■米ドル全面安の一環で米ドル/円一時103円割れ
米ドル全面安が続き、また加速している。昨日(12月17日)、ドルインデックスは90の節目割れを果たし、いったん89.64をトライ、2018年安値へ接近する勢いを見せている。
(出所:TradingView)
米ドル全面安の流れに対抗できず、米ドル/円も103円の節目割れを果たし、昨日(12月17日)、いったん102.89円をトライした。
(出所:TradingView)
このままでは、当然一段安を警戒しなければならないが、あくまで米ドル安の一環として認識すべきだ。このあたり、やはり円の立場を強調しすぎると、誤った結論になりかねない。
「リスクオンの円高」という言い方がその典型であるが、「円高局面も米ドル買い」というのも、本質的にいっしょかと思う。
12月15日(火)の日経新聞の記事には、以下のようなタイトルのものがあった。
金利差縮小、「動かぬ円」再び
100円台半ば、円高局面もドル買い
(出所:日本経済新聞)
安値圏での保ち合いが長かったから「円高局面もドル買い」と記しているが、恐れながら、それは明らかに間違った認識だと指摘しておきたい。
筆者から見れば、「米ドル安局面も円買いが限定的」、あるいは「米ドル安局面も円買いが緩やか」といった文言の方が適切かと思う。
なにしろ、本コラムで繰り返し指摘してきたように、米ドル全面安の流れの中、円が受動的に買われること自体、自然な成り行きで、円は主要外貨のうち、むしろ一番弱いというか、「出遅れている」方だ。ゆえに、円高局面云々は到底言い切れない。
■ユーロ/円の堅調ぶりからも「円高局面」とは言えない
このようなロジックを、本コラムでは繰り返し指摘してきたから、ここでは詳細は省くが、最新の市況に照らしてもう1回点検しておこう。
まず、前回のコラムでも言ったように、基本的には米ドル全面安が行きすぎの疑いがあった。しかし、当面トレンドフォローの視点では逆張りできず、また、主要外貨のユーロは対米ドルで高値を更新し、その後、ユーロ/円もついていくだろう、というシナリオであった。
【参考記事】
●ユーロ/円やユーロ/米ドルの年初来高値更新も有力視! トレンドフォローに徹して(2020年12月11日、陳満咲杜)
実際、今週(12月14日)に入ってから、ユーロ/米ドルは大きく続伸。昨日(12月17日)、いったん1.2273ドルの高値をトライし、2018年4月以来の高値を更新した。
(出所:TradingView)
要するに、米ドル安のトレンドがなお継続、また、一段と加速しているから、おもな受け皿としてユーロが買われたわけで、シナリオのとおりだと言える。
そして、仮に今、円高局面にあるなら、ユーロ/米ドルの上昇があってもユーロ/円は大きく反落しているか、弱含みの展開となっているだろう。
何しろ、円高局面とは、対米ドルのみではなく、主要外貨のユーロに対しても強い基調を保てる状況でなければならないから、ユーロ/円は暴落を避けたとしても、弱含みの状況に置かれるはずだ。
本コラム執筆中の現時点で、ユーロ/円は126円台後半に位置し、9月高値127.09円に迫る勢いを見せている。
(出所:TradingView)
ユーロ/米ドルの高値トライについていく形で、2020年年初来高値を更新するというのはもはや規定路線で、9月高値のブレイクを果たしてから一段と上値余地を拡大するといった従来の見方は変わらないばかりか、むしろ、強化されている。
言い換えれば、本当に円高局面にあるなら、ユーロ/円は現時点のような強気変動を保てないし、これから年初来高値更新をすることもなかろう。
いくらユーロ/米ドルが強いとはいえ、円高局面にあるなら、ユーロ/円はせいぜい弱含みの状況をかろうじて保つ程度にとどまるだろう。
したがって、主要クロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)の強気変動が見られるうちは、円高局面と判定するのは明らかに適切ではない。
■ブレグジットリスクのある英ポンド/円さえ堅調な値動きに
このような関係は、豪ドル/米ドルと豪ドル/円でも観察される。豪ドル/米ドルは、今週(12月14日~)も続伸し、2020年年初来高値を再度更新。追随するように、豪ドル/円は、2020年年初来高値を再度更新する寸前の段階にきている。
(出所:TradingView)
(出所:TradingView)
ユーロ/円と同様、これからの高値更新が必然視され、また、高値更新をもって一段と上値余地が拡大する、といった従来の見方も不変だ。
大きな不確実材料(ブレグジット)を抱える英ポンドでさえ、同じ構図を見せている。英ポンド/米ドルが高値の再更新を果たしている現状において、英ポンド/円も堅調な値動きを見せている。これから年初来高値更新を試し、また、上放れを果たすだろう。
(出所:TradingView)
(出所:TradingView)
もちろん、ブレグジットの結果次第では大きく乱高下し、また、売られる可能性もあるが、現時点の市場の値動き(疑惑や懸念を織り込んでいると推測される)から考えると、そのようなリスクは低下しているように見える。
もっとも、典型的な金余り相場、すなわち、金融緩和相場の足元において、株高の基調は安易に崩れず、いわゆるリスクオフの局面が将来のどこかの時点で必ずやってくるとしても、しばらくは来ないはずだ。
ゆえに、現時点でブレグジットに伴う混乱があっても本格的なリスクオフの市況にはつながらないから、英ポンド/円でさえ、本格的なリスクオフの値動き、すなわち、円高のトレンドがガンガン進行することは想定しにくい。
だからこそ、現状、続いている米ドル/円の流れは、あくまで米ドル安であり、リスクオフの円高でもなければ、いわゆるリスクオンの円高でもないことを再確認しておきたい。
円高の進行があっても、あくまで米ドル全面安の一環として位置づけ、また、米ドル/円に限った動きであるともいえる状況なので、米ドルの下値余地があっても限定される、という従来の見方も維持しておきたい。
■テクニカル的にも米ドル/円の下値余地は限定的
最後に、前述の見方を踏まえて、米ドル/円は下のチャートで示すように、「下落ウェッジ」を形成しているのではないかと思う。
(出所:TradingView)
当たっているなら、やはり当面頭が重くても、下値余地は限定的だと見る。検証はまた次回、市況はいかに。
14:00執筆
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