米軍のアフガニスタン撤退が完了。日本政府の巨額援助も水の泡に……
みなさん、こんにちは。
新型コロナウイルスに振り回されているうちに、早いもので今年(2021年)も、もう9月。残りの4カ月、一緒にFXトレードを楽しみましょう!
マーケットの注目を一身に集めた、アフガニスタンからの米軍撤退ですが、批判されながらも8月末で完了。
米軍のアフガン撤収完了、20年の軍事的関与に幕-中央軍が発表
出所:Bloomberg
米軍がアフガニスタンから撤退することに反論する人は少数ですが、今回かなりの批判を集めたのが、その撤退の仕方でした。
米国は「We must leave No One Behind(誰一人として残さない)」という方針を、長年にわたって貫いてきたことでよく知られていますが、今回の撤退においては、(一部の報道によれば)150人ほどの米国人と、数千人という親米のアフガニスタン人が、まだアフガニスタンに残っているといわれています。
本日(9月2日)のFox Newsも、この点を厳しく批判しています。
White House official 'appalled and literally horrified' that Biden stranded Americans in Afghanistan:
(ホワイトハウス関係者、バイデンがアメリカ人をアフガニスタンに置き去りにしたことに「愕然とし、文字通りぞっとした)
出所:Fox News
米軍の撤退の方法が批判されているのは、他の主要国が米国とは違った撤退の方法をしたこともあります。
例えば、フランス。
フィナンシャル・タイムズ(FT)が報じたところによれば、フランスはカブールがタリバンに占領される3カ月前の5月、フランス大使館やフランスの組織で働くアフガニスタン人とその家族を避難させ始めたとの事。
公式発表によると、アフガニスタン軍が崩壊し、イスラム過激派グループが権力を握る前の数週間に、623人がフランスに空輸されたという。
2014年にアフガニスタンでの軍事作戦を終了した後、フランス軍で働いていた800人のアフガニスタン人や親族は、パリへ移動していた。また、フランスは自国民にも繰り返し退避を呼びかけた。
出所:フィナンシャル・タイムズ(FT)
(※編集部注:在日フランス大使館によると、上記記事の623人は現地採用職員とその家族152世帯になるという)
米国とフランスは同じ情報を共有していましたが、米国と比べてフランスはしっかり先を見通していたと、米国の楽観的だった見方を痛烈に批判しています。
アフガニスタンには、日本政府も総額7000億円もの援助をしていた模様。
莫大な援助が水の泡、アフガニスタン崩壊が日本に与えた衝撃
出所:JBpress
今回のアフガニスタン撤退の報道を見るにつけ、米国のイニシアティブはかなり後退したと思わざるをえません。
このバイデン政権の失策が、米ドルの価値を下げるとまでは思いませんが、カブール陥落は、1975年のベトナム戦争でのサイゴン陥落に次いで重要な出来事であるため、金融関係者にとっても、カブール陥落からのバイデン政権の政策判断の行方に注目が集まっています。
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カブールが陥落した8月15日は、偶然にも50年前にニクソンショックが起こった日
今回のカブール陥落が金融関係者の注目を集めている理由に、「ニクソンショック(※)」があげられます。
(※編集部注:「ニクソンショック」とは、ニクソン米大統領が1971年8月15日に発表した金と米ドルの兌換(だかん)停止宣言のこと)
日本の終戦記念日に合わせたというウワサもある二クソンショックが起こったのが、1971年8月15日。
ニクソンショックは、ベトナム戦争による軍事費拡大などが原因で財政が悪化したことで、金が国外へ流出し交換できなくなったことが要因といわれています。
ニクソンショックにより、1ドル=360円という固定相場制は終了し、米ドルは劇的に劣化していきます。
今回も、米国がアフガニスタンから撤退した(カブール陥落)のが、8月15日。
暑い夏になると、大きな事件が起こりがちですが、筆者は、映画プレデターのアンナが「悪魔は暑い時にしか出てこないの?」というセリフを思い出します。どうでもいいことですが…。
それはさておき、8月15日という偶然が重なったこと、そして前述の米国のイニシアティブが下がったことが、カブール陥落が今後の金融市場に大きな影響を与えるのではないかと注目されています。
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カブール陥落によるリスクオフは続かない。懸念材料が減ったことで、豪ドル/円は中期での上昇トレンドに回帰
ここで、視点を直近のマーケットに戻し、カブール陥落からの動きを見直してみましょう。
カブール陥落は8月15日でしたので、8月16日からのマーケットの動きのチェックしてみましょう。
カブール陥落は、旧来の教科書によれば、リスクオフ(=株安・リスクアセット通貨(豪ドル)売り・円とスイスフランの買い)となります。
この文脈からすれば、「カブール陥落=豪ドル/円の売り」になるわけです。
カブール陥落前、8月13日の豪ドル/円は80.80円で引けています。
カブール陥落を受けて、その週は一時77.90円まで下落し、78.37円で引けています。ただその後は、一方的に値を戻していて、本稿執筆時点では81.00円で推移。
つまり、リスクオフの動きは一時的であり、結局、全戻しの展開になっています。
(出所:TradingView)
個人的には、リスクオフの豪ドル/円の売りというのは、旧来の教科書での話であり、そうした動きは続かないと考えています。
そのため、8月20日に配信したメルマガ「トレード戦略指令!」では、豪ドル/米ドルの買いを配信。
8月23日に公開した「FX&コモディティ(商品) 今週の作戦会議」 では、豪ドルはセリングクライマックスというコメントをしています。
【参考記事】
●豪ドルは、先週がセリングクライマックスか。ジャクソンホール会議のパウエル講演を控え、ドルストレート回避なら、豪ドル/円の買いで(8月23日、西原宏一×大橋ひろこ)
今のところは、そうした動きとなっており、豪ドル/円は81円台まで反発しています。
カブール陥落という懸念材料がひとつ減ったことにより、豪ドル/円は中期での上昇トレンドに戻ったといえます。
(出所:TradingView)
ベトナム戦争でサイゴンが陥落してから45年。ニクソンショックからちょうど50年後の8月15日に起こったカブール陥落が、金融市場に及ぼす大きなゲームチェンジ(※)の可能性を意識しつつ、直近では、過去2週間のコラム同様、上昇トレンドに戻った豪ドル/円に注目です。
(※編集部注:「ゲームチェンジ」とは、従来の枠組みやルールが崩壊し、新たなものに切り替わること)
【参考記事】
●モリソン豪首相の「感染ゼロ戦略」転換発表で、豪ドルはボトムアウト。豪ドル/米ドル、豪ドル/円は押し目買い戦略継続で(8月26日、西原宏一)
●デルタ株感染で、ニュージーランド全土がロックダウン! NZ中銀の声明は依然タカ派も、ニュージーランドドルは下値余地拡大(8月19日、西原宏一)
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