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西原宏一の「ヘッジファンドの思惑」

NZ中銀の8月利上げの可能性高まる。
ニュージーランドドル/米ドルは0.7500ドルに
向けて上値余地拡大へ

2021年07月15日(木)17:20公開 (2021年07月15日(木)17:20更新)
西原宏一

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米6月CPIは、2008年8月以来の高い伸びに

 みなさん、こんにちは。

 今週(7月12日~)の米ドル/円は、米金利の乱高下の影響で方向性なく神経質に推移。

 まず、7月13日(火)の米国市場では、米6月CPI(消費者物価指数)が前月比で0.9%急上昇し、2008年8月以来の高い伸びに。

 この伸び率は、ブルームバーグがまとめたエコノミスト予想のすべてを上回っています。コアCPIも前月比で0.9%上昇しました。

 CPIの伸びの3割余りを中古車が占めたほか、ホテル宿泊やレンタカー、衣料品、航空運賃など、経済活動再開の広がりに関連した分野での価格持ち直しも、CPIの伸びに反映されています。

 この結果を受けて、マーケットでは素直に金利が上昇。

 先週(7月5日~)、9日(金)、米10年債利回りは、一時1.2479%まで急落していたのですが、このCPIの結果を受け、1.42%に反発しました。

米長期金利 日足
米長期金利 日足

(出所:TradingView

 呼応して、米国株は反落。米ドル/円は上昇しました。

 米ドル/円も節目の110.50円を上抜け、一時110.70円まで急反発

米ドル/円 日足
米ドル/円 日足

(出所:TradingView

 しかし、米国の金融当局は極めて緩和的な金融政策を維持するとコミットメントしていたため、今回の金利急騰を沈静化させるようなコメントをするだろうというのが、マーケットのセンチメントになっていました。

 そのため、今回のサプライズなCPIの数字の発表にも関わらず、その数字ほどにはマーケットが反応しなかったともいえます。

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パウエルFRB議長が火消しに回り、米金利は反落

 そして、7月14日(水)のマーケットでは、FRB(米連邦準備制度理事会)のパウエル議長が実際に「火消し」にまわり、米金利は反落しました。

パウエルFRB議長は米下院金融サービス委員会での証言で「金融緩和政策を変更する前には景気回復が一段と進む必要がある」「回復の道のりは長い」と述べ、金融引き締めに慎重な姿勢を示しました。

(出所:Bloomberg)

 これにより、一気に1.42%まで急騰していた米10年債利回りは、あっさり1.33%まで下落

米長期金利 日足
米長期金利 日足

(出所:TradingView

 この米金利が上がらない状況に関しては、前回のコラムで下記の2つの要因が構築していることをご紹介させていただいていますので、ご参考にしてください

(1)米国のインフレはコントローラブルである

(2)金利を潰しにいく

【参考記事】
なぜ、米10年債利回りは上昇しないのか? 米金利低下時の、米ドル/円上昇は難しい(7月8日、西原宏一)

 呼応して、米ドル/円も再び110.00円を割り込み、本稿執筆時点では109.85円レベルで推移。

米ドル/円 日足
米ドル/円 日足

(出所:TradingView

 このように米国では、経済指標がインフレの加速を示しているのですが、長期金利は上がっていません。

ニュージーランドでは、金融緩和縮小が加速

 一方、米国のインフレ輸入を警戒し、すでに金融緩和縮小に動き出している国があります。

 それは、ニュージーランド!

 前述したように、インフレ懸念はあるものの、パウエル議長の火消しにより、米長期金利は上げ渋り。

 一方、ニュージーランドでは、金融緩和縮小が加速

 7月14日(水)、RBNZ(ニュージーランド準備銀行[ニュージーランドの中央銀行])は、LSAP(大規模資産購入プログラム)として、最大1000億ニュージーランドドル(約7兆7500億円)規模で実施してきたQE(量的緩和策)を、今月(7月)23日(金)までに停止すると発表しました。ついに、金融緩和策の縮小に動くことになります

 この発表を受けて、金利市場では、11月までのRBNZの0.25%の利上げの可能性を完全に織り込んだ模様。さらには、8月の利上げ予想確率も急上昇。

 本稿執筆時点では、RBNZによる8月の利上げ確率は70%まで上がってきています11月は100%織り込み済み

 メルマガ「トレード戦略指令!」でご紹介させていただきましたが、ニュージーランドでは、ローカルの銀行2行がすでに11月の利上げを予想しています。

ザイFX!トレード戦略指令!
2021年7月6日(火) 15:18の配信メール


一方、今年11月のRBNZの利上げを予想したのが、ASBとBNZの2行。
(1)RBNZの政策金利引き上げ、2021年11月になると予想-ASB (Auckland Savings Bank)
(2)RBNZのオフィシャルキャッシュレートの引き上げ、21年11月を見込む-BNZ(Bank of New Zealand)

先程、話したトレーダーはバイデン政権は中国からの調達を変更する予定ですので、それもインフレにつながるとのこと。

ニュージーランドは米国からのインフレ輸入を嫌い、利上げが前倒しに。

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8月利上げをさらに織り込めば、ニュージーランドドルは続伸へ

 ニュージーランドドル/米ドルは、一時0.7045ドルまで急騰

ニュージーランドドル/米ドル 日足
ニュージーランドドル/米ドル 日足

(出所:TradingView

 これまで、ニュージーランドドルは、何度も金融緩和縮小の報道がなされ上昇するのですが、どうしも0.71ドル台を回復できず、何度も反落するという流れが繰り返されていました。

 ただ、0.6900ドルが極めて強烈なサポートとして機能しており、再び0.70ドル台を回復しています。

 仮にマーケットが11月ではなく、来月(8月)の利上げ予測をさらに織り込んでいけば、過去数カ月レジスタンスであった0.7100レベルを上抜き、続伸する可能性が高まっています

ニュージーランドドル/米ドル 日足
ニュージーランドドル/米ドル 日足

(出所:TradingView

 ニュージーランドの10年債利回りも再び1.75%に上昇しており、こちらも2.00%に向けて再び上昇中。

 一方、ニュージーランドよりインフレが高まっているといわれている米国の長期金利の上値が重く、反落しているため、両国の金利差が拡大しており、こちらもニュージーランドドルの上昇要因のひとつ。

11月の予定を前倒し、8月利上げの公算も高まり、0.7500ドルに向けて上値余地が拡大しているニュージーランドドルの動向に注目です。


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