■新型コロナで株式市場急落、指標も大きく悪化
新型コロナウイルスの影響で、ヒトやモノの移動が制限されており、景気がまだまだ悪化する可能性があるため、株式市場の急落が続いています。
(出所:Bloomberg)
3月16日(月)に発表された、1~2月の中国の小売売上高は、年初来・前年比でマイナス20.5%、同鉱工業生産はマイナス13.5%と、非常に悪い数字が出てきています。
(出所:Bloomberg)
今後出てくる日本の経済指標も、消費増税や新型コロナウイルスの影響で、かなり悪い数字が続くと思います。
■FRBが緊急利下げと量的緩和策の開始を決定
日経平均の下落も止まりませんが、3月12日(木)にFRB(米連邦準備制度理事会)は、短期金融市場に1.5兆ドル規模の資金供給を実施すると発表しました。
また、15日(日)には、臨時のFOMC(米連邦公開市場委員会)を開催して1.0%の緊急利下げ(※)を行い、政策金利を実質ゼロ%へ。さらに、7000億ドル(米国債5000億ドル・住宅ローン担保証券2000億ドル)の資産を購入する、量的緩和策を発表しました。
(※編集部注 FRBは、3月3日にも緊急利下げを行っているため、15日の利下げは3月に入って2度目の緊急利下げとなる)
※FFレートの誘導目標レンジ上限を掲載
※FRBのデータをもとにザイFX!が作成
そして、日銀・FRB・ECB(欧州中央銀行)・BOE(イングランド銀行[英国の中央銀行])・BOC(カナダ銀行[カナダの中央銀行])・SNB(スイス国立銀行[スイスの中央銀行])の協調によって、米ドルの流動性供給を拡充することも発表しました。
【参考記事】
●FRBが緊急利下げでゼロ金利政策再開! 大規模緩和でも米株安止まらず。為替は?
●FRBが緊急利下げ&QE再開! それでも105円を割らない米ドル/円は押し目買いか(3月16日、西原宏一&大橋ひろこ)
先週(3月9日~)、米ドル/円は108.49円まで上昇しましたが、FRBの緊急利下げや量的緩和策の開始などを受けて、16日(月)には105.74円まで下落しました。
(出所:Trading View)
■主要中銀が相次いで金融緩和。次は財政政策に期待
日銀は、3月16日(月)に金融政策決定会合を前倒しで開催し、ETF(上場投資信託)の購入額を年間12兆円に増額するなどの金融緩和強化策を発表しましたが、マイナス金利の深堀りは見送りました。
日銀は3月18日~19日に開催を予定していた金融政策決定会合の日程を16日に変更して、ETFやJ-REITの年間購入額の増額、企業金融支援特別オペの導入、一層の潤沢な資金供給の実施などを盛り込んだ金融緩和強化を決定したが、日銀当座預金のうちの政策金利残高に課しているマイナス0.1%の金利深堀りは見送った。写真は黒田日銀総裁 (C)Bloomberg/Getty Images
BOCは、3月4日(水)に0.5%の利下げをしましたが、さらに13日(金)に、0.5%の緊急利下げを行いました。
また、RBNZ(ニュージーランド準備銀行[ニュージーランドの中央銀行])も16日(月)に0.75%の緊急利下げを行い、政策金利が0.25%となったことから、NZドルも低金利通貨となっています。
各国の中銀が利下げをして、今の金融市場の混乱を落ち着かせようとしています。
金融政策が新型コロナウイルスに効くわけではないですが、できる限りの緩和カードを使ったこともあり、次は財政政策に期待したいところです。
【参考記事】
●新型コロナのダメージに金融緩和や財政出動は効かない!? 米ドル/円は105円前後へ(3月5日、今井雅人)
●新型コロナの影響で市場は今後どうなる? 世界中が金利ゼロへ!? ドル/円100円割れも!(3月4日、志摩力男)
■パニック的な株価急落は、いったん止まりそう
株式市場は、3月16日(月)の東京市場では軟調だったものの、NY市場では反発してきており、これまでの下降トレンドも、いったん止まったのではないかと思います(※)。
(※編集部注:本記事の寄稿後、3月16日(月)のNY時間午後に、米株式市場は下落した)
しばらくは、ボラティリティが高い状態で乱高下すると思いますが、これまでのパニック的な急落は、落ち着くのではないかと思います。
(出所:Bloomberg)
■金利差を材料にした米ドル安はもう起こらない!?
今週(3月16日~)の米ドル/円は、FRBの緊急利下げもあってギャップダウンで始まり、16日(月)は106円台を中心とした推移になりました。
(出所:Trading View)
これまでは、3月17日(火)~18日(水)のFOMCで、利下げが実施される可能性があったため、米ドル/円には米ドル安の可能性が残っていましたが、FRBの緊急利下げで米国の政策金利が実質ゼロ%となり、日米の金利差が、ほとんどない状態となりました。
FRBは、マイナス金利にすることを否定していることもあって、米国の政策金利は、今の水準が下限となると思います。
そうであれば、金利差を材料とした米ドル安は、これ以上は起きないということになります。
米長期金利(10年物国債利回り)の低下も止まり、これ以上の低下もあまり期待できないことから、長期金利と米ドル/円の相関性からは、米ドル/円もあまり下がないということになります。
(出所:Bloomberg)
■米ドル/円は、下値があまりない状態か
米ドル/円は、株式市場とも相関性がありますが、株式市場も各国中銀による、できる限りの緩和策実施もあって、下げが落ち着くと思います。だとすれば、株式市場との相関性からも、米ドル/円は下値があまりない、ということになりそうです。
今週(3月16日~)に関しては、まだボラティリティが高く、乱高下しやすいと思いますので、米ドル/円は103~108.50円での推移ではないかと考えています。
(出所:Trading View)
金融政策はコロナウィルスに効かないため、米ドル/円の上昇トレンドには期待できませんが、上記の理由から、下げも期待できない状態になっているのではないかと思います。
株主:株式会社ダイヤモンド社(100%)
加入協会:一般社団法人日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)