■「菅総裁」で日本株を中心にセル・ザ・ファクトの可能性も
話題はそれなりにあるのですが、米ドル/円は動きませんね。
先週(9月7日~)は株式市場も小動きでしたが、米国株よりも日本株のほうが底堅く動いているようにも感じます。
このところの米国株安で「米国株ロング、日本株ショート」といった戦略をアンワインド(巻き戻し)する動きが出ているようですし、よりシンプルに考えると、安倍首相の退陣表明で売りに回っていた海外勢が「菅なら大丈夫そうだ」と買い戻す動きもあるのでしょう。
【参考記事】
●豪ドル/米ドルを押し目買い! 米ドル安は続く。「菅首相」誕生なら市場の反応は?(8月31日、西原宏一&大橋ひろこ)
自民党の総裁選挙は今日(9月14日)、投開票です。
実際に菅さんで決まれば(※)、日本株を中心にセル・ザ・ファクトの動きとなる可能性があります。
(※編集部注:コラム寄稿後、自民党総裁選の投開票が行われ、菅義偉官房長官が自民党新総裁に選出された)
■英ポンド下落にソフトバンクグループの影
ソフトバンクグループの件も話題ですね。
2016年に買収した英半導体設計大手のアームを米半導体大手のエヌビディアへ売却すると発表しました。
4年で1兆円の利益ですから見事なディールですね。
売却による為替への影響も取り沙汰されていますが、推測するのは難しい。
【参考記事】
●新型コロナ後の世界はどうなる? ソフトバンクGの資産売却でポンド/円の売り!?(4月1日、志摩力男)
一昨年(2018年)、武田薬品が英シャイアーを買収したときも為替が話題となりました。
【参考記事】
●武田薬品の英シャイアー7兆円大型買収の行方に注目! 巨額の英ポンド買いの噂も?(2018年4月26日、西原宏一)
武田の場合、当初は英ポンド/円の売りと思われていましたが、実際には英ポンド/米ドルでした。
今回も英ポンド/米ドルなのかもしれませんが、円に転換する部分がゼロではないでしょうから、円高要因とはなります。
ただ、ソフトバンクグループも当然、すでにある程度は抑えているはず。
先週(9月7日~)の英ポンド/円が戻ることなく一本調子に下げた背景には、ノーディール・ブレグジット(合意なき離脱)の懸念だけでなく、ソフトバンクグループによる売りも重なっていたのかもしれません。
【参考記事】
●目先、調整のユーロ/米ドルは戻り売りで! 新たな買い材料がないと上昇は継続しにくい(9月8日、バカラ村)
(出所:TradingView)
■10月15日の期限へ向けてボリスのウルトラCに警戒も
米ドル/円もユーロ/米ドルも横ばいが続き、トレンドがあるのはノーディールへの懸念が高まる英ポンドだけですね。
昨年(2019年)と同様、ボリス・ジョンソン英首相の瀬戸際外交だろうと思いますが、今回は本当に交渉が決裂するのではとの懸念もあります。
ノーディールに備えて為替を手当しないといけない企業もあり、下落基調は続くのでは。
ただ、ボリスが一方的に決めた交渉期限である10月15日(木)まで残された時間はわずか。
ウルトラCのような提案を持ち出し、急展開を見せる可能性もあります。
9月17日(木)にはBOE(イングランド銀行[英国の中央銀行])のMPC(英中銀金融政策決定会合)が開催されます。
3月の国債入札では3年物がマイナス金利となりましたし、今回でなくともマイナス金利導入の可能性は否定できません。
今回は据え置きでしょうね。ブレグジットが混迷する中で金融政策を動かすとは思えません。
■9月16日のFOMCで、フォワードガイダンスの変更は?
先週(9月7日~)、ECB(欧州中央銀行)理事会が開催されました。
「ユーロ相場の水準についてコメントしない」とのラガルド総裁の発言を、市場はユーロ高容認と受け止め、ユーロ/米ドルは直後に1.19ドル台を回復しています。
(出所:TradingView)
ところが、ラガルドさんは週末にユーロ高は困るといった趣旨の発言をしてもいます。
再浮上したノーディール・ブレグジットの懸念は、ユーロも押し下げるでしょうし、ユーロ/米ドルは当面、上値が重いのではないでしょうか。
9月16日(水)はFOMC(米連邦公開市場委員会)の結果が公表されます。
フォワードガイダンスを変更するのかどうか。ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁は、「緊急な必要性はない」と話しています。
何も変更がないと、失望での米ドル買いが出てくるかもしれませんね。
9月17日(木)には日銀金融政策決定会合もありますが、こちらはノーイベントでしょう。
■英ポンドの戻り売り! ノーディールでの下落余地は大きい
為替に直接関係はないですが、イスラエルがUAEに続き、バーレーンとも国交正常化で合意しました。
仲介したのは、トランプ米大統領。
中東和平への大きな一歩となる、ノーベル平和賞レベルの偉業です。
【参考記事】
●豪ドル/米ドルを押し目買い! バフェットも注目のゴールドより先に、豪ドルが動き出す(8月17日、西原宏一&大橋ひろこ)
原油市場は、9月に入り軟調な動きが続いていますが、注目は9月17日(木)に開催されるOPECプラス(※)の合同閣僚監視委員会(JMMC)。
各国が減産を遵守しているかどうか、確認するための会合ですが、減産遵守を強調する声明を出して、下落を食い止めようとする可能性があります。
(※編集部注:「OPECプラス」とは、OPEC(石油輸出国機構)にOPEC非加盟の主要産油国を加えた枠組みのこと)
(出所:TradingView)
いずれにせよ、マーケットの注目は英ポンド。
ボリスのウルトラCで反転すれば即カットするつもりで、英ポンド/円や英ポンド/米ドルを戻り売りすればいいのではないでしょうか。
ノーディールとなったときの下落余地は大きく、リスクリワードのいいトレードになると思います。
(出所:TradingView)
(出所:TradingView)
(構成/ミドルマン・高城泰)
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