トルコ失業率は大幅改善。ロックダウン解除による経済再開が後押し
トルコでは今週(8月9日~)、6月の雇用統計が発表されました。TUIK(トルコ統計局)の発表によると、6月の失業率は前月比で2.5%減少し10.6%となりました。これは、15歳以上の失業者が82.3万人も減ったことを意味します。
(出所:TUIK)
数字の中身を見ると、新規雇用者の17.2%は農業、21.8%は製造業、6.4%は建設、54.5%はサービス業で雇用されているのがわかります。
これがそのまま今のトルコ経済の縮図でもあります。サービス業と製造業のGDPに占める割合は増加中で、農業と建設は減少中です。
トルコの失業率が大きく低下した背景として、6月にパンデミックによるロックダウンが終了し、経済が再開されたことがあります。
【参考記事】
●トルコ政府、ロックダウンをほぼ解除。トルコリラ/円は一時16.30円水準へ上昇!(6月3日、エミン・ユルマズ)
トルコのワクチン接種率(少なくとも1回目の接種が終わった人の割合)は49.7%で日本の47.1%に非常に近い水準です。
(出所:トルコ保健省)
観光シーズンが開始する前に急速にワクチン接種を進めたことで、新規感染者が前回の波の3分の1に抑えられています。
一方で、観光シーズンは絶好調だったものの、直近の山火事が大きな問題になっています。7月中旬から地中海沿いの地域で山火事が相次ぎ、リゾートホテルが集中するこれらの地域の観光に大きな悪影響が出ました。
【参考記事】
●【トルコリラ見通し】観光シーズン終了の9月中旬まで、リラは底堅い。その後は、本格的な利上げの有無が鍵に(8月4日、エミン・ユルマズ)
トルコに限らず、異常気象の影響で今年(2021年)は地中海周辺国で山火事が多くなりました。トルコと同様に、ギリシャとイタリアも山火事に悩まされています。
ドルインデックスが反発し、新興国通貨は売られる展開に
今週(8月9日~)のトルコリラは、対米ドル・対円で売られる場面が見られ、米ドル/トルコリラは8.60リラ水準、トルコリラ/円は12.80円近辺で推移しています。
(出所:TradingView)
(出所:TradingView)
米国の雇用統計発表後にドルインデックスが反発し、新興国通貨は売られる展開になりました。
(出所:TradingView)
実質実効為替レートは反発も、依然としてトルコリラは弱い。その最大要因とは?
トルコリラの実質実効為替レートは7月に61.31となり、史上最安値だった6月の59.65から若干反発しています。
(出所:トルコ中銀のデータを基にメルマガ事業部が作成)
以前もこのコラムで話題にしましたが、実質実効為替レートとは、トルコ中銀が2003年を100として毎月計算をして、ウェブサイトで公表している数字です。
【参考記事】
●実質実効為替レートは史上最安値を更新。なぜ、トルコリラはここまで弱いのか?(7月7日、エミン・ユルマズ)
実質実効為替レートが120を越えるのは買われすぎ、70を下回るのは売られすぎと判断されます。
パンデミック直前に、トルコリラの実質実効為替レートは75でしたので、すでに売られすぎの水準に近かったのですが、パンデミック後に次々と、史上最安値水準を更新してきました。
トルコリラがここまで売られているのは、パンデミックによる不況に加え、やはり政治不安の影響が大きいからだと考えます。
一方で、政権交代は遠くない未来に起きると思いますので、トルコ経済とトルコリラについて総悲観をする必要はないと考えます。
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