■トルコは政府予想を大きく上回る経常赤字に
トルコ中銀の発表によると、トルコの経常赤字は12月に32.1億ドル、2020年通期で367億ドルとなりました。トルコ政府が最後に発表した中期計画で、2020年の経常赤字は244億ドルの予想でしたので、この結果は、政府の予想をはるかに上回っているということなります。
トルコの経常赤字の中身は、ほとんどエネルギーです。たとえば、 12月のデータも、エネルギーを除くと経常赤字は経常黒字に変わります。では、エネルギーの中身は何でしょうか?
トルコは石炭をたくさん掘り出しているので、エネルギーの中身は原油と天然ガスです。原油と天然ガスの価格が上昇すれば経常赤字が拡大し、それがトルコリラの売り圧力となります。
【参考記事】
●なぜ、トルコリラは上昇しているのか…!? 原油価格とトルコリラは逆相関関係にある(2018年10月31日、エミン・ユルマズ)
(出所:IG証券)
ただし、エネルギー価格の上昇がトルコリラに影響を与えるまで少し時間がかかります。すぐにではなく、タイムラグをもってトルコリラに影響を与えます。
■米国の大雪が、原油と天然ガスの価格にとって追い風に
足元で原油価格はブレントで63ドルを超え、天然ガス価格も高騰しています。原油価格が上昇している要因は、ワクチン接種によるパンデミックの終息期待です。
イスラエルなど、ワクチン接種が進んでいる国で新型コロナウイルス感染による入院率が急落しているので、日本や欧米でもワクチン接種が進み、夏までにパンデミックが収束するという期待が高まっています。
パンデミックが終われば国内外の旅行や出張も可能になり、人が大量に動く可能性があるので、原油の需要が高まると予想されています。
天然ガスについては、ストーリーが少し違っていまして、現在、米国は大雪に見舞われていてカリフォルニアやテキサスなど、普段は暖かい地域にも雪が大量に降っています。
大雪でテキサス州がエネルギー不足に陥って、停電が続いています。カリフォルニアは太陽光パネルが雪に覆われ、テキサスは風力プロペラやタービンが凍ってクリーンエネルギーが使えなくなっています。
この状況は、化石燃料への需要増加とともにクリーンエネルギーは本当に大丈夫か?という疑問をもたらしているので、原油と天然ガスの価格にとっては大いに追い風になっています。
(出所:IG証券)
■エネルギー価格上昇による経常赤字拡大の影響を注視
今週(2月15日~)のトルコリラですが、対米ドル・対円ともに大きく上昇していて、米ドル/トルコリラは大台の7.0リラを割って、トルコリラ/円も15円を超えました。
(出所:IG証券)
(出所:IG証券)
市場コンセンサスは、2月18日(木)に行われるトルコ中銀の政策会合で政策金利が据え置かれるとのことです。個人的にも、その可能性が高いと思っています。
トルコリラにとって今後のリスクイベントは、エネルギー価格の上昇による経常赤字の拡大が、いつ数字に現れるかです。私は3月から、その数字を確認できると予想しています。
株主:株式会社ダイヤモンド社(100%)
加入協会:一般社団法人日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)