■米ドル高が進む中、ユーロ/米ドルは1.18ドル半ばへ下落
みなさん、こんにちは。
本日(7月1日)から新しい月に入ります。
月が変わるとマーケットの景色がガラッと変わる事も珍しくないため、月初の動きには要注意です。
たとえば、今年(2021年)3月に急騰した米ドル/円ですが、4月に入ると急激にその勢いを失ったことも記憶に新しいところ。
【参考記事】
●早晩、ドル/円の調整は終わる可能性高い。108円台ミドルレベルは、買いの好機!(4月15日、西原宏一)
直近の為替相場では、じわじわと米ドル高が進んでいます。
このところ、当コラムでは一貫してユーロ/米ドルに対して弱気なのですが、先週(6月21日~)のユーロ/米ドルも値を下げており、本稿執筆時点では1.1850ドルレベルまで下落しています。
(出所:TradingView)
このユーロ/米ドル下落の要因は、過去のコラムで何度かご紹介させていただいているとおりです。
【参考記事】
●パウエル議長発言で、米ドル下落も限定的。ユーロ/ドルは、1.1600ドルへの下落過程続く(6月24日、西原宏一)
●FOMCは2023年末までに2回の利上げ示唆。ユーロ/米ドルは、1.1600ドルへの下落過程に(6月17日、西原宏一)
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■材木相場は急落。ウッドショックは一時的な現象だった?
一方、筆者は6月に入ってさまざまな金融商品で調整が入り始め、それが加速してきていることに注目しています。
その金融商品はまず、材木相場です。以下は、シカゴ材木先物の日足チャートです。
(出所:IG証券)
5月中旬までは「ウッドショック」といわれ、暴騰していた材木相場ですが、一気に急落。一時、1711ドルまで急騰していた材木相場ですが、1000ドルを割り込み、6月30日(水)には、705ドルまで暴落しています。
今年(2021年)春先の材木相場の暴騰は「ウッドショック」といわれ、世界を震撼させたわけですが、材木先物市場では、すでに年初の価格を割り込み、高値からは半値以下となっており、その価値を劣化させています。
【参考記事】
●材木相場、暗号資産が調整局面入り…。株の下落誘引なら、リスクオフ要警戒!(5月20日、西原宏一)
●次にテーパリングに動くのは米国なのか?材木相場続伸で、カナダドル/円は95円目標(5月13日、西原宏一)
●テーパリング着手で上昇のカナダドルは、材木相場の急騰で、さらに買い妙味アリ?(5月6日、西原宏一)
この材木相場の価格の乱高下をみていると「ウッドショック」とは一時的な現象だったのかと思わせるほどの暴落です。
この材木相場の急落により、カナダドルも一転して下落しています。
BOC(カナダ銀行[カナダの中央銀行])がテーパリング(※)をしていたので、カナダドルは暴落は避けられているものの、マーケットのコンセンサスであった「中央銀行が金融引き締めを示唆した通貨は買われる」というコンセンサスが崩れています。
(※編集部注:「テーパリング」とは、量的緩和政策により、進められてきた資産買い取りを徐々に減少し、最終的に購入額をゼロにしていこうとすること)
つまりカナダドルにおいては、前述の中央銀行がテーパリングに踏み切ることよりも、商品市場の活況が崩れたことのほうが大きいわけです。
■ビットコインは、今年の高値からおよそ50%急落
そして、材木相場に加え、価値が半分になったもうひとつの金融商品があります。
それは、ビットコインです。
5月13日(木)に、テスラ創業者で世界2位の富豪であるイーロン・マスク氏がビットコインによる支払い受け入れを停止したことを明らかにし、ビットコインは調整を開始。
過去のコラムでも、ビットコインの調整の可能性を指摘させていただいていますが、その時点ではまだ暴落はしていませんでした。
【参考記事】
●材木相場、暗号資産が調整局面入り…。株の下落誘引なら、リスクオフ要警戒!(5月20日、西原宏一)
しかし、6月のビットコインは、材木相場の暴落と歩調を合わせるように大きくその価値を下げており一時、360万円レベルまで下落しました。
今年(2021年)のビットコイン/円の高値は700万円レベルなので、高値からその価値を、およそ50%失ったことになります。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ビットコイン/円 週足)
これは、材木相場と同様の動きです。
■マーケットへの負荷により、米ドル高傾斜へ
こうした、材木相場や暗号資産の混乱が、直接、株や為替に影響があるわけではないのですが、暗号資産や商品での損失補填のため、他の金融プロダクツで利益確定をする動きになりがち。
特に暗号資産は、世界的なロックダウン(都市封鎖)によるカネ余りと相まって資金が暗号資産に過剰に流れていたこともあり、その調整が他の金融市場へ与える影響が懸念されています。
マーケットにこのような負荷がかかると、それはリスクオフ、つまり米ドル高へと傾斜します。
確かに、6月入ってのドルインデックスは反発しています。
(出所:TradingView)
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■金の下落に合わせて、豪ドル/米ドルの下落も鮮明に
そして今回は、豪ドル/米ドルを取り上げてみます。
前述したように、デジタルゴールドとも称されるビットコインは高値から半分に値を落としていますが、先月(6月)は金(ゴールド)も大きく値を下げています。以下は金の日足チャートです。
(出所:TradingView)
金は6月1日(火)に1916ドルと年初来高値付近まで反発していましたが、為替市場が米ドル高に推移する中、急速に値を下げ、一時1750ドルまで急落しています。
金の下落は、豪ドル/米ドルにとってのネガティブ要因。
以下は、豪ドル/米ドルの日足チャートです。
(出所:TradingView)
豪ドル/米ドルは、今年(2021年)の高値である、0.8007(2月25日)ドルに到達して以来、じり安の展開。
繰り返しになりますが、RBA(オーストラリア準備銀行[豪州の中央銀行])のガイ副総裁が、豪ドル/米ドルの0.8000ドルをマーケットに意識させたのも、0.8000ドルを重くしている要因のひとつになっています。
【参考記事】
●豪中銀、豪ドル/米ドルの0.80ドルを意識か。上昇一服。高値を追わず、押し目待ち!(3月4日、西原宏一)
■豪ドル/米ドルは、0.7000ドルまで下値余地拡大へ
そして、豪ドル/米ドルは、6月21日(月)の0.7476ドルを安値に、一時、200日移動平均線を越えるまで反発。
しかし、ユーロ/米ドルと金の下落に歩調を合わせるかのように、再び200日移動平均線(0.7563ドル)を割り込むと、豪ドル/米ドルは再び0.7500ドルを割り込んで値を崩しています。0.7500ドルは、豪ドル/米ドルの心理的節目となっており、重要なサポートですが、ここをクリアに割り込むと、次は0.7000ドル割れがみえてきます。
5月に、私の友人のオーストラリアのファンドのエコノミストが中国経済の減速懸念を指摘していることをメルマガ「トレード戦略指令!」でご紹介させていただいていますが、銅が軟調に推移していることもあり、中国経済の減速懸念が徐々に拡大。
豪ドルにとって最重要プロダクトである鉄鉱石は上値が重いながらも依然として、212ドルの高値で推移しているため、豪ドル/米ドルの下落も緩やかですが、仮に材木相場のように鉄鉱石の下落が鮮明になれば、豪ドルの下落も加速すると想定しています。
材木相場、ビットコインは高値から、およそ半値に価値が喪失…。金の下落も徐々に鮮明化し、0.7000ドルへ下値余地が拡大している豪ドル/米ドルの動向に注目です。
(出所:TradingView)
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