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中国当局が社会主義的な締付けを強化。
中国株・香港株は急落するも、2015年
チャイナショックとの大きな違いとは……!?

2021年07月28日(水)18:47公開 (2021年07月28日(水)18:47更新)
志摩力男

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このところ、中国政府の動きが慌ただしい

 このところの、中国政府の動きが急だ。

 中国配車サービス最大手、滴滴出行(DIDI)がニューヨーク証券取引所に上場したその直後、中国当局は「個人データの収集と使用の両方において重大な違反を犯した」としてアプリ配信を中止させました。

 上場した日に18ドルに達した滴滴出行の株価は8ドルまで下がり、大株主であるソフトバンクグループは40億ドルの含み損を余儀なくされています。

滴滴出行株価 4時間足
滴滴出行株価 4時間足

(出所:TradingView

 それだけでなく、中国当局はネット企業を対象に、独占禁止法の順守やデータの安全性など4分野に関し集中的に取り締まると発表、中国企業の海外市場への上場規制を強化し、学習塾の非営利化も断行しました。

 こうした社会主義的な締め付け強化に資本市場は震え、中国株や香港株は急落、影響で米ドル/円や豪ドル/円といったクロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)も下落しました。

上海総合指数 日足
上海総合指数 日足

(出所:TradingView

2015年のチャイナショックとは違う。習近平・国家主席の狙いは?

 今回の動きを見て、2015年の「チャイナショック」を思い起こす人もいるかもしれません。しかし、今回の動きは本質的に違っていると思います。

 あのときは、中国株への投機的な動きがあり、その後、中国当局は必死に株価の下落を止めようとしましたが下落は止まらず、2015年8月11日に中国人民元の切り下げまで行い、その影響もあり、8月24日には米ドル円が6円も急落しました。

【参考コンテンツ】
チャイナショックとは? 中国発の出来事で世界の金融市場が大混乱に!

 しかし、今回は中国当局が「意図的に」に市場を下落させています。習近平氏の方針なのです。

 習近平氏は国家主席に就任以降、不正撤廃に力を注いできました。賄賂が横行する社会を変えようとし、それは一定の成果を上げました。今度は、社会的不公平是正に向かっているのでしょう。多くの新興企業が生まれ、アリババ創業者であるジャック・マー氏のように巨額の個人資産を築いた人もいますが、そうした存在をコントロール下に置こうとしています

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中国は、資本市場における米中分断を仕掛けているのか

 近代中国を築いたのは鄧小平氏です。「白い猫であれ黒い猫であれ、ネズミを捕るのがよい猫である」という言葉に象徴されるように、市場主義を積極的に取り入れて中国の経済発展を実現しました。

 しかし、その負の側面として、共産主義のもとではいないはずの、多くの資産家を生み出し、資産価格は高騰、貧富の差が拡大しました。

 習近平氏は鄧小平路線を修正、否定し、毛沢東の時代に戻そうとしているようにも見えます。

 米国は貿易面で米中を遮断しようとしていますが、中国は、資本市場における米中分断を仕掛けているように見えます。それは遠い将来、もし何かの問題で実力行使が必要になったとき、当然、株式市場は暴落するでしょうが、その影響が中国に及ぶことを遮断しようとしているのでしょう。

 中国の動きには、必ず意図があります。

 コロナ直後は、いち早く感染拡大を抑えて経済が回復しましたが、この数カ月、中国経済はスローダウンしています。それを懸念する人もいますが、中国当局のマクロ経済コントロールはF1ドライバーのアクセルワークのように正確です。

 米国はじめ、先進国経済がコロナから立ち上がりはじめ、巨額の財政支出をしているのを見て、経済のピークが重ならないように、景気が加熱しすぎないように、意図的に中国経済をスローダウンさせているのです。

 先進国は、トランプ大統領が退場したことで、環境、再生可能エネルギーへのシフトを開始しましたが、その副反応で、銅やプラチナといった資源価格が急騰し始めました

 しかし、こうした資源価格の上昇は景気にはマイナスです。中国は国家在庫の放出までして、こうした資源価格の高騰を抑え、実際、価格も下落しました。

中国国内の仮想通貨事業を、徹底的に取り締まったワケ

 その次に、国内の仮想通貨事業を徹底的に取り締まりました。中国国内のマイニング事業は儲かっていたはずですが、それだけ、中国当局が把握できない資金の国外流出には敏感なのでしょうが、その隠れた意図が最近明らかになりました。

写真は仮想通貨マイニング工場。中国当局は国内の仮想通貨事業を徹底的に取り締まった。中国国内のマイニング事業は儲かっていたはずなのだが…(C)Bloomberg/Getty Images

写真は仮想通貨マイニングの工場。中国国内のマイニング事業は儲かっていたはずなのだが、中国当局は国内の仮想通貨事業を徹底的に取り締まった (C)Bloomberg/Getty Images

 ついに中国も、トランプ政権下で商務長官を務めたウィルパー・ロス氏をはじめ、7人を制裁対象としました。

 米国側からの制裁に比べると軽いように見えます。しかし、ロス氏は当然、中国に投資している資金がかなりあるはずですが、この制裁で資金を回収できなくなりました。これはまずいと思っている米国要人はたくさんいるはずです。

 彼らは、資金回収を急ぐでしょう。中国への投資は回収するのが大変です。資金の移動が容易でないからです。すなわち、中国が仮想通貨を禁じたのは、こうした裏口からの資金回収の道を閉ざすためだったのです。

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米国人が資金回収を急げば、中国人民元は下落へ

 おそらく、中国人民元が下落するでしょう。米国人が資金回収を急ぐからです。

米ドル/中国人民元 日足
米ドル/中国人民元 日足

(出所:TradingView

 中国人民元に対しては、これまでやや強気に見ていました。経済が安定し、金利も高いため、中国人民元ロングは安定して稼げました。

 しかし、状況は変わりました。対米ドルで6.50元を超えてくるなら、米ドル/中国人民元は底入れしたことになり、6.60~6.80元方向に反発(中国人民元は下落)することになるでしょう

米ドル/中国人民元 日足
米ドル/中国人民元 日足

(出所:TradingView

 今回の中国の動きは、かつてのチャイナショックと違い、中国当局が意図した動きです。よって、一時的なものではなく、今後も続くはずです。

 ただ、今はいたずらに経済を落とそうとは思ってないはずです。よって、目先のリスクオフ的な動きはそのうち収束するでしょう。

 しかし、次に注意するとすれば、北京で開催される予定の冬季オリンピックが終わったあとです。今後も、中国当局の動きには要注意となります。


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