欧州債務危機とは、2010年代前半ぐらいに欧州で起こった経済危機の連鎖のことです。
その発端となったのは2009年10月、ギリシャの政権交代によって、ギリシャの財政赤字がそれまで公表されていた数字よりもはるかに大きいことが明らかにされたことにありました。このギリシャ危機(ギリシャショック)によって生じた信用懸念がポルトガルやアイルランドに飛び火し、さらにはユーロ圏で一定の経済規模を誇るスペインやイタリアにまで波及したのです。
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欧州債務危機は「欧州債務問題」や「欧州ソブリン危機」、「ユーロ危機」などと称されることもあり、問題の中心地となったポルトガル・アイルランド・イタリア・ギリシャ・スペインの5カ国は、各国の英語表記の頭文字をとって「PIIGS(ピッグス)」とも呼ばれました。
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また、ギリシャ危機に端を発した危機としては、2013年のキプロスショック(キプロス問題)も知られています。
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財政の持続性が懸念されたPIIGS各国では、海外の金融機関や投資家の間で保有国債を手放す動きが強まり、国債価格が急落して利回りが高騰する事態に見舞われました。欧州の金融機関は2007年に本格化したサブプライムローン問題の関連商品を保有しており、問題を抱えていましたが、その問題が完全に解決する前に、今度は大量に保有している欧州諸国の国債のうち、債務に懸念のある国々の国債価格が大きく下落するという問題に襲われたのです。
こうしたことから、金融市場ではPIIGSを中心に欧州各国の国債利回りの動向が注目を集め、為替市場ではユーロを中心に、欧州通貨で大きな動きが見られました。
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最終的には、イタリアを除く4カ国が、EU(欧州連合)とIMF(国際通貨基金)の金融支援を受けることになり、イタリアでも市場からの圧力で政権が崩壊するなど、欧州全体を揺るがす事態へと発展した出来事として金融市場に記憶されています。
これらの出来事を背景に、欧州ではEU加盟国の合意で金融支援を目的としたEFSF(欧州金融安定基金)が2010年6月に設立され、その後、EFSFの業務を引き継ぐかたちで2012年12月にESM(欧州安定メカニズム)が始動するなど、欧州各国の安定化に向けた対応が行われました。
そして、2013年12月にアイルランド、2014年1月にスペイン、2014年5月にポルトガルがEUとIMFによる金融支援から脱却。その後、残るギリシャで緊縮財政策が盛り込まれた法案が可決し、追加融資によって財政危機が回避された2017年6月ごろに、欧州債務危機は一通り終息したとみなされるようになりました。
なお、信用懸念の高まりを生むことになった財政状況悪化の原因はさまざまであることから、各国の危機はそれぞれ「ポルトガル危機」、「アイスランド危機」、「スペイン危機」など、個別の危機として扱われることもあります。
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