■戦後最悪のGDPも日本はまだマシ!?
今朝(8月17日朝)発表された日本の4-6月期GDPは年率27.8%の落ち込みと、強烈な数字。戦後最悪だそうです。
いい数字になるわけがない、というのはわかっていたこと。大きな影響はないでしょう。
年率換算の4-6月期GDPを比べると、米国はマイナス32%、ユーロ圏がマイナ40%、英国に至ってはマイナス59%。
諸外国に比べれば日本はまだマシ、とも言えますね。
ただ、これまで回復基調だった経済指標が鈍化してきた時、マーケットがどう反応するかは気がかりな材料。
先週(8月10日~)発表された7月の米小売売上高は予想を下回る内容でした。
今週(8月17日~)は8月20日(木)にフィラデルフィア連銀製造業景気指数、8月21日(金)に米国などのPMIが発表されます。
■ワープスピード、国交正常化が株価下支え
株式市場は、底堅いですね。
先週(8月10日~)は米国債の定例入札がありましたが、発行額は過去最大。
需給がゆるむ懸念もあったのでしょうか、米金利が上昇する場面がありました。
これでナスダックが下げるかと思いきや、巻き返す強さ。何が原因なのでしょうか。
(出所:TradingView)
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ここでも何度か話している、ワクチンの早期開発をめざす「ワープスピード作戦」への期待があるかぎりは落ちない、ということかもしれません。
もうひとつは、UAEとイスラエルの国交正常化ですね。
【参考記事】
●米経済対策の合意難航が米株急落の鍵に!? 金反落なら、ユーロは本格調整入りか?(8月10日、西原宏一&大橋ひろこ)
●短期で米ドル/円の押し目買いもいいかも! 104円台ミドルのブレイクに今回も失敗…(8月3日、西原宏一&大橋ひろこ)
サプライズでしたね。
ノーベル平和賞級の偉業だろうと思いますし、イラン封じ込めの意図も感じます。
トランプ米大統領は、選挙へ向けて手持ちのカードを切ってくるのでしょう。
ポジティブなニュースが出ていると、株を売るのは怖いなと思いますね。
選挙戦では、民主党のバイデン氏が副大統領候補にカマラ・ハリス上院議員を指名しました。
女性かつ黒人ということで話題ですが、選挙の大勢に大きな影響を与えることはなさそうです。
【参考記事】
●米大統領選とは? 制度のしくみや特徴、米ドルなどの為替相場や株価への影響を解説
■バフェット「ゴールドマンout、金鉱株in」の意図
夏枯れ気味の相場で話題となったのが、ウォーレン・バフェットがゴールドマン・サックスやJPモルガン・チェースなど金融株を売却し、代わりに金鉱株を買ったこと。
バフェットは、もともとゴールド否定派。
その彼が金融株を売って、金鉱株を買ったということは「当面金利は上がらない」と見ているのかもしれません。
【参考記事】
●バフェット氏が「世界は変わる」と発言! ポストコロナはユーロが主役になる相場(5月7日、西原宏一)
●4月米雇用統計予想はマイナス2000万人超。豪ドルは短期調整も、中長期は強気継続!(5月4日、西原宏一&大橋ひろこ)
夏枯れ気味の相場で話題となったのが、ウォーレン・バフェットがゴールドマン・サックスやJPモルガン・チェースなど金融株を売却し、代わりに金鉱株を買ったことと大橋ひろこさんは解説 (C)Bloomberg/Getty Images
バフェットといえば2016年以降、アップル株を積極的に買っていました。
当時は「今さらアップルか?」とも思いましたが、株価は急騰。
バークシャー・ハサウェイのポートフォリオで最大の比率を占めるまでになっています。
そのバフェットが今、ゴールドに着目するということは、まだ値上がりは続くのかもしれませんね。
「ゴールドそのもの」ではなく、金鉱株を買ったというところには、バフェット流の信念も感じますね。
■豪州、産金量世界一も視野に
バフェットが買った金鉱株はカナダの会社ですが、世界2位の産金国が豪州。
世界的な金利低下局面ですが、豪州の10年債利回りは、まだ0.85%程度あります。
米国が0.7%、英国が0.4%、ドイツがマイナス0.4%ですから豪州の金利水準は魅力的。
実際、日本の機関投資家が5月、6月に買った豪ソブリン債は過去最大水準です。
(出所:TradingView)
豪州は、早ければ来年にも世界一の産金国になるのではとの見方もあります。
そうなるとゴールドと豪ドルの相関性が強まるかもしれませんね。
足もとでは高値圏でのもみ合いが続く豪ドルですが、3月以降、31%の上昇。
かなりのボラティリティですが、ゴールドがまだ上がるという中期的な観点に立てば、豪ドルもまだ上がるのでしょう。
(出所:TradingView)
■GPIF、欧州債への投資拡大ならユーロ円の支援材料か
先週(8月10日~)気になったのが、ブルームバーグに掲載されたGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)理事長へのインタビュー記事。
「ユーロ圏債券市場を注視、米債一辺倒見直しも」とのタイトルです。
GPIFには、まだ外債投資の余地が残っており、外債ポートフォリオは米国債が46.8%。ユーロ圏と英国の国債は27.6%です。
「EU共同債が発行されれば買いますよ」という意思表示のインタビューだったのかもしれませんし、そうなれば長期的にユーロ/円の支援材料ですね。
株価が崩れないため、クロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)は強いですね。
米ドル/円は、104~108円のレンジをウロウロするだけです。
ただ、米ドル安が進行する中、円だけが取り残されるとも考えにくく、104円を割るのは時間の問題でしょう。
【参考記事】
●米ドル/円は100円台の可能性さらに高まる! ゴールド急騰や米利回り低下でドル安進行(8月6日、西原宏一)
●米ドル/円、104円台半ば抜ければ100円が見えてくる! 動き出せば下落余地は大きい(7月27日、西原宏一&大橋ひろこ)
(出所:TradingView)
今週(8月17日~)は、8月20日(木)にトルコの政策金利が発表されます。
今月(8月)に入り、トルコリラ/円は急落しており、利上げしたいところでしょうが、エルドアン大統領は利上げに反対しています。
【参考記事】
●トルコリラ/円、早くも14.50円近辺へ下落。なぜ? 利上げなしに本格的な上昇は困難か(8月12日、エミン・ユルマズ)
(出所:TradingView)
衛生環境が未整備の新興国では、コロナの影響も深刻。当面、厳しいでしょう。
■豪ドル/米ドルの押し目買いスタンスで臨みたい
今週の戦略は、どう考えますか?
ゴールドが調整し、米ドル安も一服するかと思いましたが、先週(8月10日~)のゴールドは長い下ヒゲとなり、調整が完了した可能性があります。
再び上がり始めるとすれば、3月もそうだったように、豪ドルが先に動き出すのでしょう。
豪ドル/米ドルの押し目買いスタンスで臨みたいと思います。
【参考記事】
●ゴールドやユーロ/ドルの調整はどの程度? 浅ければ再びゴールド買い、米ドル売りか(8月13日、西原宏一)
●悪材料織り込みでNYダウの二番底はない!? 大きな流れは米ドル安。豪ドル買い継続へ(4月13日、西原宏一&大橋ひろこ)
●日本の緊急事態宣言でセル・ザ・ファクトか。豪ドルの瞬間的な急騰は、誤発注だった!?(4月6日、西原宏一&大橋ひろこ)
●東京がロックダウンなら日本株はどうなる? 米ドル不足解消で米ドル売りが続きそう(3月30日、西原宏一&大橋ひろこ)
(出所:TradingView)
(出所:TradingView)
(構成/ミドルマン・高城泰)
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