■消費者信頼感指数が下落している2つの要因
トルコで活動している経済チャンネルであるブルームバーグHTが、毎月発表している消費者信頼感指数は、8月に前月比で16.8ポイント下落し、74.8に後退しました。
4月に底打ちしてから7月まで、ずっと上昇していた消費者信頼感指数が、8月から再び下落に転じている背景に、東地中海における地政学テンションの高まりとトルコ中銀による裏口金融引き締めがあります。
【参考記事】
●トルコ中銀は禁じ手使ってリラ防衛に成功! だが、秋以降の相場は荒れる懸念あり(8月5日、エミン・ユルマズ)
●トルコ中銀は次の会合で利上げに踏み切る必要あり! 米大統領選がリラ相場に影響!?(9月2日、エミン・ユルマズ)
実際に、トルコ中銀の裏口引き締めの影響で、トルコ国内の金利が上昇しています。
8月に入ってからトルコ国内の商業ローンの金利は2.8%、住宅ローンは4.7%、消費者ローンは6.8%上昇しました。金利の上昇が景気を一段と冷やし、国民の生活にも直撃してしまっています。
これらの要因が重なって、イスタンブール株式市場の下落も同じく、7月から加速しています。
(出所:TradingView)
■EU首脳会議でのトルコ制裁措置の有無に注目
そこで気になるのは、10月1日(木)~2日(金)に行われるEU(欧州連合)首脳会議で、トルコに対して何らかの制裁措置が出るかどうかです。
EU首脳会議は、本来9月24(木)~25日(金)に行われる予定でしたが、関係者の1人が新型コロナウイルスに感染したため、延期されました。EUから経済制裁があればトルコ経済は窮地に追い込まれ、トルコリラのさらなる下落につながる可能性があるので気になるところです。
個人的には、EU議会からトルコに対する強い制裁措置が出る可能性は低いと考えます。EU主要国は、エルドアン政権と対立している部分がある一方で、シリア難民を大量に受け入れているエルドアン政権に感謝もしています。
また、EUが難民問題の次に懸念しているのは、トルコの銀行が破綻するというシナリオです。トルコの主要銀行は、EUから資金を調達してトルコ国内で貸し付けているので、トルコの大手銀行の破綻シナリオは、EUにも飛び火してしまう恐れがあります。
これらを考慮すると、ギリシャとトルコの東地中海における対立で、EU加盟国であるギリシャの肩を持ちつつも、トルコに対する厳しい制裁を出す可能性は低いことがわかります。
■もっとも大きな政治リスクは、EUではなく米国か
エルドアン政権にとって、もっとも大きな政治リスクは、EUよりも米国からくる可能性が高いと考えています。
11月の大統領選挙でトランプ大統領が落選し、バイデン大統領が誕生となった場合に、米国のトルコへの態度が厳しくなる可能性があります。
11月の大統領選挙でトランプ大統領が落選し、バイデン大統領が誕生した場合、米国のトルコへの態度が厳しくなる可能性があるという (C)Scott Olson/Getty Images News
■トルコリラ下落は、政策金利据え置きを織り込んだ動き
今週(9月21日~)のトルコリラですが、対米ドル・対円で下落基調が止まらず、米ドル/トルコリラは7.66リラ水準まで上昇、対円でも13.60円台まで下がりました。
【参考記事】
●トルコ国債は史上最低の「B2」に格下げ。利上げなければ、対円で13.50円まで下落か(9月16日、エミン・ユルマズ)
(出所:TradingView)
(出所:TradingView)
米国経済の短期見通しに対する不安の高まりで、米ドル指数が上昇し始めたことが、トルコリラの対米ドルでの下落を加速させました。
(出所:TradingView)
9月24日(木)に行われるトルコ中銀の政策会合では、利上げが行われないか、行われたとしても限定的な利上げに留まるとの見方が主流です。
そのため、トルコリラの足元の下落は、政策金利の据え置き判断を織り込んだ動きだと考えます。
(出所:TradingView)
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