■FRB1.5%利下げにもかかわらず、レパトリで米ドル高に
新型コロナウイルスの感染拡大を阻止するため、各国は国境を閉鎖したり、国内では都市封鎖や夜間外出禁止するなど、極端とも思える政策が次々と行われ、世界経済はリーマンショック以来の危機を迎えています。
主要国の中央銀行は極限まで金融緩和し、各政府も減税等の政策を打ち出していますが、とにかく人の動きが制限されているため、景気浮揚効果があるとも思えず、猛烈な景気後退に、今後、襲われそうです。
【参考記事】
●新型コロナの影響で市場は今後どうなる?世界中が金利ゼロへ!? ドル/円100円割れも!(3月4日、志摩力男)
●FRBが緊急利下げでゼロ金利政策再開! 大規模緩和でも米株安止まらず。為替は?
●FRBが緊急利下げ&QE再開! それでも105円を割らない米ドル/円は押し目買いか(3月16日、西原宏一&大橋ひろこ)
●相次ぐ金融緩和で株価の急落も落ち着くか。ここからの米ドル/円は、あまり下がらない!(3月17日、バカラ村)
金融市場では各国株価が急落し、金融緩和を受けて長期金利も急低下していますが、同時に「現金」を確保するための換金売りも激しく、安全資産とみなされている金まで売られています。
(出所:Bloomberg)
こうした中、為替市場では、当初は米ドル安が優勢でしたが、投資資金を米国に還流する動き(レパトリエーション)により、FRB(米連邦準備制度理事会)の1.5%利下げにもかかわらず、米ドル高に推移しています。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドルVS世界の通貨 4時間足)
今はこうした市場動乱が落ち着かないと、マーケットがどこに行くのか見定めるのが、本当に難しい状況と言えるでしょう。
■豪ドルがジリジリと値を下げている
こうした中、ジリジリと値を下げているのが豪ドルです。
対米ドルでも0.6000ドルという大きな節目を割り込もうかとしていますが、豪ドルの本当の弱さを示しているが対NZドルでのレートで、心理的なサポートである1.0000NZドルが目前に迫っています。
(出所:TradingView)
(出所:TradingView)
なぜ、豪ドルが弱いのか。それは商品市況の弱さからもわかります。豪州のおもな輸出品である商品市況が軟調に推移し始めています。
特に原油市場は、サウジアラビアやロシアの増産から、今後、軟調推移することが確実視されていますが、世界の需要が、もう戻ってこないということを象徴しているように見えます。
【参考記事】
●原油暴落はなぜ米経済を悪化させるのか? サウジ増産は米シェール企業潰しが目的!?(3月11日、志摩力男)
(出所:Bloomberg)
豪州は大きな産油国ではありませんが、原油は商品市場の半分を占める非常に大きなマーケットであり、今後の世界経済の行く末を象徴しているように見えます。
■豪ドルはかつて弱い通貨だったが、強い通貨に変身した
豪ドルは、かつては典型的に弱い通貨でした。
特に、1980年から90年代にかけては、高金利ではあるものの、インフレ率が高く、ただただ下げ続ける通貨でした。
ところが、この状況が21世紀に入り、変わりました。中国の台頭から、商品への莫大な消費需要が生まれ、商品市況の上昇とともに豪州は変身しました。
豪ドルは、かつての典型的な弱い通貨から、金利も高く、強い通貨になったのです。
(出所:Bloomberg)
豪ドル/米ドルは、2001年3月安値の0.4851ドルから2011年1月には1.1080ドルへと、2倍以上の値段へ上昇しました。
しかもその間の高金利を考えると、この10年ほどの累積リターンにはスゴいものがあります。
資源開発のための膨大な資金が投資されると同時に、中国を中心としたアジアからの移民も大挙して入国したので、不動産市況も絶好調となり、豪州は過去23年ほど不景気に陥ったことはありませんし、不動産市場も、ずっと右肩上がりで上昇し続けました。
■豪ドル/米ドルは0.4581ドルに再度挑戦するかも
しかし、その状況も変わろうとしています。
新型コロナウイルスの影響で、世界はこれから猛烈な景気後退に陥りますが、これはコロナの影響がなくなれば元に戻るのでしょうか?
おそらく、コロナの影響がなくなれば、かなり戻るでしょう。とはいえ、元の水準に戻すかというと、難しいのではないでしょうか。
中国経済は順調に成長を続けてきましたが、民間債務の積み上がりには警戒すべきものがあります。今回のコロナの影響は、もしかすると克服するかもしれませんが、かつての高成長は望めません。
人口の高齢化もあり、中国が低成長を余儀なくなれる時代が、すぐそこまで来ています。商品への需要も低下するでしょう。
世界全体で見ても、コロナの影響がなくなっても、完全に元には戻りません。金融政策も財政政策も、限界です。
「日本化」という、あまり喜ばしくない言い回しがありますが、今後は世界全体が低成長を余儀なくされます。
その時、商品市況に多くを依存する豪経済は、厳しい局面を迎えます。
豪ドルは、対米ドルで2001年3月安値の0.4851ドルに再度挑戦するコースに入っているのではないかと思います。
(出所:TradingView)
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