■原油価格上昇でトルコ経常赤字が大幅増
1月11日(月)に、トルコ統計局は、昨年(2020年)10月の失業率を発表しました。10月の失業率は12.7%となり、9月と同じ水準に留まりました。一方で非農業部門の失業率は改善していて、10月に0.9%減少し、14.8%に下がっています。
1月11日(月)に発表された、もうひとつの重要なマクロ指標は、11月の経常収支です。トルコ中銀が発表したデータによると、11月の経常収支は41億ドルの経常赤字でした。
この結果を受け、年間ベースの経常赤字は380億ドルに達しました。経常赤字の増加は、市場コンセンサスであった35億ドルを大きく超えていますが、11月以降の原油価格の上昇が原因だと思われます。
(出所:IG証券)
経常収支は、トルコリラの短期的な動きを決める上でも重要で、トルコの経常赤字の最大の要因は、原油や天然ガスの輸入です。
■新型コロナ新規感染者鈍化でロックダウン緩和期待高まる
12月に1日で3万人を超えていた新型コロナウイルス新規感染者数は、足元で1万人を割るレベルまで下がっていることを受け、トルコ政府がロックダウンを解除、もしくは緩和するという期待が高まっています。
(出所:Worldometerのデータを基にザイFX!編集部にて作成))
1月11日(月)時点で、新型コロナウイルス感染者は合計235万人、死者数は2万3152人となっています。
(出所:Worldometerのデータを基にザイFX!編集部にて作成)
トルコ政府は、ロックダウン(都市封鎖)を緩和しながらも、65歳以上の高齢者と20歳以下の若者の外出規制を維持するようです。イスタンブールやアンカラなどの大都市も、現在、年齢に合わせた交通機関の乗車制限を設けています。
【参考記事】
●長引けばトルコリラ/円は13円割れか…! コロナ再拡大でトルコがロックダウン再開(2020年12月2日、エミン・ユルマズ)
気になるのはコロナワクチンですが、トルコ政府が購入を決めている中国のシノバック・バイオテック社のワクチンは、ブラジルでの後期臨床試験で50.4%の有効性しかないと1月12日(火)に報告されています。
実は、当ワクチンの治験は、トルコとインドネシアでも行われていて、トルコは12月に治験の中間データで有効性が91.25%と、インドネシアは1月11日(月)に65%だと発表しています。
異なる治験データが混在しているのですが、ブラジルと違ってトルコとインドネシアの現政権が中国と親密な関係にあることから、トルコとインドネシアの治験データに疑問を持っている人が多いのは事実です。
■2021年前半の利上げは1.00~1.50%が限界か
今週(1月11日~)のトルコリラですが、高まるリスクセンチメントと週明けのドルインデックスの上昇を受け、先週(1月4日~)7.20リラ水準まで下落していた米ドル/トルコリラは、週明けに7.50リラを超えました。
(出所:IG証券)
(出所:IG証券)
年明けに14.20円水準まで上昇していたトルコリラ/円も、14円を割ってしまいました。
(出所:IG証券)
トルコ中銀が、1月の政策会合で小幅な利上げを行うとの期待はありますが、利上げ余地は少ないのが現状です。
突然の通貨安ショックなどが起きない限り、今年(2021年)前半の利上げは1.00~1.50%が限界だと考えます。
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