■トルコの2020年通期のGDP成長率はプラス1.8%
TUIK(トルコ統計局)は今週(3月1日~)、2020年第4四半期のGDP成長率を発表しました。第4四半期は、前年比でプラス5.9%の成長となり、2020年通期のGDP成長率はプラス1.8%となりました。
(出所:トルコ統計局)
家庭の消費は3.2%上昇で、GDPに占める比率も56.4%に達し、トルコ経済の成長ドライバーとなっています。また、建設やサービス業の縮小に対して、金融・保険と情報通信セクターの伸びも目立っています。
TUIKのGDP統計の信ぴょう性を問う声もある一方で、TUIKの数字が正しければ、トルコは2020年をプラス成長で終えた数少ない国のひとつです。
OECD(経済協力開発機構)諸国の中では、中国、インドネシア、トルコだけが2020年をプラス成長で終えました。一方で、トルコリラベースでGDPが増えたのに対して、トルコリラが下落したため、米ドル建てではGDPが縮小しています。
特に1人当たりのGDPは8599ドルになり、ミドルインカムの節目とされる1万ドルから大きく後退しています。これはトルコ国民の購買力を低下させ、インフレ圧力を上昇させている要因のひとつです。
■貿易収支は前年同月比で11%増も、赤字は変わらず
今週(3月1日~)発表されたもうひとつの重要な指標は、2月の貿易収支でした。2月にトルコの輸出は前月比で9.6%、輸入は9.8%拡大しました。
2月の貿易収支は33.6億ドルとなり、前年同月比で11%増となっています。景気の回復に伴って輸入・輸出ともに拡大していますが、依然として輸入の部分が大きく、貿易赤字という構図が変わりません。
トルコの輸出相手国のトップ3は、ドイツ、英国、米国であるのに対して、輸入相手国のトップ3は、中国、ロシア、ドイツとなりました。
■新興国通貨はボラティリティ高い相場が継続か
トルコリラですが、先週(2月22日~)後半に対米ドル・対円で大きく下がりましたが、今週(3月1日~)に入ってから落ち着いた動きとなっています。
米ドル/トルコリラは、先週(2月22日~)金曜日に、7.50リラの手前まで上昇しましたが、今週(3月1日~)に入ってから、7.30リラ水準まで下落しています。
(出所:TradingView)
トルコリラ/円も、いったん14.20円水準に下がってから14.60円に戻っています。
(出所:TradingView)
先週(2月22日~)の下げは、トルコリラ特有の事件というより、米長期金利の上昇を原因とするグローバル市場全体のリスクオフによるものでした。
(出所:TradingView)
昨年(2020年)11月以降、ずっと上昇していた新興国通貨から資金が急速に流出してしまいました。
今週(3月1日~)に入ってから状況は落ち着いていますが、米長期金利の上昇が完全に止まったわけではなく、FRB(米連邦準備制度理事会)の対応を注意深く見守る投資家が多いです。
(※編集部注:「イールドカーブコントロール」とは、金融市場にて短期金利と長期金利の操作を行ない調節すること)
FRBはイールドカーブコントロール(YCC)(※)を開始するのではないかとの見方が強くなっています。個人的にも長期金利の上昇が止まらなければ、YCCに踏み切る可能性が高いと考えます。
トルコ経済にとってはポジティブニュースフローが続いていますが、新興国通貨全体にとっては、しばらくボラティリティが高い相場が続くと考えます。
【参考記事】
●コモディティ価格上昇がトルコ経済の重しに。ワクチン相場は息切れ。リラ上昇も一服か(2月24日、エミン・ユルマズ)
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