■建国記念日にマンハッタン島サイズの新空港お披露目
10月29日(木)はトルコの建国記念日です。トルコ共和国は1923年に設立されていますので、今年(2018年)で95周年に当たります。
今年(2018年)の建国記念日には、もう1つ、大きなイベントがありました。
それは、イスタンブールの新空港のオープニングセレモニーです。新空港は、約1兆3000億円の建設費をかけて作られていて、エルドアン大統領のインフラプロジェクトのクラウンジュエリーとも呼ぶべきプロジェクトです。
新空港は最初の段階で9000万人、すべての施設の建設が完了し、フルオープンされた時に2億人の人が使えるようにデザインされていて、総面積は米国のニューヨーク州にあるマンハッタン島に等しい規模です。
トルコ政府は、イスタンブールを世界の主要なハブの1つにするという目標を掲げていて、その意味で、新しい空港の建設は国家プロジェクトともいえます。
しかし、新空港については、トルコ国内の世論が分かれていて、これまで、エルドアン大統領の支持者は、もちろん大いに支持してきましたが、野党支持者は、建設コストや建設の際の環境破壊を理由に、長きに渡り反対してきました。
また、空港建設労働者の労働条件が悪く、これまでにたくさんの労働者が怪我をしたり、死亡したりしたということも、度々批判にさらされました。さらに、最近では、空港の名前を巡って与党と野党が対立…。
既存の空港の名前は、イスタンブールアタチュルク空港なので、新しい空港にもアタチュルクをつけるべきだと野党が望んだのに対して、大統領の支持者は、むしろエルドアン大統領の名前をつけるべきだと反論したのです。
最終的には、シンプルにイスタンブール空港という名前にすることで、どちらにも配慮した形になりました。
■エルドアン政権の巨額インフラ投資が将来の財政を圧迫!?
エルドアン政権は、発足当初から巨大インフラプロジェクトを次々に打ち出しました。その中には、約2万キロに及ぶ高速道路、30の新空港、主要都市への地下鉄の導入、イスタンブール~アンカラ間の超高速電車、多数の大型吊り橋やトンネルなどが含まれます。
エルドアン政権の16年間で、建設プロジェクトに費やされる金額は、80兆円を超えると予想されています。トルコ共和国が建国以降に作った高速道路が、わずか6000キロだったことを考えると、エルドアン政権が、いかにインフラプロジェクトに力を入れてきたのかが理解できます。
エルドアン政権の16年間で建設プロジェクトに費やされる金額は80兆円を超えると予想されているという (C)Anadolu Agency/Getty Images
これらのインフラプロジェクトの多くは、公民が連携して公共サービスの提供を行うスキーム、つまり、PPP(パブリック・プライベート・パートナーシップ、公民連携)によって完成しています。
PPPは、国家の初期負担を軽くする意味ではいいやり方ですが、問題は、ほとんどのプロジェクトの将来の使用に関して、国が最低保証を与えていることです。つまり、毎年、最低これくらいの人が使用するというのを事前に決めていて、その数字に達しない場合、国が建設・運営側の民間企業に差額を支払います。
これらの最低保証は相当高く設定されていて、近年できた橋やトンネルは、毎年、大きな赤字を出しています。初期投資として国に負担が少ないものの、今後、20~30年間に渡ってトルコの国家財政を大きく圧迫するリスクがあります。
トルコリラは、トルコ中銀の政策会合以降…
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