■4月FOMC議事録で、テーパリングに言及
FRB(米連邦準備制度理事会)が、4月のFOMC(米連邦公開市場委員会)議事録内で、ついに「テーパリング(※)」に言及しました。
(※編集部注:「テーパリング」とは、量的緩和政策により、進められてきた資産買い取りを徐々に減少し、最終的に購入額をゼロにしていこうとすること)
“A number of participants suggested that if the economy continued to make rapid progress toward the Committee's goals, it might be appropriate at some point in upcoming meetings to begin discussing a plan for adjusting the pace of asset purchases.”
「何人かの参加者から、経済の急回復が続くなら、今後の会合のどこかで購入ペースを調整する計画を議論することが適切との意見が出ました」
“a number of” という表現が何人なのか? ここがポイントになります。日経新聞(2021年5月21日夕刊)は「多くの参加者が」と訳していますが、本当に多くの参加者が言ったとすれば、FRB主流派の中にも賛同者がいるというふうに解釈できますが、その後の推移を見ると、そんなことはなさそうです。
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■FOMC議事録を受けて、マーケットは2派にわかれる
このFOMC議事録を受けて、マーケットは2派にわかれています。
テーパリングに言及した以上、今後、金融環境は引き締まっていくことになります。一部の投機的な株や暗号資産といったリスクの高い資産への投資は控えめにすべきという意見です。
しかしもう一方は、こう考えています。現在の米国経済の状況を考えると、今、議論されているテーパリングのスケジュールではまったく遅すぎる。インフレは避けられないのだから、リスク資産への投資は続けるべきという意見です。
以前であれば、前者の意見が正しいということになるのでしょうが、とてつもない金額を給付金、失業手当に投入し、成長率は7%を超え、GDPギャップはプラスです。
【参考記事】
●バイデン経済対策は1.9兆ドル規模で実現へ。コモディティ価格上昇が豪ドルをサポート(3月3日、志摩力男)
しかも、今後も政府が大規模な公共投資を続けます。こうした状況では、現状の「今年(2021年)の夏にテーパリング議論開始、来年(2022年)初めにテーパリング開始し1年かけて終了、そして再来年(2023年)後半から利上げ」というペースでは、景気の過熱を抑えられないかもしれません。
【参考記事】
●米国がテーパリングするなら、いつ頃? バイデン増税が始まれば、利上げは先か…(4月28日、志摩力男)
このゆっくりとした引き締めペースは、前回のリーマンショックのときの教訓からくるものです。しかし、リーマンショックの時と比較にならないほど、今の米政府の経済支援は巨額で、回復ペースも速く、録画したビデオを3倍速で見ている感じです。FRBのていねいな引き締めプランは、ていねいすぎるのではないでしょうか。
すなわち、あまりにもインフレに対して緩い。
■ニュージーランドルロングに乗り換えるプレーヤーも出るか
他の中銀は、躊躇なく、政策転換に移り始めています。
BOC(カナダ銀行[カナダの中央銀行])は、4月末に資産買い入れを減額しましたが、その後、カナダドルは上昇を続け、米ドル/カナダドルは、1.2500カナダドル前後から1.2000カナダドル近辺へとカナダドル高が進みました。

(出所:IG証券)
5月26日(水)に行われたRBNZ(ニュージーランド準備銀行[ニュージーランドの中央銀行])の金融政策委員会では、大きな政策変更はありませんでしたが、声明文中の「必要であればさらなる金融緩和」という表現を削除、ニュージーランドドル/米ドルは、0.7235ドル前後から0.7310ドル前後へと急騰しました。
【参考記事】
●テーパリング開始決定で、カナダドル急騰!米FRBも、早ければ夏ごろに示唆する可能性(4月22日、志摩力男)

(出所:IG証券)
カナダドルがすでに4%ぐらい動いた後なので、カナダドルロングからニュージーランドドルロングに乗り換えるプレーヤーも出てくるでしょう。
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■インフレ容認する通貨は売られる流れが継続へ
今後、世界中でワクチン接種が進みます。変異ウイルスは懸念材料ですが、おそらく、経済状況は良くなっていくでしょう。
各国中銀の会合があるたびに、政策の方向性が上方修正される展開になると思われます。そうなると、政策会合前からその通貨が買われるという流れができるかもしれません。
今後のスケジュールを見てみると、
6月1日(火)豪中銀
6月9日(水)BOC
6月10日(木)ECB(欧州中央銀行)
6月16日(水)米FOMC
個人的には、6月10日(木)のECB理事会が気になります。金融緩和を緩めないとラガルド総裁は言っていますが、あからさまに商品価格が上がり、インフレリスクが高まっている状況では、ドイツやその周辺国のインフレ懸念は相当高まっているでしょう。
インフレを容認する通貨は売られる。この流れが続きそうな気がします。
【参考記事】
・FRBのインフレ容認は米ドル安容認と同義。来月の米CPIが強ければ、米ドルはどう動く?(5月19日、志摩力男)
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