■CPI、PPIは3カ月連続で市場予想を上回る
TUIK(トルコ統計局)は、2月3日(水)に1月のCPI(消費者物価指数)を発表しました。結果は前年比で14.97%、前月比で1.68%上昇となり、市場予想を超えました。PPI(生産者物価指数)も勢いよく上昇していて、前年比で26.16%、前月比で2.66%の上昇となっています。
CPIとPPIは、3カ月連続で市場予想を上回る形で出ています。
(出所:各種データよりザイFX!編集部が作成)
(出所:各種データよりザイFX!編集部が作成)
1月に値段がもっとも上がったのは、26.77%の上昇で「みかん」となりましたが、2位は25.5%上昇の高速道路料金でした。
みかんのような農作物の値上げは仕方ないですが、高速道路料金など国で価格を決められる公益サービスの値上げは気になるところです。実はここに、近年のトルコ経済の苦戦の要因が隠れています。
■エルドアン政権のインフラプロジェクトは総額約80兆円
エルドアン政権は2003年に発足して以来、大型のインフラプロジェクトを次々に打ち出しました。
これらの中には、2万キロに及ぶ高速道路と30の新空港の建設、主要都市への地下鉄の導入、イスタンブール・アンカラ間の超高速鉄道の建設、多数の大型吊り橋やトンネル、病院や学校の建設が含まれます。
【参考記事】
●なぜ、トルコリラは上昇しているのか…!? 原油価格とトルコリラは逆相関関係にある(2018年10月31日、エミン・ユルマズ)
エルドアン政権がインフラプロジェクトに費やした金額は、約80兆円と予想されています。トルコ共和国は1923年に建国されていますが、2003年までに建設された高速道路は合計で6000キロでした。つまり、トルコの直近の17年間で最初の80年間で建設された道路の3倍が新たに建設されたことになります。
エルドアン政権の17年間で建設プロジェクトに費やした金額は約80兆円と予想されているという (C)Anadolu Agency/Getty Images
■トルコ政府、インフラプロジェクトの最低保証金に苦しむ
トルコのような地下資源を持っておらず、常に経常赤字を出している国にとって、これらのインフラプロジェクトを実現させるための資金調達は大きなハードルでした。エルドアン政権は、発足直後に民営化政策を実施し、国営企業のほとんどを急速に売却しました。
最初はこの資金でなんとかなりましたが、途中から民営化する企業が少なくなったので、今度は官民パートナーシップ(Public-Private Partnership、PPP)方式を採用するようになりました。簡単に説明しますと、たとえば、高速道路の建設を請け負う企業に費用を先に支払わず、高速道路の使用権を期限付きで譲渡するという方式です。
当然ながら、これはゼネコンにとってリスクが高いので1日の最低の通行量を定め、それをトルコ政府が保証するというやり方にしました。このやり方も最初は成功しましたが、途中からトルコ経済の減速に伴ってゼネコンがもっと大きな保証を求め、政府はそれに応じるようになりました。
これらのインフラプロジェクトの最低保証金額が、現在、トルコ政府の赤字予算の大きな要因となっていて、トルコリラを圧迫しています。エルドアン政権が交代したとしても、トルコは太っ腹に設定されたこれらの保証金を、長年ゼネコンに払い続けなければならないのです。
(出所:IG証券)
■利益確定と政策会合への警戒感からトルコリラは失速
トルコリラは先週(2月1日~)、対米ドル・対円ともに大きく上昇しましたが、今週(2月8日~)に入ってから売られています。
米ドル/トルコリラは7.00リラの大台を割れず、トルコリラ/円も15.00円水準できれいに跳ね返されました。
(出所:IG証券)
(出所:IG証券)
トルコリラは年初から勢いよく上がっていたので、投資家の利益確定が入ったことと、来週(2月15日~)行われるトルコ中銀の政策会合への警戒感がトルコリラ失速の要因だと考えます。
株主:株式会社ダイヤモンド社(100%)
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