■米ドルの「1人負け」だが、本格的な円高にはほど遠い
米ドル全面安の市況が続いている。全面安という言葉のとおり、米ドルの「1人負け」は鮮明で、7月に入ってからほぼ一本調子の下落を果たし、執筆中の現時点のドルインデックスは92半ばをトライ、2018年5月の水準に逆戻りした。
(出所:TradingView)
そして、円高云々の論調もまた強まってきたが、結論から申し上げると、単に米ドル全面安であり、円高はあっても受動的で、本格的な円高にはほど遠い。その証拠として現時点のレートをチェックしておきたい。
ドルインデックスは92.52の安値をトライしており、3月安値の94.61をすでに200pips以上、下回っているが、米ドル/円の安値は104.19円に留まり、3月安値101.19円より300pipsも高い水準にある。
(出所:TradingView)
(出所:TradingView)
ゆえに、主要クロス円(ユーロ/円、豪ドル/円、英ポンド/円)でみると、軒並み高値圏での保ち合いを維持しており、円高傾向が確認できる状況ではない。
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繰り返し指摘してきたように、リスクオフの円高はもう過去のもので、米ドル/円のみを取り上げ、円高、円高と騒ぐのはナンセンスというか、事実ではないと言える。
【参考記事】
●「リスクオフの円高」は過去の話と再度証明。「リスクオフの米ドル高」を米ドル/円でも確認(2020年6月26日、陳満咲杜)
そのほかの主要外貨、特に代表的なユーロに比べ、円のパフォーマンスは明らかに出遅れている。ユーロの立場からみれば、円高どころか円安の傾向にあるから、本格的な円高の局面にはほど遠い。
換言すれば、米ドル/円の104円台安値の打診があっても、安易に円高の再来とは言えない。
■クロス円の動向からみても、本格的な円高局面はなさそう
2008年リーマンショック後の市況は典型的、また、本格的な円高局面として記憶に新しい。その時は、まずユーロ/円や英ポンド/円の大暴落があって、米ドル/円の急落も同時進行したため、米ドルは対円を除き、主要外貨に対してむしろ急騰していたから、本格的な円高の進行がもたらされたわけだ。
今の状況はその真逆ともいえる。米ドルは対円を除き、主要外貨に対して急落しているから、本格的な円高どころか、米ドル/円でさえ、円高傾向があっても主体性がないと言える。
だから、現時点で円高懸念があったとしてもかなり限定的で、また、本格的な円高局面の再来は杞憂だと思う。
なにしろ、前述のように、本格的な円高の再来は主要クロス円の暴落が伴わないと確認できないから、そのためには、米ドルの主要外貨に対する暴騰が先決条件となり、目先のハードルはかなり高いだろう。
実際、暴騰どころか、ユーロ/米ドルをはじめ、主要外貨に対する米ドル安の一服はなかなかみられない。米ドル全体は明らかに「売られすぎ」の状況にも関わらず、反発のモメンタムが執筆中の現時点ではなお弱く、ユーロなど円以外の外貨の強気変動がなお続くなか、本格的な円高の到来はあり得ないと思われる。
とはいえ、米ドル全体の「売られすぎ」の状況…
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