■米国、英国、トルコ、日本で中央銀行会合
先週(3月8日~)、ECB(欧州中央銀行)は債券の購入ペースを加速させる方針を発表しました。
債券の買い入れ量を増やす=金利上昇を抑制する、ということですね。
主要国が金融緩和や財政出動で資金をじゃぶじゃぶにした結果、株価は上昇しましたが、長期債を中心に金利急騰リスクが意識されだしています。
RBA(オーストラリア準備銀行[豪州の中央銀行])は債券買い入れを拡大させて、金利上昇を抑制する姿勢を見せましたが、ECBも続いた格好です。
今週(3月15日~)、17日(水)深夜にFOMC(米連邦公開市場委員会)、19日(金)には日銀の金融政策が発表されます。やはり焦点は金利ですね。
FOMCでは、長期債の買い(あるいは売り)と短期債の売り(あるいは買い)を同時に行う公開市場操作である「ツイストオペ」導入のウワサも出ています。
米長期金利は、まだ2%にも満たない水準。この段階でのツイストオペ導入はないでしょう。
(出所:TradingView)
■3月17日FOMCの注目は「2023年」と「SLR」
上がっていると言っても10年債利回りは、まだ1.6%。2018年10月には3.2%あったことを思えば、まだ低水準ですよね。
パウエルさんの記者会見も今までの発言を踏襲するでしょうし、注目はドットチャートでしょうか。
ゼロ金利が2023年まで継続するとの見通しが大半ですが、それより前の利上げを予想するメンバーが増えていれば、早期テーパリングの思惑が高まり、市場に動揺が走りそうです。
ドットチャートとともに注目されるのが、「SLR(補完的レバレッジ比率)」。
新型コロナ対策として、FRB(米連邦準備制度理事会)が導入した流動性を高めるための措置ですが、期限が今月末。
今回のFOMCで継続が表明されるのでは、との期待が一部銀行などから高まっています。
もし継続しない場合は、米国債売却などの動きが出て金利上昇のリスクが高まります。
ここで撤回すれば、市場を動揺させることになりますね。考えにくいシナリオですが……。
そして、3月19日(金)が大大大注目の日銀の金融政策発表です。
■大大大注目の日銀の金融政策。金利変動幅を拡大するか
今回は、金融緩和の「点検」結果が公表されます。
焦点は、長期金利の変動幅±0.2%を±0.3%程度に拡大させるかどうか。
黒田日銀総裁は3月5日(金)、「必要があるとは考えていない」と否定しました。
ところが、3月8日(月)、雨宮日銀副総裁は「金利はもっと上下に動いてもいいと思っている」と正反対の発言をしています。
正副総裁は普通、連携をとって発言しますから、何らかの思惑があるのかもしれませんが、今回は市場を混乱させるばかりです。
黒田日銀総裁は3月5日(金)、長期金利の変動幅拡大について「必要があるとは考えていない」と否定した。ところが、雨宮日銀副総裁は3月8日(月)、「金利はもっと上下に動いてもいいと思っている」と正反対の発言をした。正副総裁は普通、連携をとって発言するため、何らかの思惑があるのかもしれないが、今回は市場を混乱させるばかりだと西原氏は指摘 (C)Bloomberg/Getty Images
もし変動幅を拡大させると、円高要因ですね。
そうなりますし、今日(3月15日)、銀行株が買われているのは、日銀の変動幅拡大を織り込んでいるのでしょう。
もうひとつ、今回報道されているのが「ETF(上場投資信託)購入目標撤廃」。
こうした見出しだと動揺しますが、ETFの買い入れをやめるわけではなく、柔軟に買っていこうということですから、こちらは大きな影響はなさそう。
今の株価であれば、無理に買う必要もないでしょうからね。
■中長期投資家参入の米ドル/円、ゲームチェンジが濃厚に
米ドル/円は先週、109円台へと上がってきました。
先週金曜日(3月12日)、マクロ系やリアルマネー、アジアの年金など中長期のプレイヤーが108.50円あたりから買っていたようです。
それまでは、ヘッジファンドなど短期筋が買っていたのですが、主体が変わってきています。
FOMCと日銀の金融政策発表という2大イベントを目前に控え、普通ならイベント通過を待って動く場面なのに、買ってきたということは、今週のイベントで円高になることがあっても、投げが出て売られるよりは、押し目として買われるイメージです。
(出所:TradingView)
ゲームチェンジが、いよいよ鮮明になってきた印象ですね。
3月18日(木)にはBOE(イングランド銀行[英国の中央銀行])、そして、トルコの金融政策も発表されます。
ブルームバーグのエコノミスト調査によると、トルコは1%の利上げに踏み切る見通し。
今週の戦略は、どう考えますか?
【参考記事】
●トルコCPI上昇と世界的なインフレ期待でリラ下落。3月政策会合での利上げは必須!(3月10日、エミン・ユルマズ)
●ゲームチェンジとなった米ドル/円を買い! 「羅針盤」が示す米ドルの先行きとは?(3月8日、西原宏一&大橋ひろこ)
引き続き、米ドル/円の押し目買いでいいのでしょう。
菅政権では、円高阻止の姿勢が鮮明になっており、中長期のプレイヤーも目線を変えてきました。
ゲームチェンジとなった可能性が高まっています。
(出所:TradingView)
(構成/ミドルマン・高城泰)
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