■2021年相場は、ワクチン接種の状況に左右されてきた
2021年のマーケットは、ワクチン接種の状況に大きく左右されてきています。
まず、米国、英国がワクチン接種で先行しました。1月6日(水)、ジョージア州上院選挙で米民主党のトリプルブルーが実現した影響もありますが、2021年1-3月には米ドルが上昇しました。
米ドル/円は102.60円(1月6日)から110.96円(3月31日)へ、ユーロ/米ドルも同様に1.2349ドル(1月6日)から1.1704ドル(3月31日)と、米ドルの強い上昇が見られました。
(出所:IG証券)
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その間、英ポンド/米ドルは、1.3450ドル(1月11日)から1.4241ドル(2月24日)へと上昇、3月31日(水)も1.3850ドルと高い位置をキープしたので、実は、この時期の最強通貨は英ポンドだったといえます。
【参考記事】
●金融緩和し過ぎとの警戒感で、米ドルは少し反発か。中長期のドル安は変わらない(1月13日、志摩力男)
●ワクチン争奪戦後、市場は欧州経済復活を織り込むか。ユーロは1.20ドル台回復も(4月7日、志摩力男)
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■日本はオリンピック開催までに、接種率40%に届く可能性
一方、ワクチン接種で遅れた欧州ですが、ワクチン確保に必死で取り組むEU(欧州連合)の動きを見れば、遅かれ早かれ欧州がワクチン接種で追いつくのは自明とも言えました。
4月初めの時点で、ドイツのワクチン接種率は10%を少し超える程度でしたが、いずれ米英に追いつく(=ユーロ買い)との認識で、ユーロ/米ドルは反転し、1.1704ドルの安値から1.2250ドル前後まで反発してきています。
(出所:IG証券)
では、ワクチン接種率が高まると通貨が買われるのであれば、次は「円」なのでしょうか?
ワクチン接種で大きく遅れた日本ですが、本格的な接種が始まりました。首相官邸のウェブサイトを見ると、1日に接種される数は50万人を少し超えるぐらいで、菅首相の100万人には届いていませんが、団体戦は日本の得意とするところです。なんとか接種ペースを高めてもらいたいものです。
菅首相の目指す1日100万人には届いていないが、日本のワクチン接種も本格的に始まった (C)Getty Images News
ドイツでも、最初は接種率がなかなか高まりませんでしたが、4月初めに12%だったものが、5月末には43%と、2カ月で30%高まりました。
日本でも同様にペースが高まれば、オリンピック開催時までには40%近いところまで持っていける可能性があります。
次にワクチン接種が進む「円」が買われるのかどうか? この判断が難しいのは、オリンピックが開催されるかどうかにもかかっているからです。
オリンピックで米ドル/円相場は大きく動かない…。当初はそう見られていました。日本経済は大きいので、オリンピックで大きな影響は出ないからです。
しかし、今となっては「気」の部分が大きいでしょう。日本の2021年1-3月期実質GDPはマイナス5.1%と大きく落ち込みましたが、2回目の緊急事態宣言(1月8日~2月7日)の影響が大きかったと思います。
オリンピック開催に関して、世論の反応には厳しいものがあります。多くの世論調査では、中止もしくは再延期を求める意見が70%を超えます。オリンピック開催問題は、ホットな政治イシューとなっており、安易に話題にできないものになっています。
■菅政権にとって最善は、オリンピック開催&無観客回避
どのようにオリンピックを開催できるかは、緊急事態宣言が終了する6月20日(日)までに、感染者数を抑え込み、ワクチン接種率をできるだけ高められるかどうかにかかっています。
菅政権にとって最善なのは、オリンピックを開催し、限定的でも観客を入れることができる場合でしょう。開催される可能性はそれなりに高いと思いますが、観客を入れるハードルは相当高そうです。
仮に観客を入れる場合、観客からの収入もありますが、それは全体で考えれば微々たるものです。観客が入ることで大会が盛り上がり、関連収入が大きく伸びることの方が大きいでしょう。
無観客での開催でも、大会が行われれば盛り上がることは確かです。IOC(国際オリンピック委員会)などへ支払わなければならない賠償金問題が回避されます。
問題は、オリンピックが中止となる場合です。延期の選択肢は、すでに事実上ありません。その場合は、オリンピック開催に伴う経済効果を失い、IOCなどへの賠償金が生じることになります。
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■オリンピック開催・中止で相場はどう動くのか
IOCと日本が結んだ「開催都市契約」を見ると、中止の権限はIOCにあり、その場合、日本側は中止に伴う補償や損害賠償を請求する権利を放棄すると明記されています。
日本側から中止を決定する権限はありません。日本側から中止を要請した場合のことは書いてありませんが、災害等の場合に契約解除できる「不可抗力条項」が盛り込まれていないので、賠償が生じるという見方が多数です。
IOCと日本が結んだ「開催都市契約」では、中止の権限はIOCが持っていて、日本には中止を決定する権限がない。仮に日本側から中止を要請した場合、多額の賠償金が生じるという見方が多数あるという
賠償金がどの程度になるのかはわかりませんが、日本経済に対する影響は限定的だと思います。それより、菅政権が退陣し、政局が混迷化する可能性があり、「気」の部分で相当落ち込むことと思われます。
日経平均は1000円~2000円程度の下落が想定されます(戻す可能性は高いと思われます)。株価の下落に伴い、リスクオフ的な円買いで、米ドル/円が若干下落する可能性はあります。それでも、105円~107円前後でサポートされるでしょう。
オリンピックが開催されれば、「気」が大きく改善し、日経平均は1000円~2000円程度の上昇が見込まれます。「円」は買われるというより、株価の上昇に「リスクオン」となり、米ドル/円は上昇するのではないかと想定しております。
(出所:IG証券)
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■結局、ワクチン接種しか感染を止める方法はない
オリンピック開催に伴うリスクですが、海外から人が入ることで感染が広まるとの懸念があります。しかし、ほとんどの関係者はワクチン接種して入国するので、その可能性はそれほど大きくないと思います。
結局は、ワクチン接種しか感染を止める方法はありません。そして、接種率が高まり、夏が終わり秋ごろには集団免疫が日本でも達成されると思われます。
その時には、他の国ほどではないと思いますが、新型コロナを克服したということで、待機していた需要が戻り、景気回復ということになるでしょう。
そのころには、だいぶ世の中も明るくなっているのではと期待しています。
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