■リーマン後は米ドル/円のみ米ドル全体と動きが異なった
米ドル/円のみを見る場合、ドル全体(ドルインデックス)とかなり違っていたことをまず認識しておけば、これからの話を理解しやすくなるかと思う。
円が「翻弄されてきた通貨」と言われてきたのは、他ならぬ、米ドル/円と米ドル全体のパフォーマンスがかなり乖離してきた歴史があったからだ。リーマンショック時の相場はその代表的な事例であった。
本来、米ドル高になれば円安、米ドル安になれば円高のはずだったが、リーマンショック発生後は、米ドル全体が「恐怖の米ドル買い」で上昇し、諸外貨が一斉に売られる一方、円のみ買われていた。その結果、ユーロ/円、英ポンド/円などクロス円は外貨安・円高の「ダブルパンチ」で暴落していたという市況は記憶に新しい。
米ドル/円と米ドル全体のパフォーマンスの乖離が、「リスクオフの円高」を究極な形で形成し、2011年の対米ドルでの円史上最高値(※)まで超円高の記録をもたらしたわけだ。
(※編集部注:戦後の変動相場制以降での円最高値)
だから、このような強烈な記憶が残り、今回FRBの無制限QEがあっても、また日銀の追随があっても、米ドル安の再来は避けられないだろうという観測が根強いわけだ。
■今回は米ドル/円とドルインデックスの相関性が高い!
しかし、こういう考え方には大きな「落とし穴」がある。それは他ならぬ、今回のコロナショックにおいて、米ドル/円と米ドル全体、すなわちドルインデックスが大きな乖離を示していないばかりか、むしろ相関性を高めてきたことである。
換言すれば、「恐怖の米ドル買い」があっても、今回はリーマンショックの時と違って、「恐怖の円高」はなかったから、このまま従来のロジックにとらわれすぎると、これからの相場を見極められない可能性が大きい。
実際、クロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)相場を観察すればわかるように、コロナショックで下落していたものの、主な原動力は外貨安であって、円高ではなかった。
そして、それゆえ、英ポンド/円や豪ドル/円はすでに大きくリバウンドし、一本調子の下落を回避できたわけだ。
クロス円のメインとなるユーロ/円でも、昨日(4月23日)、いったん2019年安値を下回ったが、ここから継続的な円高トレンドを推進できるかどうかが、実はこれからの市況を測る上で大きなポイントとなってくる。
このあたりの話はまた次回に譲るが、前述のロジックが正しければ、クロス円は目先なお下値余地があるものの、大きな円高トレンドの途中という位置付けではないことも明らかなので、ガンガン下値追いする状況ではないと思う。
米ドル/円はドルインデックスとの連動性で考えると、米ドル全体次第なので、当面高値圏での保ち合いを有力視。市況はいかに。
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