RBNZの利上げを阻止した「1名」
先週(8月16日~)はさまざまな動きがありましたね。
まず8月18日(水)、RBNZ(ニュージーランド準備銀行[ニュージーランドの中央銀行])が利上げを見送りました。
ニュージーランド政府は火曜日(8月17日)、新規感染者がたった1名出ただけで、全土を緊急ロックダウン。
その影響で、利上げ織り込みが急低下していましたから、サプライズではありませんが。
【参考記事】
●ニュージーランドドルは、対豪ドルで反落か。4回の利上げが織り込まれるニュージーランド。8月18日の利上げで材料出尽くしの可能性も(8月16日、西原宏一&大橋ひろこ)
ロックダウンで経済は停滞しますから、利上げ見送りは当然。
とはいえ、オアRBNZ総裁のコメントはタカ派です。
現在の政策金利は0.25%ですが、年末時点の見通しは0.6%。
インフレに対抗するための利上げであり、ポジティブではなく、すでに織り込まれてもいるため、ニュージーランドドルは上がったとしても一時的でしょう。
対コロナ政策の違いに注目、豪ドルとニュージーランドドル
豪州でもデルタ株が拡大、原油などコモディティ価格の急落もあり、豪ドルが急落しました。
(出所:TradingView)
ニュージーランドのアーダーン首相は「デルタ株はゲームチェンジャー」と発言していますが、いち早く戦略を転換したのがモリソン豪首相。
今朝(8月23日朝)、新規感染者ゼロをめざした「Covid zero」戦略からの転換を発表しました。
昨日(8月22日)の新規感染者が914人。ゼロは到底不可能となったためです。
戦略転換を受けて、今朝のシドニー市場では豪ドル売りとなる場面もありました。
おそらく間違えた動きでしょう。
まだゼロにこだわるニュージーランドと比べると対応が早く、ロックダウンが短期間で終了すれば経済が再開する。
この点から見れば、豪ドル/ニュージーランドドルは買いだということになります。
もちろん、アーダーン首相が戦略を転換すれば話は別ですが。
【参考記事】
●ニュージーランドドルは、対豪ドルで反落か。4回の利上げが織り込まれるニュージーランド。8月18日の利上げで材料出尽くしの可能性も(8月16日、西原宏一&大橋ひろこ)
(出所:TradingView)
「トヨタショック」は最高益の時点でわかっていた!?
デルタ株の影響でサプライチェーンが寸断され、9月の4割減産を発表したのがトヨタ自動車。
株価は10%ほど急落し、日経平均も年初来安値を更新する「トヨタショック」となりました。
自動車産業は裾野も広いので、周辺メーカーへの影響も懸念されますし、コモディティ市場では先週、タイヤの原料となるゴムや触媒に使われるパラジウムが売られるなど、周辺にも影響が出ています。
(出所:TradingView)
(出所:TradingView)
(出所:TradingView)
トヨタが8月4日(水)に発表した4~6月期決算は、四半期ベースで過去最高益だったのに、通期見通しは据え置きのままでした。
この時点で、減産など何らかの悪材料を織り込んでいるのだろうとの観測が出ていました。
それを踏まえると、トヨタ株はいいところまで落ちたのではないかと思います。
減産しても、通期見通しが下方修正されたわけではありませんしね。
ただ、部品の生産地である新興国はワクチン接種が遅れていますし、減産が長期化すればショックは続くのかもしれません。
「菅損切り相場」から「サナエノミクス」へ?
横浜市長選では、菅首相の側近が落選。
日本では菅政権の求心力低下が懸念されていますが、市場の注目はアフガン情勢や8月27日(金)のジャクソンホール会議。市場への影響は小さいでしょう。
ひとつ注意するとすれば、「菅首相の退陣は日経平均買い」と考えている海外勢も少なくない、ということでしょうか。
注目したいのが、自民党総裁選への出馬を表明している高市早苗さんの「サナエノミクス」。
2%インフレ目標を達成するまで、プライマリーバランス黒字化は棚上げを、と主張しています。
増税せずに財政支出を拡大していくなら、日本株にはポジティブ。
横浜市長選をきっかけに、「菅政権の損切り相場」が始まるシナリオも考えられますね。
カブール陥落で、今すぐ金融市場にショックが起きるとは思わないが…
アフガニスタンでは米国人が取り残されるなど、バイデン米大統領の失策が浮き彫りになっています。
同盟国であるジョンソン英首相からの電話を36時間放置した、という信じられない話も出ています。
1970年代の米国はベトナム戦争の泥沼で国力が低下し、金と米ドルの交換を停止するニクソンショックへと追い込まれました。
首都カブールの陥落で、今すぐ金融市場にショックが起きるとは思いませんが、この影響は今後も注視する必要があります。
米国にとって、アフガニスタンへ国力を費やす意味は薄れていますし、中東へ注ぐリソースを対中国へ集中させたいのでしょう。
その中国では、やはり経済がおかしくなっているようです。
WTI原油先物の下落が続いているのも、中国の原油輸入減少が材料視されている面もあるようです。
気になるのが、景気の先行指標とされ、「ドクター・コッパー」とも呼ばれる銅。
今は200日移動平均線でサポートされていますが、ここを割り込むと三尊天井のようなチャートになります。
(出所:TradingView)
豪ドルは先週がセリングクライマックスか
鉄鉱石も急落し、豪ドルが売られましたが、先週がセリングクライマックスだったのでは…と思います。
海外の友人たちから回ってきたのが、日本経済新聞の「豪ドル8カ月・NZドル7カ月ぶり安値 コロナ規制強化で」との記事。
「日本でこんな記事が出るなら買いだろう」と逆指標にしているようです。
【参考記事】
●メディアが騒ぎ始めたら、なぜ相場は終わる? 戦後最悪の景気と株高の併存は気味が悪い
そうすると、今週の戦略は豪ドル買いですか?
そうですね。
豪ドル/米ドルの買いでもいいですが、8月27日(金)にジャクソンホール会議でのパウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長の講演を控えています。
【参考記事】
●ジャクソンホール会議が行われる建物はジャクソンホール? なぜ、ジャクソンホールは世界中のトレーダーの注目を集めるのか?
テーパリングの開始に関しては、市場のコンセンサスが醸成されつつありますし、株式市場を崩すような新味のある材料が出てくるとは思えませんが、注目度が高いのでボラティリティは上がりそうですね。
大きなイベントですから、ドルストレート(米ドルが絡んだ通貨ペア)のリスクを回避するなら、対円での豪ドル買いがいいのでしょう。
米ドル/円が大きく崩れることはないとも思います。
(出所:TradingView)
(構成/ミドルマン・高城泰)
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