■トルコの経済活動が徐々に再開へ
トルコの新型コロナウイルス感染者の数は、6月9日(火)時点で17万人を超え、死者の数は4700人を超えています。
(出所:Worldometerのデータを基にザイFX!編集部にて作成)
(出所:Worldometerのデータを基にザイFX!編集部にて作成)
4月中旬に4000人を超えていた1日の新規感染者の数は、6月に入ってからずっと1000人を下回っていて、トルコ政府もこれを受けて、国内線のフライトを6月4日(木)に解禁しました。国際線も、今月(6月)中に40カ国とのフライトを再開する予定です。
また、3月に閉鎖したイランとイラクの国境は、先週(6月1日~)オープンしました。イランとイラクは、トルコの重要な貿易相手国であり、トルコが原油と天然ガスを輸入する代わりに、機械や繊維、食料品を輸出しています。
陸の貿易が再開されることは、トルコ経済にとって大いにプラスになると考えます。
■エルドアン大統領とトランプ大統領が電話会談
外貨ニーズの高まりを受け、トルコ政府は外交政策の方向転換を図って欧米に接近しようとしていることを、以前お伝えしました。
【参考記事】
●トルコ政府が欧米3行への取引規制実施! 反発したトルコリラ/円は、15円台を回復(5月13日、エミン・ユルマズ)
その一環として、エルドアン大統領は、トランプ大統領と6月8日(月)に電話会談を行いました。
内容について詳しく伝えられてはいませんが、エルドアン大統領によれば、会談でトランプ大統領に、米国在住の反エルドアン派の宗教指導者ギュレン氏の引き渡しを要請したとのことです。
ギュレン氏が2016年のクーデター未遂に関与しているとエルドアン政権は主張していますが、米国側に証拠は出せず、正式な引き渡しプロセスが進んでいません。
【参考記事】
●クーデター騒ぎ勃発でトルコリラが急落!急落でも問題なくスワップで儲ける手法(2016年7月16日公開)
単に、政治的なライバルを追い込みたいだけ…としか米国側からは見られていないので、ギュレン氏の引き渡しの可能性は極めて低いと考えられます。
エルドアン大統領は会談の後に、「両国間で新たな時期が始まる可能性がある」と話しています。これはトルコリラにとってポジティブな発言ですが、トルコ政府は、2016年以降の親ロシア外交を本当にやめられるのか疑問が残ります。
エルドアン大統領はトランプ大統領との会談後、両国間で新たな時期が始まる可能性があると話した。エミンさんは2016年以降の親ロシア外交を本当にやめられるのか疑問が残ると指摘している。写真は2019年6月に開催されたG20大阪サミットのときのもの (C)Anadolu Agency/Getty Images
米国で起きた白人警察官による黒人男性の殺害事件と、その後の全国デモをエルドアン寄りのトルコメディアは大々的に報道していて、内容もトランプ政権に対してかなり批判的なものでした。
トルコメディアは、2016年のクーデター未遂は米国の仕業であるという主張をやめていませんし、トルコ政府もS-400ミサイルの稼働を完全に諦めたわけではありません。
【参考記事】
●トルコリラはスワップ金利狙うには好環境!? トルコが抱えるリスク、S-400問題とは…?(2019年2月27日、エミン・ユルマズ)
■トルコリラ/円、しばらく15.50~16.50円のボックス圏か
今週(6月8日~)のトルコリラですが、対米ドルでは大きく動かず、米ドル/トルコリラは6.75~6.80リラ水準で推移しています。
一方、トルコリラ/円は、今週(6月8日~)に入ってから円高が進行したことを受け、再び16円を割ってしまいました。
(出所:Trading View)
(出所:Trading View)
原油価格が、いったん40ドルまで回復したことがトルコリラの今後の売り材料になりそうです。
(出所:Trading View)
しかし、原油価格の当面の天井は40ドルだと考えていますので、過度なトルコリラ安は起きないと考えています。トルコリラ/円は、しばらく15.50~16.50円のボックス圏で推移すると予想しています。
(出所:Trading View)
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