■米ドル安は、米中覇権争いに米国が負けるから?
為替トレーダーにとって、トレンド発生の理由を探るよりも、トレンドの進行をフォローすることは遥かに大事であり、また、そこに専念すべきである。
トレンドの進行に関して、どんな理由であっても、米ドル安のトレンドが続くかどうか、モメンタムはどうなるか、どこまで続くかなどなど、肝心なところは理由や背景の解釈だけではヒントを得られず、得られたとしても非常にマクロ的、長期的な要素になるから、目先のトレードに役に立つどころか、先入観が入って邪魔になってくるケースも多い。
目下進行中の米ドル安に関して、巷では、米中衝突で米国が覇権を失い、米ドルは基軸通貨の地位を失うから米ドル安になり、これからも大きく売られるだろうといった解釈が盛んのようだ。
米中の覇権争いを、米国の負けと認定すること自体、得体の知れない妄想に近い考え方である上、仮に米ドルが基軸通貨の地位を失うとしても何十年後かもしれないから、目先のトレードにはまったく関係ないと言える。
そもそも、2020年3月におけるコロナショックで米ドル全体がいったん大きく買われたこと自体、米ドルが究極のリスク回避先であることが再度証明されたということであり、また、米ドルの地位を証明する好例であったから、米ドル安が米ドルの地位消滅云々で解釈されること自体がおかしい。
米ドルは、3月のV字反騰が急であったから、米国株のV字反騰また高値更新(ナスダック)でいったん修正されるのも理にかなった値動きであり、大袈裟に解釈されるべきではなかろう。
■ドルインデックスの早期底打ちは難しい
ところで、目先の米ドルの基調に関して、筆者の見方は変わっていない。前述のように、3月の急騰に対する修正が続いているから、株高のメイン基調が崩れない限り、3月安値にいったん接近、また、いったんトライがあってもおかしくなかろう。
【参考記事】
●米国のコロナ禍拡大は短期的には米国株を支え、米ドル全体を下落させる材料に!?(2020年7月10日、陳満咲杜)
もちろん、あくまで修正波なので、早期底打ちを果たす可能性も否定できないが、底打ちのサインが完全に確認されるまで性急な判断は避けたい。
3月高値から大型ジグザグ変動が形成され、5月高値からその最終子波の進行が確認されているが、6月安値をもってなお完成していない可能性は大きい。
(出所:TradingView)
この場合、6月30日(緑矢印)の一時高値更新(6月22日高値に対して)を「ダマシ」と見なし、6月23日(青矢印)安値の割り込みで下放れしたと見なし、これから「倍返し」でいったん3月安値への再接近を想定しておきたい。
換言すれば、早期底打ちは、6月安値と「ダブル・ボトム」を形成した上で、基調の好転を認定する前提条件として6月末高値の更新が挙げられるから、目先ハードルは高いと思う。
■主要外貨は米ドルに対してしばらく強気を維持か
したがって、円を除き、主要外貨はしばらく米ドルに対する強気変動を維持でき、また一段と上値打診の余地ありとみる。
ユーロ/米ドルなら3月高値の1.1494ドル、豪ドル/米ドルなら6月高値の0.7063ドルのブレイク、英ポンド/米ドルなら再度200日移動平均線(1.2705ドル前後)のトライを有力視している。
(出所:TradingView)
以前のコラムでも述べたように、豪ドルは途中の調整が浅く、強気トレンドを維持してきたから、これから高値更新があれば、ユーロ/米ドルより先に実現する可能性がある。連日、値幅が限定的だったが、0.7ドルの節目以上に定着できれば、その可能性はなお大きいとみる。
【参考記事】
●クロス円上昇は豪ドル/円が牽引? 6月高値更新を念頭に中期的には80円台も!(2020年7月3日、陳満咲杜)
(出所:TradingView)
対照的に、米ドル/円は米ドル安の傾向を示しているものの…
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