■トルコの実体経済は想像以上に悪そう
6月10日(水)に発表されたトルコの雇用統計によりますと、トルコの失業率は今年(2020年)の2月から4月までの3カ月間で0.9%減少し、13.2%となりました。
一見ポジティブに見えますが、労働人口が大きく減っていることを考えると、新型コロナウイルスの感染拡大で職を失った人の大部分は就活していないという結論にたどり着きます。国内の動きが制限されている中で就活が始まらないのも当然です。
失業しているのに就活していない人を統計に入れると、トルコの失業率は23%に大きく跳ね上がりますが、これが実態であると考えます。
トルコ政府がパンデミックとの戦いに勝利宣言をして、経済の正常化を急いでいる背景に、実体経済の想像以上の悪化があると考えます。
【参考記事】
●トルコ政府、ロックダウンをほぼ解除。トルコリラ/円は一時16.30円水準へ上昇!(6月3日、エミン・ユルマズ)
写真はエルドアン大統領。トルコ政府が経済の正常化を急いでいる背景に実体経済の想像以上の悪化があると、エミンさんは指摘している (C)Anadolu Agency/Getty Images
■景気悪化に加え、地政学的にもトルコは試練に直面
景気の悪化に加え、地政学的にもトルコはさまざまな試練に直面しています。トルコはシリアに加え、リビアの内戦にも関与していて、エジプトやサウジアラビア、ロシアに加え、直近ではフランスとも対立することになりました。
【参考記事】
●トルコ中銀が直接介入でリラを下支え!? イラン情勢より重要なリビア内戦を解説(1月15日、エミン・ユルマズ)
リビアは、質の高い原油を生産している重要な産油国のひとつですが、40年以上続いたカダフィ政権が倒れた2011年の内戦は、第一次リビア内戦と呼ばれています。
現在、起きているのは、第二次リビア内戦で、国際的に認知されている西部のトリポリを拠点とする暫定国民合意政府と、2014年の投票率が異常に低い選挙で選ばれた東部を拠点とするトブルク政府の間で起きています。
トルコと米国はトリポリ政府を、エジプトとサウジアラビア、そしてロシアはトブルク政府を支援しています。
直近まで東部のトブルク政府が勝っていて、トリポリ陥落まであと一歩でしたが、トルコの介入以降は、事態が逆転しました。
トルコがドローンから戦車まで、積極的な軍事機器の支援を行ったおかげで、トリポリ政府は失ったテリトリーを大きく奪還。中部の主要都市でカダフィ大佐の出身地でもあったシルテまで進軍しました。
これを受け、トブルク政府は、エジプト主導の停戦案を出しましたが、トリポリ政府はこれを受け入れず、戦闘が続いています。
トルコがリビアの内戦に関与しているのは、地中海の地下資源をめぐってトリポリ政府と交わした条約を守るためです。一方で、これによって同じ地中海の周辺国であるエジプトやギリシャと激しく対立することになりました。
■トルコリラはボックス相場が続きそう
今週(6月15日~)のトルコリラですが、対米ドルと対円で、ともに比較的、軟調に推移しています。
米ドル/トルコリラは6.84リラ水準、トルコリラ/円は15.70円水準で推移しており、一時的にトルコリラ売りが強まる場面もありましたが、その理由は新型コロナウイルスの第二波懸念のようです。
(出所:IG証券)
(出所:IG証券)
夏の観光シーズンが始まっているので、トルコは本来、EU(欧州連合)やロシアからの観光客であふれかえる時期です。しかし、ロシアはまだ感染拡大が収まっていませんし、EUもロックダウンが終了したものの、大衆デモによって第二波が発生するのではないかとの懸念で、まだ旅行を考えていない人が大多数のようです。
一方で、これによって原油価格が大きく上昇することもなさそうなので、トルコリラに関しては、やはり、しばらくボックス相場が続くと考えます。
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