■バイデン米大統領、就任直後に大統領令に署名
先週(1月18日~)、注目されたバイデン米大統領の就任式は、大きな混乱もなく通過しました。
早速、マスク着用の義務化や温暖化対策の国際枠組みであるパリ協定への復帰、WHO(世界保健機関)脱退手続きの停止など、矢継ぎ早に大統領令に署名し、バイデン色を出し始めましたね。
1月20日(水)に正式に就任したバイデン米大統領は早速、マスク着用の義務化や温暖化対策の国際枠組みであるパリ協定への復帰、WHO脱退手続きの停止など、矢継ぎ早に大統領令に署名。バイデン色を出し始めたと西原氏は解説 (C)Scott Olson/Getty Images News
カナダの油田と米国の精油所を結ぶパイプラインである「キーストーンXL」の認可取り消しも注目。
環境問題への配慮が理由ですが、失われる雇用は数万人規模とも言われていますから、心配です。
最低賃金を15ドルへ引き上げる方針も示していますね。
イエレン次期財務長官はFRB(米連邦準備制度理事会)議長時代に、最低賃金引き上げに反対する発言をしたこともありましたから、どうなるのか。
トランプさんの弾劾裁判は、2月9日(火)開始で与野党が合意しました。
バイデンさんが掲げる「Unify(団結)」とは反する動きですね。「Divide(分断)」された状況は、まだ続くのでしょう。
いずれにせよ、就任から100日ほどは「ハネムーン」の期間。メディアが表立って批判することはないでしょう。
■米長期金利は「1.3%」に警戒
このところ話題になる米長期金利は、1.1%台で高止まりしています。
これが1.2%、1.3%と勢いよく上がってくるようだと、株価も下がり始めるのでしょう。
(出所:TradingView)
ただ、米国債への需要は強いですね。
ブルームバーグは「日本の投資家が買うのは10年債利回りが1.3%になってから」と報じていました。
米国債が粛々と買われるなら金利上昇も緩やかでしょうし、株価も崩れにくいのかもしれません。
金利上昇のピッチ、スピードに注目ですね。
1月26日(火)、1月27日(水)はFOMC(米連邦公開市場委員会)ですが、政策変更はない見通し。
次の動きは、緩和の拡大ではなくテーパリング(※)なのでしょうが、それも2022年からとの予想が大半を占めています。
(※編集部注:「テーパリング」とは、量的緩和政策により、進められてきた資産買い取りを徐々に減少し、最終的に購入額をゼロにしていこうとすること)
■東京五輪の2032年延期報道と穀物価格急落
先週、英タイムズ紙は東京五輪の2032年への延期を報道しましたね。冬季の北京五輪も2年後に迫っています。
東京五輪が延期されれば「北京はどうなる、いつになれば国際大会ができるの?」と、喪失感が表面化して株価への影響もありそうです。
日本の感染状況は1年前よりも確実に悪化し、欧米はなおさら。とても五輪どころではないですよね。
気になるのは、高値から30%の急落となったビットコインをはじめ、銅、大豆や小麦、コーンなど穀物まで崩れ始めていること。
穀物市場は中国の影響が大きく、春節前の利食い売りならいいのですが、これまでの相場が崩れ始めている兆候である可能性も……。
(出所:TradingView)
株式市場の調整が近いのではないかと思いながら、なかなか動きません。
去年(2020年)1月もそうでしたが、結局はコロナで崩れました。
去年と違うのは、過剰流動性の金あまり相場になっている、ということですね。
株式市場は上昇のファーストステージと見る銀行もあるものの、調整は近いとの見通しは変わりません。
【参考記事】
●政治・経済両面で緊張感高まる欧州。ユーロ/米ドルは1.20ドル割れも十分あり得る(1月18日、西原宏一&大橋ひろこ)
●株式市場の調整は、月末の今日にも始まる!? ワクチン接種開始でセル・ザ・ファクトか(2020年11月30日、西原宏一&大橋ひろこ)
■米ドル/円、「菅ライン」支えに「ワクチン相場」で上昇も
今週の戦略は、どう考えますか?
豪ドルは中長期では強気ですが、足もとではチャートの形状が悪化しています。
買うのだとしたら、落ちたところで拾いたいですね。
【参考記事】
●LNG高騰など中期での豪ドルの強さは不変。下落中のユーロ/豪ドルの動向に注目!(1月21日、西原宏一)
●2021年、ポストコロナの注目通貨は豪ドル! コロナ変異種の感染拡大は懸念されるが…(2020年12月24日、西原宏一)
●豪ドル、鉄鉱石急騰を受けて上昇継続! 長期では水素燃料関連の報道も買い材料に(2020年12月17日、西原宏一)
(出所:TradingView)
穀物市場の下落が中国の変調を意味しているのなら、豪ドルの買い場はもう少し先、ということにもなりますね。
いったん「リスクオフの米ドル高」になりそうな気配も感じます。
同感です。
ユーロ/米ドルは、米ドル安に対する調整が入るのでは。1.20ドルのサポートは固いですが、売り方向でいいのでしょう。
【参考記事】
●政治・経済両面で緊張感高まる欧州。ユーロ/米ドルは1.20ドル割れも十分あり得る(1月18日、西原宏一&大橋ひろこ)
(出所:TradingView)
米ドル/円は、いかがですか?
「リスクオフの米ドル高」なら、米ドル/円もリスクオフで上昇することになり、今までのセオリーが変わってきた感じがありますね。
菅首相の「100円を割らないようにしてくれ」との発言が103円台で漏れてきたことを思えば、103円すら割らせたくないのでしょうし、ここからは「ワクチン相場」かもしれません。
日本政府は米ファイザーや米モデルナ、英アストラゼネカの3社から、合計3億1000万回分のワクチンを確保しています。
詳細はわかりませんが、この支払いで為替が発生すれば円安要因。押し目買いでいいのではと思います。
【参考記事】
●米追加経済対策に絡むサプライズ報道で米ドル反発。ユーロ/米ドルは戻り売りで(1月14日、西原宏一)
●菅新首相誕生! 官房長官時代に米ドル/円相場を支えた「為替管理」とは…?(2020年9月16日、志摩力男)
(出所:TradingView)
(構成/ミドルマン・高城泰)
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