■米ドル崩壊があれば世界の終わり
前述のように、「米ドル崩壊」説は繰り返し流行ってきた論調で、リーマンショック前後や2011年に金が1900ドルを突破した前後において盛んにはやされた考え方なので、どちらかというと結構「古い」。結論から申し上げると、米ドル崩壊はあり得ないから、信じるべきではない。
究極的には、米ドルは今でも基軸通貨なので、米ドル崩壊があれば、世界金融や貿易システムの総崩壊となり、世界の終わりだと考えてもよいから、仮にその時が来れば、米ドルが崩壊するかどうかはもはや問題ではなくなっていることだろう。
ましてや今、米ドル全体は、2008年や2011年よりずいぶん上の水準にあり、崩壊云々は大袈裟というか、完全に色眼鏡をかけた見方だと言える。
■ドル全体の切り返しスピードで米ドル/円の値動きが変わる
3月高値から急落してきた米ドル全体も、目先行きすぎで、仮にこれからベア(下落)トレンドを継続しても、いったんスピード調整(反騰)のタイミングにある、という判断は不変。もしかしたら、今晩(8月7日)の米雇用統計の中身がどうであれ、その結果発表が米ドル反騰のきっかけになるかもしれない。
(出所:TradingView)
米ドル全体の切り返しがあれば、買われすぎのユーロなど外貨の反落はもちろん、主要外貨のうち、一番弱かった円に対する切り返しが鮮明になってきてもおかしくないが、気になるところがある。それは他ならぬ、クロス円だ。
3月高値から、米ドル全体の急落につられた形で米ドル/円も下値打診してきたが、前回のコラムで詳説したように、円はその他の主要外貨より弱かったので、これがユーロ/円のブル(上昇)基調の維持につながったわけだ。
【参考記事】
●米ドル全面安はそろそろ一服?本格的な円高の到来はなぜあり得ないのか?(2020年7月31日、陳満咲杜)
これから米ドルの切り返しがあっても、緩やかなスピードに留まるなら、ユーロ/円の反落も緩やかなものになり、米ドル/円の切り返しを「邪魔」してこないと推測される。
半面、米ドル全体の切り返しが仮に急速に展開される場合は、ユーロは対米ドルでの急落とともに、対円でも急落しやすいから、ユーロ/円経由の円高圧力で米ドル/円の頭を抑え込み、また、場合によっては米ドル/円の続落をもたらす、といったケースも散見されてきたことだから、注意すべきポイントだと思う。
では、今回はどうなるだろうか。結論から申し上げると、筆者は前者の方、つまり、米ドル全体の切り返しはあっても緩やかなもので、ユーロ/円の急落は見られないのではないかと思う。
■米ドル/円は7月安値割れの有無がカギ
となると、米ドル/円も比較的切り返ししやすい環境にあり、「猫も杓子も」円高傾向の継続を考える目下、米ドル/円のパフォーマンスは米ドル全体のパフォーマンスとリンクしやすく、逆に円高の余地は限定されてしまうのではないだろうか。
実際、3月高値を起点とした米ドル/円の下落は、典型的な調整変動と見なした場合、大型ジグザグ変動と見られやすい。
3月高値~5月安値を同ジグザグ変動における最初の推進子波、6月高値~7月安値までの下落を同序列における最終子波と見なした場合、いわゆるN字型変動パターン(要するに、3月高値~5月安値までの値幅が6月高値~7月安値までの値幅と等しい傾向にある)で計算すると、7月31日(金)安値104.18円をもってこれは完成された公算が高い。
(出所:TradingView)
つまるところ、米ドル/円は7月末安値割れさえ回避できれば、円高の余地があっても限定され、これからむしろリバウンドしやすい時期に入る。詳細の検証はまた次回、市況はいかに。
(14:00執筆)
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