■バフェット氏の金鉱株投資が注目されるワケは?
では、バフェット氏の金鉱株への投資が、なぜゴールドの上昇に大きく寄与するのかを検証してみましょう。
バフェット氏といえば2016年以降、アップル株を積極的に買っていることで有名。
2016年当時のアップルのイメージは、「iPhoneの売れ行きが頭打ちとなり、アップル株の神話も終わりか?」といったところでした。
長年、Macユーザーの私ですら「今さらアップルか?」と思ったほど。
しかしその後、アップル株は急騰し、バフェット氏がCEOを務めるバークシャー・ハサウェイのポートフォリオで最大の比率を占めるまでになっています。
そのバフェット氏が、今年(2020年)、金鉱株へ投資したということは、2016年からのアップル株の急騰のように、今後、ゴールドも急騰するのではないか?という見方が拡大するわけです。
そして、ゴールドが急騰していることで、米ドルもじわじわと軟化しています。
ユーロ/米ドルは、一時2年ぶりの高値である1.1966ドルまで上昇(=米ドル下落)しました。
(出所:Bloomberg)
■ゴールド上昇とともに値を上げる豪ドルに注目
そして、ゴールドの上昇とともに、ユーロ/米ドル以上にじわじわと値を上げている通貨があります。それは、豪ドルです。
豪ドル/米ドルは、今年(2020年)の当コラムで注目の通貨ペアとして頻繁に取り上げている通貨ペア。
【参考記事】
●「株安・米ドル高」の流れは早晩反転か? 豪ドルは悪材料出尽くしで中期的に反発へ(3月26日、西原宏一)
ここで、豪ドル/米ドルの値動きを確認すると、3月19日(木)に今年(2020年)の安値である0.5510ドルをつけて、6月には0.7063ドルまで急騰。わずか3カ月で28%急騰しました。
米ドル/円でいえば、3カ月で100円が130円になると想定すると、すさまじい急騰だったと言えます。この間の上昇率は、先月(7月)からのゴールドの上昇と比較しても、引けを取らないでしょう。
短期間で30%近く暴騰した豪ドル/米ドルですが、その後、調整に入ります。
上昇が急激でしたので、この調整期間では、豪ドル/米ドルに強気のスタンスを崩さない筆者ですら、ある程度の値幅を伴って調整すると想定していました。
ところが、豪ドル/米ドルは、大きな下落を伴わないまま2カ月で調整を終えて、再び上昇を開始。
(出所:Bloomberg)
その要因として、まず、主要通貨に対する米ドルの続落が挙げられるのですが、ゴールドの急騰も大きく影響しています。
(出所:Bloomberg)
■豪州が世界一の産金国に!? ゴールドと豪ドルの相関性強まる
もともと、ゴールドと豪ドル/米ドルは、正の相関性を見せることが頻繁にありました。
ただ、2018年に米中貿易戦争が拡大する中、上海総合指数の下落に連れ、豪ドル/米ドルはその下落に追随する局面が多く見られました。
【参考記事】
●豪ドル/米ドルは0.8000ドルに向けて上昇か。米国に続き、豪州も中国批判を強めるが…(7月30日、西原宏一)
そして、今年(2020年)3月までは、そうした「リスクアセットとしての豪ドル(=株安・豪ドル安)」としての動きを見せていましたが、その後、そうした関係性は徐々に薄れてきました。
その理由には、まず、米金利の急低下が挙げられます。
米10年債利回りは昨年(2019年)末、1.97%で推移していました。それが、今年(2020年)3月には0.31%まで急落。現在は、0.66%水準で推移しています。
(出所:Bloomberg)
一方、豪州の10年債利回りは0.86%レベルで推移しています。
(出所:Bloomberg)
この米国と豪州の利回りの推移に注目した、日本の機関投資家による5月の豪ソブリン債取得額は6459億円と、これまで最高だった2015年2月の3439億円を倍近く上回り、2014年開始の現行統計下で最大となっているようです。続く6月も3608億円と、過去2番目の高水準を維持しています。
こうした日本の機関投資家の豪ソブリン債取得も、豪ドル/米ドルの底堅さに寄与していると言えます。
(出所:Bloomberg)
そして、上海総合指数の動向との相関性が薄れた反面、豪ドルが相関性を強めてきたプロダクツがあります。それが、ゴールド。
近年、豪州では金の産出量が拡大しており、現在は中国に次いで世界2位。
業界関係者によると、早ければ来年(2021年)にも、世界一の産金国になるのではとのこと。
こうした流れから、ゴールドと豪ドルの相関性が強まっているようです。
結果、このところのゴールドの暴騰は、豪ドルを押し上げる要因となっているわけです。
さらに、豪州の経常収支については、昨年(2019年)第2四半期に1975年以来、44年ぶりに黒字化しており、現在、豪ドルを取り巻く環境は極めて良好。豪ドル/米ドルは早晩調整を終え、再び上値が拡大していると想定しています。
■豪ドル/米ドルは0.8000ドルへの上昇過程に
ここで、豪ドル/米ドルの週足で、テクニカルのポイントを探っていきましょう。以下は、豪ドル/米ドルの週足チャートです。
(出所:Bloomberg)
本稿執筆時点での豪ドル/米ドルの200週移動平均線は、0.7255ドルに位置しています。
この200週移動平均線が、豪ドル/米ドルの上値を押さえていますが、前述のような要因から上値余地が拡大している豪ドル/米ドルは、今回、このレジスタンスを抜けると想定しています。
加えて、米ドル自体の弱さも相まって、先月のコラムでご紹介させていただいたとおり、豪ドル/米ドルは0.8000への上昇の過程にあるのではないでしょうか?
【参考記事】
●豪ドル/米ドルは0.8000ドルに向けて上昇か。米国に続き、豪州も中国批判を強めるが…(7月30日、西原宏一)
金鉱株急騰の裏にウォーレン・バフェットあり! そして、早ければ来年(2021年)にも世界一の産金国となる豪州。
短期的には、200週移動平均線が位置する0.7255ドルを抜くのに一定の時間を要するのでしょうが、豪ドル/米ドルはゴールドの上昇とともに、依然、0.8000ドルへの上昇過程にあると考えています。
急騰する、ゴールドと豪ドル/米ドルの行方に注目です。
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