■エルドアン大統領が大規模天然ガス田発見を発表
前回のコラムで、東地中海の天然ガス資源をめぐる争いについて書きましたが、天然ガス田は地中海ではなく黒海で発見されました。
【参考記事】
●トルコリラ下落…。大幅利上げなら反発の可能性あるが、エルドアン大統領は反対姿勢(8月19日、エミン・ユルマズ)
エルドアン大統領は、8月21日(金)に記者会見を行い、黒海で推定3200億立方メートルの天然ガス田が発見されたことを明らかにしました。
エルドアン大統領は記者会見で、黒海で推定3200億立法メートルの天然ガス田が発見されたことを明らかにした (C)Anadolu Agency/Getty Images
発表前に、期待でトルコリラは買われましたが、発表とともに再び下げだしました。
その理由は、事前にロイターが8000億立方メートルと報じていたからです。つまり、報道されていた埋蔵量の半分以下でしたので、ガッカリ売りが出てしまいました。
(出所:IG証券)
■トルコとギリシャの軍事衝突リスクが高まっている
そもそも天然ガス田の発見は、長期的にトルコ経済にとってプラス材料であるものの、今すぐトルコリラの上昇要因になるような材料ではありません。可採埋蔵量と年間生産可能量は不明だし、トルコに天然ガスを独自で取り出せる技術もなく、実際に生産が開始されるまで長い期間が必要だと指摘されています。
トルコ政府は2023年までに生産を開始できると説明していますが、これは、かなり楽観的な予想だと言わざるを得ません。また、黒海の天然ガス田発見で東地中海における争いが消えたわけでもありません。トルコは東地中海の海底調査は続けているし、ギリシャは、近く、同地域で軍事演習を実施することを決めました。
つまり、トルコとギリシャの軍事衝突のリスクは高まっています。ドイツのマース外相はトルコとギリシャは東地中海で火遊びしていると非難し、対立緩和を呼びかけています。
■米格付け会社フィッチがトルコの見通しを引き下げ
米格付け会社のフィッチは、8月21日(米国時間)にトルコの格付けを発表しました。格付けはBB-で変更なしでしたが、見通しは安定的からネガティブに引き下げられました。
フィッチは、トルコの財政状況の貧弱さとトルコ中銀の独立性に対する懸念から見通しを引き下げた可能性が高いと考えます。ただし、トルコの格付けは、すでに投資不適格なのでトルコリラに大きな影響を与えるような発表ではありません。
■トルコ中銀は政策金利据え置き。リラ売りが増えるか
今週(8月24日~)のトルコリラですが、天然ガス田発見の発表への期待でいったん下がった米ドル/トルコリラは、再び7.40リラ水準に上昇しました。
(出所:IG証券)
一方で、米ドル/円も上昇したため対円はあまり変わらず、14.40円近辺で推移しています。
(出所:IG証券)
8月20日(木)のトルコ中銀の政策会合で、政策金利は据え置かれましたが、天然ガス田発見の発表への期待からトルコリラはすぐには下がりませんでした。
天然ガス田発見の発表を政策会合の翌日(8月21日)に設定することで、グローバル投資家のトルコリラ売りを、ある程度、吸収することに成功しました。しかし、8月20日(木)に利上げがなかったことは、今後の利上げに対する期待を後退させたので、トルコリラ売りは、今後、じわじわ増えると予想しています。
トルコ中銀の裏口利上げは、ある程度、効果が出ていますが、その効果も次第に薄れてくるでしょう。
【参考記事】
●トルコ中銀は禁じ手使ってリラ防衛に成功! だが、秋以降の相場は荒れる懸念あり(8月5日、エミン・ユルマズ)
市場は2018年のように、トルコ中銀の大幅な政策金利の引き上げを望んでいます。
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