■国家安全維持法を巡って、豪州と中国の関係が悪化
みなさん、こんにちは。
今月(8月)に入ってからのマーケットの注目は、香港でジミー・ライ氏(アップル・デイリーの創始者)とアグネス・チョウ(=周庭)氏が拘束されたこと。
容疑は、香港国家安全維持法(国安法)違反。
8月11日(火)には両氏とも保釈されたようですが、アグネス・チョウ氏は記者団の取材に応じ、「これまで香港の社会運動に参加してきて4回逮捕されたが、もっとも怖かった。起訴されるのかどうかわからないが、パスポート(旅券)も没収された」などとコメント。
こうした事態に主要国は一斉に反発するも、中国はあくまでも内政干渉として突っぱねる展開です。
中国政府と関係が悪化しているのが、豪州。
7月10日(金)には「香港国家安全維持法」を巡って、豪州が香港との犯罪人引き渡し条約の一時停止を発表。それに中国が猛反発するなど、関係が悪化しています。
【参考記事】
●豪ドル/米ドルは0.8000ドルに向けて上昇か。米国に続き、豪州も中国批判を強めるが…(7月30日、西原宏一)
■カントリーリスクが意識され、投資資金が行き場を失う
こうした中、友人である豪州のファンドマネジャーは、「これまでは各国の成長率なども考慮して投資先を選択していたが、これからはカントリーリスクが、まず意識されるだろう」とのこと。
つまり、現在、カントリーリスクが高まっている中国へ投資しようとするプレイヤーは少なく、逆に中国から資金が流出。中国同様、ブラジルやトルコといった新興国のカントリーリスクを嫌った資金も行き場を探している環境といえます。
本来であれば、こうした資金の一部は米ドルへ流れるのですが、現在の米国は「未曾有の金融緩和と急拡大する財政赤字」で、米ドルも3月から続落。そのため、現時点では他のプロダクツが物色されています。
こうした環境下、注目を集めたのがゴールド(金)。以下は、ゴールドの週足チャートです。
【参考記事】
●米経済対策の合意難航が米株急落の鍵に!? 金反落なら、ユーロは本格調整入りか?(8月10日、西原宏一&大橋ひろこ)

(出所:TradingView)
ゴールドは、3月16日(月)に、1451ドルの安値から急反発。
8月7日(金)には、節目の2000ドルをブレイクし、一時2075ドルまで上昇しており、わずか5カ月で40%アップという急騰劇を演じています。
先週(8月3日~)の米雇用統計時に、2075ドルの高値に到達したゴールドは、今週(8月10日~)に入り、一気に急落。12日(水)には、一時1863ドルまで急落しました。

(出所:TradingView)
■ゴールドだけでなく、他も一気に値を下げる
先週(8月3日~)、7日(金)はゴールドのみならず、他市場でも一気に値を下げているプロダクツが多数あります。
まず、豪ドル/米ドル。
このコラムで頻繁に取り上げている豪ドルですが、豪ドル/米ドルは、今年(2020年)の安値(=0.5510ドル)をつけたのがRBA(オーストラリア準備銀行[豪州の中央銀行])が利下げをした3月19日(木)。そして、高値である0.7243ドルをつけたのが8月7日(金)で、これはゴールドが高値をつけたのと同日ということになります。
【参考記事】
●豪ドル/米ドルは0.8000ドルに向けて上昇か。米国に続き、豪州も中国批判を強めるが…(7月30日、西原宏一)

(出所:TradingView)
次は、ドルインデックスの週足チャートです。

(出所:TradingView)
ドルインデックスが高値である102.99に到達したのが、他のプロダクツが安値をつけたのとほぼ同じ時期の3月20日(金)。そして、安値(=92.52)をつけたのが、他のプロダクツとほぼ同じ時期の8月6日(木)。その後、戻りを試しています。
そして、ドルインデックスの動きと相関しているユーロ/米ドルですが、安値(=1.0636ドル)をつけたのが3月26日(木)。そして、高値(=1.1916ドル)に到達したのが8月6日(木)となります。

(出所:TradingView)
つまり、多くのプロダクツにおいて、先週(8月3日~)の米雇用統計前後に、一斉に利益確定の売りが出ているということになります。
■どれだけゴールドが値を崩すか…注目!
マーケット関係者によれば、モルガン・スタンレーも、先週(8月3日~)の金曜日に、中期でキープしていたユーロ/米ドルと豪ドル/米ドルのロングを利益確定し、スクエアにしているようです。
では、彼らは豪ドル/米ドルの反発を起点とし、ゴールドが牽引してきた米ドル安相場はこれで収束すると思っているのでしょうか?
結論からいえば、彼らはいったん利益確定したものの、カントリーリスクを嫌って新興国からあふれ出た資金の一部は再びゴールドへ。そして、米ドルの代替として豪ドルやユーロへ流れると思っているようです。
ただ、気をつけたいのが、最近の投資資金というのはシステムを利用しているのもあり、非常に足が速いということ。
そのため、中長期プレイヤーであっても、着実に利益確定を入れながらポートフォリオを運用しているようで、今回もゴールドが40%アップしたタイミングで、他のプロダクツも含め、いったん一部を利益確定するという判断になったようです。
そして、先週(8月3日~)いったん利益確定した彼らは、今週(8月10日~)の相場で、特にゴールドが調整により、どれだけ値を崩すか注目しているようです。

(出所:TradingView)
この押し目が浅ければ再びゴールドのロングを構築し、米ドルショートに戻す予定のようですが、今週(8月10日~)のゴールドが続落するようであれば、3月から続いていた米ドル安相場が調整に入ったとみなし、いったん為替もニュートラルにする予定のところが多いという印象。
3月中旬から始まったゴールド高、米ドル安、豪ドル高、ユーロ高相場は先週(8月3日~)末いったん終焉へ。今週(8月11日~)は、その調整がどの程度になるのかを図るために、ゴールド、豪ドル/米ドル、ユーロ/米ドルの動向に注目です。
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