから、暴落必至」と自分勝手な解釈でショートに励む投機筋が多かった。
その結果、2月3日(月)、同社株は1日で20%も急騰し、ショート筋の総踏み上げで「割高」な株がさらに買われ、翌2月4日(火)には一時900ドルを突破する結果に。もちろん、ショート筋の損失は莫大だ。

(出所:Bloomberg)
日経新聞の報道によると、2020年年初からの空売り筋の損失は合計90億ドル(約9900億円)にも達し、記録的な敗北を食らった模様だ。
同じことが、これから日経平均や米ドル/円の上昇トレンドにおいても観察されるだろう。先週(1月27日~)の日経平均や米ドル/円の反落時にはショート筋が積極的に参入したことが推測されるから、日経平均も米ドル/円も、高値更新はこれからだと言える。
新型肺炎がもたらした混乱や危機感が強ければ強いほど、ショート筋に自信を与えるから、その結果として日経平均や米ドル/円は下落ではなく、上昇に弾みがつくと思うわけだ。
この意味でも、先週(1月31日)、本コラムで指摘した「肺炎自体のピークはこれからだが、マーケットに対する影響はもうピークを過ぎたか、近々ピークを越えていくと思う」の本質を再認識できるかと思う。
■米ドル/円はテクニカル的には上昇を示している
米ドル/円に関して、テクニカル上の視点は変わっていない。大事なポイントはすでに指摘済みであるが、再度記しておきたい。
1つは1月8日(水)のイラン危機時に形成した強気リバーサルのサインの大陽線が否定されない限り、米ドル/円の上昇トレンドは不変だということ。
もう1つは、1月31日(金)や2月3日(月)の安値を、今回の新型肺炎危機時の安値と見なすならば、200日移動平均線のサポートを再確認しているということだ。

(出所:TradingVeiw)
総合的にみると、やはり、米ドル/円は上放れする構造にあり、米ドル/円は日経平均と共に高値更新を果たせる公算が高い。
■懸念材料は米ドル/円と主要クロス円の動きの違い
ところで、懸念材料がないかと言えばそうではない。米ドル/円の堅調ぶりは主要クロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)の動きとやや対照的になっているところが気掛かりだ。

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:世界の通貨VS円 日足)
米ドル全体、すなわちドルインデックスの上昇が外貨安をもたらし、主要クロス円における円の下落を牽制しているポイントも見逃せない。
ドルインデックスでみるとわかるように、やはり、昨年(2019年)11月高値をブレイクできるかどうかが、目先の焦点となってくる。

(出所:Bloomberg)
仮にこれが突破でき、また、継続して上回れば、米ドル全体が一段と上昇加速してもおかしくないから、これが主要クロス円における外貨安・円高をもたらし、結果的に米ドル/円の頭を押さえ込むことになるだろう。こちらは目下、最も注意すべきポイントだと思う。
■新型肺炎は大型緩和策につながる?
テクニカル上の懸念に比べ、筆者は相対的にファンダメンタル上の材料をあまり心配していない。
確かに中国新型肺炎の状況は悪化する一途で、中国経済や世界景気への打撃も避けられないと思うが、その懸念が深刻化すればするほど、実はそれが中国の財政・金融両方における大型緩和政策の打ち出しにつながるかと思う。
また、状況が悪化すれば、FRB(米連邦準備制度理事会)も躊躇なく利下げに踏み切るだろう。このような思惑があったからこそ、米国株の高値更新が支えられたのではないと読み取れる。
いずれにせよ、これからも紆余曲折はあるかもしれないが、株高・円安のメイントレンドは基本的に変わらず継続されていく公算が大きいから、トレンド・フォローに徹したい。市況はいかに。
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