■トルコの対外債務は大部分がドル建て。ドルの動きがカギ
TUIK(トルコ統計局)は、1月21日(木)に1月の消費者信頼感指数を発表しました。消費者信頼感指数は前月比で4%上昇し、80.1から83.3になりました。
指数全体は上昇したものの、指数を構成する項目のひとつである家庭の経済状況は3.6%減少し、63.7に後退しました。
家庭の経済状況は、2012年以来の低水準に陥っています。パンデミックによる経済活動の停滞は、家庭を直撃しているようです。
もうひとつ注目すべき重要なデータは、1月15日(金)にトルコ中銀が発表した11月の短期対外債務です。短期対外債務は、11月に前年比で9.5%上昇し、1346億ドルに増えています。
短期対外債務とは、返済期限が1年以内の債務のことを言い、トルコリラの動きに影響を与える重要なデータのひとつです。そして、トルコの対外債務の大部分は米ドル建てであることから、米ドルの動きがカギを握ります。
(出所:IG証券)
ドルインデックスは現在、90.2と低い位置にありますが、底打ちの傾向を見せ始めています。ドルインデックスが上昇すれば、トルコリラに限らず新興国通貨にとって大きな売り圧力となります。
(出所:IG証券)
■原油の動向によってトルコ中銀の金融政策が決まる
1月21日(木)に行われた今年(2021年)初の政策会合で、トルコ中銀は政策金利を据え置きました。
これは市場コンセンサスどおりでしたが、投資家は事前に行われたエルドアン大統領による利上げ反対演説を警戒していたので、政策金利の据え置きをポジティブにとらえました。
【参考記事】
●トルコ経済のジレンマ。利上げ反対だけどトルコリラ安も望まないエルドアン大統領(1月20日、エミン・ユルマズ)
トルコ中銀の今後の政策は、原油価格の動きによって決まると考えています。
ブレント原油価格は、1バレル当たり56ドルと高止まりしていますが、現在、生産調整を行っている原油生産国は徐々に調整を緩めていく予定なので、供給が増えて原油価格が下落すると予想しています。
(出所:IG証券)
原油価格の上昇は、トルコのインフレ上昇圧力の最大要因であり、トルコ中銀の政策にも大きな影響を与えます。原油価格が下落すれば、トルコリラの売り圧力が減る一方で、トルコ中銀による利上げの可能性も後退します。
【参考記事】
●ロックダウン緩和期待高まるトルコ。2021年前半の利上げ幅は1.00~1.50%が限界か(1月13日、エミン・ユルマズ)
これは、一種のトレードオフと考えた方がいいです。
しかし、いずれにせよ、トルコの経常赤字の最大要因である原油輸入コストが減ることはトルコ経済にとってプラスなので、中長期でトルコリラにとってポジティブです。
(出所:IG証券)
■IMFがトルコの成長率予想を5%から6%に引き上げ
今週(1月25日~)のトルコリラは、対米ドル・対円でともに上昇しています。米ドル/トルコリラは7.35リラ水準まで下がって、トルコリラ/円は14円を超えました。
(出所:IG証券)
(出所:IG証券)
IMF(国際通貨基金)が、1月25日(月)にトルコの今年(2021年)の経済成長率予想を5%から6%に引き上げたことが好感されました。
成長率予想を上方修正した背景には、ワクチン接種の開始によるパンデミックの終息期待と、EU(欧州連合)諸国を中心にトルコの貿易相手国の景気回復があります。
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