■経済再開期待VSテーパリング観測
新型コロナウイルスの新規感染者数が、世界的に減ってきました。10月以来の低水準です。
インドでは3億人が感染済みと推定され、集団免疫を獲得した可能性も報道されています。
世界最速でワクチン接種が進んでいるイスラエルでは、感染予防の有効率が89.4%と高い数字が出ています。
あとはワクチンをどれだけ早く流通させられるか、ですね。
経済活動が本格的に再開されるのなら、現状の株価が正当化される、との見方もありますね。
それを見越した買いが入っているのでしょう。
その一方で、「意外とテーパリングは早いのでは」とする弱気派もいます。
先週(2月15日~)発表された1月の米小売売上高も7カ月ぶりの強い数字でしたし、米鉱工業生産も4カ月連続の増加。
強い経済指標が続くと、テーパリング観測も高まりますし、経済再開期待との綱引きになりそうですね。
■2兆ドル大型経済パッケージを発表へ
米10年債利回りも、1.39%まで上がってきました。
イエレン米財務長官は、“Go Big”、“Act Big”と財政刺激に積極的ですから、債券は売られやすいのでしょう。
繰り返しになりますが、米金利上昇で株が崩れるとしたらスピードが早過ぎるとき。現状のスピードでは問題ないでしょう。
【参考記事】
●コロナ対策の成否で通貨に明暗。英ポンド上昇の理由は、ワクチン代金の支払いかも(2月8日、西原宏一&大橋ひろこ)
(出所:TradingView)
テーパリングについては、いかがですか。
パウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長は、今週2月24日(水)に議会証言で発言します。
内心では気にしているでしょうが、この段階でテーパリングをほのめかすことはないと思います。
株に対して弱気になる必要は、まだなさそうですよね。
バイデン米大統領は、1.9兆ドル経済対策の次なる政策として、インフラ支出を核とした4年で2兆ドル規模の大型経済パッケージを3月にも公表するようです。
銅価格が急伸しているのも、その影響でしょう。
(出所:TradingView)
■イーロン・マスク氏、金とビットコイン同時保有の思惑は
ゴールドは、コロナショック安値と史上最高値で引いたフィボナッチの50%でピタっと止められています。
(出所:TradingView)
デジタルゴールドともされるビットコインが6万ドルに接近しているのに比べると、さえないですね。
(リアルタイムチャートはこちら → 暗号資産(仮想通貨)チャート&レート:ビットコイン/米ドル 週足)
テスラCEOのイーロン・マスク氏は、ビットコインだけでなくゴールドも投資対象にするとしていました。
最近では、フィアット(法定通貨)に対するヘッジとして、ボラティリティの大きいビットコインと同時に、ゴールドのロングを推奨する動きもあるようです。
こうした動きにも注目ですね。
■強いのは豪ドル。ユーロ/円もおもしろいチャートに
財政と金融の両面でジャブジャブになっている米ドルは下がるのでしょうが、別世界なのが米ドル/円。
底堅いのは、菅首相が為替をやけに気にしている影響もあるのでしょう。
【参考記事】
●米ドル/円は、今週も押し目買いでよさそう。103.20円水準から下がなさそうなワケは?(2月1日、西原宏一&大橋ひろこ)
セブン&アイ・ホールディングスは昨夏(2020年夏)、米コンビニ大手の買収を発表しました。
当時の報道を見ると、2.2兆円と買収額は巨額で、「2021年第1四半期に完了予定」となっています。
このフローが第1四半期の今、出ているのかもしれませんね。
ただ、やはり強いのは豪ドル。
全豪オープン決勝が観客を入れて開催されたように、コロナ抑え込みに成功しています。
2月の対米ドル上昇率を見ても、主要通貨中トップです。
※ザイFX!編集部が作成
豪10年債利回りも、1.6%台まで上がってきました。ニュージーランド10年債利回りも1.6%台です。
(出所:TradingView)
米金利が上がれば、同時に豪州やニュージーランドの金利も上昇しますし、円金利は底ばいのまま。
金利面から見ても、豪ドル/円のパフォーマンスがいい、ということになります。
【参考記事】
●プラチナ高騰で南アフリカランドが上昇! ドル紙幣は新興国やオセアニア通貨へ流れる(2月15日、西原宏一&大橋ひろこ)
クロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)ではユーロ/円も注目です。
2008年高値から引いた、月足レベルのトレンドラインを上抜ける寸前まで上昇してきました。
(出所:TradingView)
ユーロが上がれば、ECB(欧州中央銀行)高官から牽制発言が出るため、レンジだろうと思いますが、上抜ければおもしろいチャートになっていることはたしかですね。
■引き続き、豪ドル/円を押し目買い
2月24日(水)、ニュージーランドでは政策金利が発表されます。
今回は据え置きの見通し。
以前はマイナス金利導入の話もありましたが、今の経済状態では必要ないでしょう。
昨年(2020年)11月の会合では「政策金利について少なくとも3月末までは維持する」としていました。
次の次の会合は4月ですから、今回、新たなガイダンスを示す可能性もありそうです。
いずれにせよ、今週も豪ドル/円の押し目買いでいいのでしょう。
2013年4月高値とコロナショック安値で引いたフィボナッチの50%も上抜けており、上値余地は拡大しています。
【参考記事】
●プラチナ高騰で南アフリカランドが上昇! ドル紙幣は新興国やオセアニア通貨へ流れる(2月15日、西原宏一&大橋ひろこ)
(出所:TradingView)
(構成/ミドルマン・高城泰)
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