■トルコ製造業PMI結果を受け、トルコリラが上昇
今週(2月1日~)は、トルコの1月の製造業PMIが発表されました。結果は54.4で、前月(12月)の50.8を大きく上回りました。トルコの製造業の回復を強く印象付ける結果でした。
製造業PMIの発表を受け、トルコリラは大きく上昇しています。
(出所:IG証券)
(出所:IG証券)
■実質実効為替レートでは、トルコリラは下げ過ぎ?
トルコリラの適正価格を知る上で、もっとも参考になる指標のひとつは、実質実効為替レートの推移です。この指標を使えば、トルコリラの相対的な実力を測ることができます。
つまり、米ドル/トルコリラやトルコリラ/円の為替レートだけではわからない総合的な判断ができるわけです。
トルコリラの場合、トルコの貿易にとって重要な国々の通貨とトルコリラのレートを、貿易額などのデータを使った相対的な重要度に沿ってウエイト付けします。
そして、最後に、それぞれの物価変動分を調整して実質実効為替レートを計算します。
トルコの貿易にとって重要な国の数を、トルコ中銀は36と決めています。これらの中にドはイツ、イタリア、米国、フランス、英国、スペイン、日本、オランダ、ベルギー、韓国などの先進国に加え、中国、ロシア、インド、タイ、イラン、サウジアラビア、インドネシア、エジプトなどの新興国もあります。
トルコの投資家は、米ドル/トルコリラ、日本の投資家はトルコリラ/円を見てトルコリラの動きを予想しようとしていますが、トルコ中銀は実質実効為替レートをもっとも気にします。そして、トルコ中銀は2003年を100として、毎月、実質実効為替レートの計算を行い、ウェブサイトで公表しています。
(出所:トルコ中銀)
その値が120を越えてくると、トルコリラが必要以上に上昇したと思って緩和路線に踏み切るし、130を越えると全力でトルコリラを下げようとします。一方で、実質実効為替レートが、70を下回るとトルコリラは下げ過ぎたと判断し、全力で金融引き締めをやって通貨を上げようとします。
実質実効為替レートは、2020年4月に70を割ったままずっと下がり続け、11月に60.45に達しました。つまり、トルコ中銀がここ数カ月、積極的に金融引き締め行っているのは偶然ではありません。
【参考記事】
●利上げと国債CDS下落でトルコリラは安定。米ドル預金を崩して消費に回す動きも!(1月6日、エミン・ユルマズ)
12月末時点の値が若干改善したものの、やはりまだ62.5でした。1月末の結果はまだ公表されていませんが、足元の上昇を考えると、おそらく70を越えてきているのではないかと予想しています。
(出所:トルコ中銀)
■トルコリラ投資家のリスクセンチメント改善につながった
今週(2月1日~)のトルコリラは、対米ドル、対円でともに大きく上昇しています。ドル/トルコリラは7.20リラを割って、トルコリラ/円は14円台後半まで上昇しました。
(出所:IG証券)
(出所:IG証券)
先週(1月25日~)の、IMF(国際通貨基金)によるトルコ経済の2021年度成長率予想引き上げに加え、トルコの製造業の回復が、トルコリラ投資家のリスクセンチメントの改善につながりました。
【参考記事】
●トルコ成長率予想の上方修正を受け、リラ堅調。背景にパンデミック終息期待など(1月27日、エミン・ユルマズ)
気になるのは、ドルインデックスが今週(2月1日~)に入ってから大きく上昇していることですが、これは米ドル/円が上昇するという意味でもありますので、トルコリラ/円のレートにほとんど影響を与えません。
(出所:IG証券)
株主:株式会社ダイヤモンド社(100%)
加入協会:一般社団法人日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)