■米国株の調整は当然の成り行き
前回のコラムでは、以下の2つ論点について話した。
1つは「猫も杓子も」コロナバブルを言い出したから、株式市場は不安定な変動時期に入ったかと思うこと。もう1つは米ドル売りに距離を置きたいということだ。
【参考記事】
●猫も杓子もコロナバブルと言い出したから逆に警戒!? 米ドル売りからは距離を置くべき(2020年6月19日、陳満咲杜)
今回も基本的な見方は変わらないが、状況次第で部分的な修正をしていく必要もあるかと思う。
一昨日の6月24日(水)、米国株は急落した。前回のコラムでも強調したように、つい2カ月前には暗い見通ししか聞かなかった市場センチメントが急速に好転、また、楽観的になりすぎたようにみえるから、材料と関係なく調整してくるのは、むしろ当然の成り行きだと思われる。
■株式市場はしばらく波乱含みの保ち合いか
しかし、一般的にこのような解釈は広く受け入れられず、何らかの材料を探し出して理由を付けて解釈されたものが「納得」されやすいかと思う。
ナバロ米大統領補佐官が「米中貿易合意破棄」と発言したり、その後、トランプ氏に否定されたり、また、米欧貿易摩擦が伝わったり、米コロナ感染者数の増加が懸念されたりといったことは、株式市場の反乱や反落の原因として挙げても間違いではないが、根本的な問題ではなかろう。
単純に言えば、米国株をはじめとしたV字急騰自体が行きすぎの段階に入り、また、市場センチメントが悲観一辺倒から楽観一辺倒に変わりすぎたから、反落自体はむしろ歓迎されるべきだと思う。なぜなら、調整があった方が、より健全な上昇トレンドを継続していけるからだ。
したがって、材料はどうであれ、足元の株式市場はスピード調整の期間に入っており、しばらく波乱含みの保ち合いが続く公算が高い。
こういった時期だからこそ、材料に一喜一憂すべきではなく、相場における重要なポイントを見据え、市場の内部構造に沿ったストラテジーを構築すべきだと思う。
換言すれば、材料や材料に関する解釈、そして、市場センチメントの変化に振り回されないように一層警戒すべき時期でもある。
■米ドル/円の値動きと背景にあった出来事を検証
とはいえ、米国を中心に新型コロナ感染者の増加傾向自体が大きな懸念材料であることに異議はない。国家の総力を挙げて人権侵害と指摘されるほど厳しい防疫体制を敷いてきた中国でさえ、首都北京が再び感染者増となり、油断できない情勢だと言われる。リアル生活におけるコロナショックはまだまだ続いており、相場への影響はむしろこれからだと思う。
ここで重要なのは相場の反応パターンを見極めることだ。米ドル/円を取り上げ、市況を検証していきたい。大まかなイメージは以下のとおりだ。
(出所:TradingView)
6月23日(火)午前、ナバロ氏の発言が伝わると、一時106.74円までの安値を記録したものの、その後切り返し、午後1時頃いったん107.22円の高値をトライした。
大事なのはその時点においてリスクオフの円高が確認されなかったこと、そして、米ドル全体の値動きとズレがあったものの、総じて同じ方向を示したことだ。
そして、米ドル/円はその後、急落した。
こういった一連の値動きの背景について、いろいろな指摘があるが、トランプ氏によるナバロ氏発言の否定などを挟みつつ、ソフトバンクによる米TモバイルUS株の売却に絡む米ドル売りの動きがあったなどと言われる。
しかし、一般論として、このような観測はあくまで…
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