■歴史的演説で米中対立は新たなステージへ
米ドルを売っていればいい相場になってきましたね。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドルVS世界の通貨 4時間足)
米ドルは本日(7月27日)も続落し、対円は105円台半ば、対ユーロでは1.1725ドルへ。米ドルの独歩安ですね。
米ドル安の背景に、過去最低水準まで低下した実質金利を指摘する声もありますが、先週(7月20日~)、印象的だったのがニクソン大統領図書館で行われたポンペオ国防長官の演説。
1972年のニクソン訪中から始まった、中国を国際社会へ組み込む「関与政策」について「失敗だった」と明確に否定するだけでなく、習近平・中国国家主席を名指しで批判。対中攻撃姿勢を鮮明にしています。
宣戦布告とも読める内容で驚きました。
【参考記事】
●ついに、本格的に米ドル安相場始まるか! 中国がドル離れ!? 基軸通貨の地位が危うい(7月15日、志摩力男)
●ドル/円は年内100円割れでもおかしくない。株価反落で、あっさり下落するイメージ(7月13日、西原宏一&大橋ひろこ)
中国と一線を引く覚悟を示し、米中対立が新たなステージへと突入したことを感じさせる内容でしたね。
直後には、米国がヒューストンにある中国総領事館を閉鎖、中国は報復として成都のアメリカ総領事館を閉鎖するなどの応酬も始まっています。
■中国の孤立と豪州の狡猾
これからは世界のブロック経済化と米中デカップリング(非連動)を前提にしてマーケットを見る必要がありますね。
習近平の権力の弱体化が始まっており、中国内の混乱が始まっているように感じます。
イランで顕著に現れているように、やはり米国の経済政策は打撃が大きい。中国にも効いているのでしょう。
基軸通貨である米ドルが使えなくなるのは苦しいですし、ファーウェイ排除の動きは米国だけでなく、英国やフランスなどヨーロッパへも広がりつつあります。
コロナ禍をめぐる、中国の動きに対する国際社会の不信感も高まっているのでしょう。
【参考記事】
●ついに、本格的に米ドル安相場始まるか! 中国がドル離れ!? 基軸通貨の地位が危うい(7月15日、志摩力男)
中国は、四面楚歌。外交的に問題を抱えていないのはロシアくらいで、そんな状況をうまく読んでいるのが豪州です。
中国経済躍進の恩恵もあり29年間、景気拡大を続けてきましたが、ここへ来て領土問題などで中国に対して強気に出ています。
「今の中国なら叩いても大丈夫」というポリティカル(政治的)な洞察があるのでしょう。
以前は、豪ドルと中国経済がリンクする動きもありました。
【参考記事】
●ドル/円は年内100円割れでもおかしくない。株価反落で、あっさり下落するイメージ(7月13日、西原宏一&大橋ひろこ)
今は、豪ドルと中国経済とのデカップリングも切れ始めており、「中国が危ういから豪ドルを売る」という戦略は成り立たなくなってきています。
■米国の追加コロナ対策は「いずれにせよ米ドル安」
ユーロ/米ドルは、2018年9月以来の高値水準まで上昇しています。
背景にあるのは、懸案だった欧州復興基金がやっと合意したこと。
イタリアやスペインなど財政不安のある国への安心感が広まることを、市場は好感しているようです。
イタリア政府は早速、3兆円規模の景気対策を承認しました。
【参考記事】
●ユーロ/米ドルの上昇は、今後も続く! 歴史的な「欧州復興基金」の実現が下支え(7月22日、志摩力男)
(出所:TradingView)
米国でも1200ドルの現金給付を再度行うコロナ対策が進んでいます。
米上院は、8月3日(月)までに休会となる予定。
共和党は、それまでにまとめたいようですが、民主党との溝は深く、不透明感があります。
与野党協議が難航するようだと、株安のトリガーとなるかもしれません。
米大統領選まで、今日(7月27日)でちょうど100日。
政府としてはコロナ対策を急ぎたいところでしょうし、豪州のように、今までの貯金があるわけではありません。
現金をばらまくような政策は、米ドルを劣化させます。
もし、協議がまとまらず、株安となっても、米ドル/円は下落する。
いずれにせよ、米ドル安だということになります。
【参考記事】
●株式市場が崩れるならドル/円は戻り売り。テスラショックに警戒! 22日は決算発表(7月20日、西原宏一&大橋ひろこ)
●ドル/円は年内100円割れでもおかしくない。株価反落で、あっさり下落するイメージ(7月13日、西原宏一&大橋ひろこ)
■ゴールド史上最高値、インテルショック、FOMC
今週7月29日(水)には、FOMC(米連邦公開市場委員会)の政策発表とパウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長の会見が控えています。
今回、政策変更は織り込まれていませんし、変更もないのでしょう。
今後、あるとしたらフォワードガイダンスの強化とYCT(イールドカーブ・ターゲット)の導入ですが、市場では当局が政策金利のガイダンス見直しなど追加策を示唆するとの予想が高まっているようです。
こうした期待も、米ドル安の背景のひとつとなっているようですね。
7月29日(水)にはFOMCの政策発表とパウエルFRB議長の会見が控えている。市場では当局が政策金利のガイダンス見直しなど追加策を示唆するとの予想が高まっているようで、こうした期待も米ドル安の背景のひとつになっていると大橋ひろこ氏は指摘 (C)Bloomberg/Getty Images News
注目したいのが、株価の動向。
米国は、財政政策と金融政策の両輪でコロナ対策を進めています。
FOMCまでに株価が急落するようなことがあれば、パウエル議長の発言も変わってくるでしょう。
米株市場では先週(7月20日~)、懸念していたように企業決算で急落する場面がありました。
トリガーとなったのは、インテル。新たな半導体の開発遅れにより、インテル株は16%安に。
一方、コモディティ市場では、ゴールドが今日(7月27日)、9年ぶりに史上最高値を更新しました。
(出所:TradingView)
(出所:TradingView)
■米ドル/円が動き出せば、下落余地は大きい!
米ドル安ですからゴールド高となるのでしょう。
この1、2年、漬物石のように値動きの重かった米ドル/円とユーロ/米ドルですが、まず、対ユーロで米ドル安が進んでいます。
次いで、米ドル/円が動き出せば、下落余地は大きい。
104円台半ばは、何度も跳ね返された水準であり、抜けるのに時間がかかるかもしれませんが、抜ければ100円が見えてきます。
引き続き、米ドルの戻り売りでいいのでしょう。
【参考記事】
●株式市場が崩れるならドル/円は戻り売り。テスラショックに警戒! 22日は決算発表(7月20日、西原宏一&大橋ひろこ)
●ドル/円は年内100円割れでもおかしくない。株価反落で、あっさり下落するイメージ(7月13日、西原宏一&大橋ひろこ)
●米ドル/円の戻りを慎重に売っていきたい。株価下落のトリガーは香港めぐる米中対立か(7月6日、西原宏一&大橋ひろこ)
●FB広告ボイコットやコロナ第2波で株安に!? 米ドル/円が上昇する場面あれば、戻り売り(6月29日、西原宏一&大橋ひろこ)
(出所:TradingView)
(構成/ミドルマン・高城泰)
【ザイFX!編集部からのお知らせ】
ザイFX!で人気の西原宏一さんと、ザイFX!編集部がお届けする有料メルマガ、それが「トレード戦略指令!(月額:6600円・税込)」です。
「トレード戦略指令!」は登録後10日間無料解約可能なので、初心者にもわかりやすいタイムリーな為替予想をはじめ、実践的な売買アドバイスやチャートによる相場分析などを、ぜひ体験してください。
株主:株式会社ダイヤモンド社(100%)
加入協会:一般社団法人日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)