■東地中海を巡るトルコとギリシャの対立にEUが介入
トルコとギリシャの東地中海における対立に、EU(欧州連合)も介入してきました。
【参考記事】
●ガス田発見は、すぐにトルコリラ上昇要因にはならない! 市場は利上げを望んでいる(8月26日、エミン・ユルマズ)
8月28日(金)に、EU外務・安全保障政策上級代表のジョセップ・ボレル氏がこの問題に言及し、両国に対話を呼びかけました。
しかし、EUとしては、やはりメンバーであるギリシャの肩を持つことを示唆し、トルコが東地中海での天然ガスの調査活動をやめないと、EUがトルコに経済制裁を行うと警告しました。
EUの後ろ盾を得たギリシャは、トルコ本土から2キロ沖にあるカステロリゾ島に部隊を派兵しましたが、トルコはこの動きに強く反発し、状況が緊迫しています。トルコとリビアの内戦で対立しているフランスも、ギリシャへのサポートとして空母を東地中海に派遣することを決めたようです。
【参考記事】
●リビア内戦がトルコとエジプトの戦争に!? 新観光政策の効果がリラの運命を決める!(6月24日、エミン・ユルマズ)
EUが動いたので、トルコとギリシャの間に大規模な軍事衝突が起きる可能性は低くなったと考えます。
■米大統領選挙の結果が、トルコリラを大きく動かす
一方で、年末に向けてトルコリラが下落し続けるリスクを払しょくできません。その理由は、米国大統領選挙です。米大統領選挙の結果よって、トルコリラが大きく動く可能性があります。
ブランソン牧師の件で対立していたものの、トランプ政権とエルドアン政権は良好な関係を築いてきました。
【参考記事】
●ブランソン牧師釈放。経済制裁解除も近い!? トルコリラ/円は20円超えに向けて上昇中!(2018年10月17日、エミン・ユルマズ)
ブランソン牧師の件で対立したものの、トランプ政権とエルドアン政権は良好な関係を築いてきた。写真は2019年6月に大阪で開催されたG20サミットのときのもの (C)Anadolu Agency/Getty Images
トランプ大統領は、就任直後にトルコ国営銀行のハルクバンク事件の担当であるプリート・バララニューヨーク州連邦検事を解雇しました。
【参考記事】
●インフレ減速と原油下落はトルコに追い風! 21円台維持はハルクバンクへの罰金次第か(2018年11月7日、エミン・ユルマズ)
これによってハルクバンクの裁判が長引き、トルコに対する厳しい制裁が出ませんでした。11月の大統領選挙でバイデン氏が勝利した場合に、ハルクバンク裁判が加速し、トルコと米国の関係が悪化する可能性があります。その懸念からトルコリラも売られると考えます。
バイデン氏は、エルドアン政権に対しては特に厳しいと評判のようです。これは先々週(8月17日~)、トルコメディアでも大きな話題となりました。
11月の米国大統領選挙でバイデン氏が勝利した場合、トルコと米国の関係が悪化する可能性があるとエミンさんは指摘している (C)Scott Olson/Getty Images News
■トルコ4-6月期のGDP成長率はマイナス9.9%
トルコ統計局は、今週(8月31日~)、2020年4-6月期のGDP成長率を公表しました。
トルコ経済の成長率は、4-6月期でマイナス9.9%になりました。前年同月比でサービス業と製造業の落ち込みがもっとも激しく、長年トルコ経済の成長エンジンであった住宅セクターは、トルコ政府の低金利貸し出し政策の効果で落ち込みが限定的でした。
製造業の回復は、EU経済の回復に直結していて、東地中海問題でトルコがEUの制裁にあえば一段と落ち込む可能性があります。
■トルコ中銀は次回会合で利上げに踏み切る必要あり
今週(8月31日~)のトルコリラですが、対米ドルでは7.30~7.40リラの狭いレンジの動きが続いています。
(出所:IG証券)
トルコ中銀の裏口利上げのおかげで、対円でも14円台前半で、いったん下落が止まったように見えます。
【参考記事】
●トルコ中銀は禁じ手使ってリラ防衛に成功! だが、秋以降の相場は荒れる懸念あり(8月5日、エミン・ユルマズ)
(出所:IG証券)
しかし、その効果も期限付きだと思いますので、トルコ中銀は、9月24日(木)に行われる次の政策会合で利上げに踏み切る必要があります。
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