■都市封鎖解除により、トルコの経済活動再開
6月22日(月)にTUIK(トルコ統計局)が発表した、トルコの6月の消費者信頼感指数は5月の59.5から62.6に上昇しました。ロックダウン(都市封鎖)の解除に伴って、経済活動が徐々に元に戻りつつあります。
【参考記事】
●トルコの実体経済は想像以上に悪そう…。トルコリラ/円はボックス相場を継続か?(6月17日、エミン・ユルマズ)
●トルコの経済活動が徐々に再開へ!対円は15.50~16.50円のボックス圏推移か(6月10日、エミン・ユルマズ)
●トルコ政府、ロックダウンをほぼ解除。トルコリラ/円は一時16.30円水準へ上昇!(6月3日、エミン・ユルマズ)
トルコ政府は新型コロナウイルスの第二波を懸念しているので、マスクの着用を義務付け、着用していない人に900リラ(1リラ=15.50円換算で1万3950円程度)の罰金を科すことを決めました。
消費の回復に貢献している要因のひとつは、消費者ローン金利の大幅な引き下げです。同じく住宅ローンの金利も下がっていて、トルコ政府は国営銀行主導で貸し付けを増やして景気を活気づけようとしています。
■リビア内戦がトルコとエジプトの戦争に発展する可能性
景気回復の兆しが見えている一方で、地政学リスクが再び大きくなり始めています。前回のコラムで解説したリビアの内戦については、今週(6月22日~)、大きな進展がありました。
【参考記事】
●トルコの実体経済は想像以上に悪そう…。トルコリラ/円はボックス相場を継続か?(6月17日、エミン・ユルマズ)
トルコが支援している暫定国民合意政府(トリポリ政府)の、戦闘での勝利を受け、敵対している東部政府(トブルク政府)を支援しているエジプトはリビアに軍事介入する準備を始めました。
エジプトは、今月(6月)上旬に停戦案を出したのですが、暫定国民合意政府(=トルコ)はこれを受け入れませんでした。そのため、6月20日(土)の演説でエジプトのシシ大統領は、「リビアに直接軍事介入を辞さない」と発言しました。
エジプトが懸念しているのは、トルコ支援の暫定国民合意政府軍がカダフィ大佐の出身地でもある中部の主要都市シルトを陥落させることです。シルトが暫定国民合意政府側の手に落ちれば、東部も落ちる可能性が高まります。エジプトが直接軍事介入した場合、リビアの内戦がトルコとエジプトの戦争に発展する可能性があり、緊張が高まっています。
フランスも直近、トルコへの批判を強めていますが、米国はリビアについてはトルコと同じ立場にあるため、NATO(北大西洋条約機構)で一致した見解が見られません。そのため、フランスが何らかの軍事アクションを起こすとは考えにくいです。
いずれにせよ、リビア問題は今後トルコリラにも影響を与える可能性が高いと考えますので、情勢を見守る必要があります。
■新観光政策の効果が、秋以降のトルコリラの運命を決める
今週(6月22日~)のトルコリラですが、対米ドルと対円ではほとんど変わらず、米ドル/トルコリラは6.85リラ水準、トルコリラ/円は15.60円前後で推移しています。
(出所:IG証券)
(出所:IG証券)
トルコの5月の観光客数は、前年同月比で99.3%減少し、観光業は、ほぼ停止状態です。6月もおそらく似たような状況ですが、7月には若干の回復が見られると予想されています。
トルコ政府は、健康を意識した新たな観光プログラムを打ち出していて、一連の新型コロナウイルス対策を実施しているホテルや観光施設に政府の特別認証を与えています。
トルコリラは、しばらく狭いレンジで動きそうですが、観光業はトルコ経済の15%を占める大きなセクターなので、新しい観光政策がどれほど効果があるかによって、秋以降のトルコリラの運命が決まると考えます。
(出所:IG証券)
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