パウエル議長は「ハト派」発言を継続。ブレイナード理事も非常に「ハト派」
金融政策において、最近一番驚いたのは、6月のFOMC(米連邦公開市場委員会)でした。ドットチャートが大きくちらばり、多くの委員が「金融引き締め」方向に意見を変えたことが伺えました。
【参考記事】
●本命の米株市場崩れず、リスクオン回帰か。FOMCでパウエル議長を裏切った5人とは?(6月23日、志摩力男)
ところが、FRB(米連邦準備制度理事会)のパウエル議長は、その後も極めて「ハト派」的な講演、発言を繰り返しました。7月28日(水)に行われたFOMC後の会見も非常に「ハト派」的でした。
そのため、FRBはやはり金融引き締めにそれほど熱心ではないのではないかと市場は思い始めました。
パウエル議長が、来年(2022年)2月に再任されなかった場合、次期FRB議長と目されるブレイナード理事も非常に「ハト派」です。7月30日(金)には、9月の雇用統計の結果を見たいと発言しましたが、9月雇用統計の結果が出てくるのは10月初めです。
パウエル議長が再任されなかった場合、次期FRB議長と目されているのが、ブレイナード理事。ブレイナード理事も非常に「ハト派」 (C)Bloomberg/Getty Images
そうなると、9月FOMCでテーパリングに関する結論は出ず、10月以降のFOMCということになります。
【参考記事】
●パウエル議長のハト派発言で米ドル上昇は落ち着く。米住宅価格急騰に市場は熱視線!(6月30日、志摩力男)
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クラリダFRB副議長の発言で、市場の「ハト派」ムードは一変
そうした市場の空気を一変させたのが、クラリダFRB副議長の発言です。
「利上げに必要な条件は、2022年末までに満たされると確信している」
これまで、パウエル議長、ブレイナード理事だけを見ていたマーケットは、FOMC内には意見のばらつきがあることを改めて認識させられました。これほどまでにはっきり、議長と違う意見を副議長が発言するということ自体、異例です。
クラリダ副議長は、これまで「ハト派」と考えられていましたが、「タカ派」に転向していたようです。FRB内には、同様にこれまで「ハト派」と思われていた人が突然「タカ派」に転じたケースがほかにもいます。ブラード・セントルイス連銀総裁です。それと、ウォラー理事もそうです。
その後、アトランタ連銀のボスティック総裁も「力強い雇用増が1~2カ月続いた場合、米金融当局は資産購入縮小に着手し、過去の例よりも速いペースで縮小を進めるべきだ」と発言しました。
こうなってくると、FOMCで投票権のある11人のうち、何人が早期テーパリング(※)派か、確認する必要があります。
(※編集部注:「テーパリング」とは、量的緩和政策により、進められてきた資産買い取りを徐々に減少し、最終的に購入額をゼロにしていこうとすること)
(※筆者提供のデータを元にメルマガ事業部が作成)
確定している人は4対4で拮抗しています。中間派がどちらに傾くかですが、パウエル議長の立場を忖度しハト派に回るのか、それともタカ派に回るのか…。
しかし、改めてハト派とタカ派のメンバーを見ると、共和党支持者は引き締め(タカ)派、民主党支持者が緩和継続(ハト)派に見えます。共和党と民主党の対立が、FOMC内にも持ち込まれた感じがします。
クォールズ副議長は、トランプ前大統領によって指名された人です。あまり金融政策に関する発言はない人ですが、共和党の考えに沿って引き締め派に転じる可能性はあるのではないかと思います。それはバウマン理事、バーキン理事も同じです。
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米国の早期テーパリング観測により、米ドル高へのトレンド転換のタイミングが近づいているか
コロナ後の為替市場は、米国が超金融緩和政策を採ったことから、米ドル安方向を見ていたと思います。しかし、このところの早期テーパリング観測によりユーロ安になっています。
(出所:TradingView)
米ドル/円は、昨年(2020年)高値112.22円を超えてくると、新しい上昇トレンド入りとなりそうです。
(出所:TradingView)
市場がどちらかというと想定していなかった展開だと思いますが、今後の米金融政策はいずれ引き締め方向に進むことを考えると、米ドル高にトレンドが変わるタイミングが近づいているのではないかと思います。
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